インタビュー
» 2015年09月14日 16時24分 UPDATE

Tポイント・ジャパン 北村氏に聞く(前編):日常生活の支出すべてに「Tポイント」を――Tポイント・ジャパンが推進する“ドミナント”戦略 (1/2)

IT系サービスとポイントサービスの連携が強まってきており、モバイル業界でも通信キャリアがポイントサービスを強化している。今回は、ソフトバンクと連携しているTポイントに焦点を当て、Tポイント・ジャパン 取締役副社長の北村和彦氏に戦略を聞いた。

[房野麻子(聞き手:神尾寿),ITmedia]

 IT系サービスとポイントサービスの連携が強まってきている。モバイル業界ではドコモが2015年12月にポイントサービスを「dポイント」にリニューアルし、「Ponta」を展開しているローソンとの業務提携も発表。そして「Tポイント」を提供しているTポイント・ジャパンも、ソフトバンクと提携し、ソフトバンク携帯電話の利用でTポイントがたまる仕組みが採用された。

 今回は、このTポイントに焦点を当て、Tポイント・ジャパン 取締役副社長の北村和彦氏へのインタビューを実施。Tポイントはこれまでどのような戦略でサービスを拡充してきたのか。また「ソフトバンク」や「TONE」、そして「ふるさとスマホ」など、モバイルとの連携はどう考えているのか。前編ではTポイントの現状や戦略、Tマネーについて聞いた。

Tカード1枚で多数のポイントをためられることが原点

photo Tポイント・ジャパン 取締役副社長 北村和彦氏

――(聞き手:神尾寿) まず、Tポイントはどういったコンセプトで始まり、モバイルを含めたさまざまなビジネスとどのように連携しているのか。戦略的なお話をうかがえればと思います。

北村氏 CCCとしてですと、TSUTAYAに続く事業モデルとして位置付けられています。

―― 汎用ポイントの草分けですが、重視している特徴や戦略的な特徴、こだわりはどういったところでしょうか。

北村氏 原点は単純です。TSUTAYAはレンタル事業だったので、ユーザーさんは全員会員になっていただかないといけません。普通の小売サービス業にも関わらず、ご本人の確認をさせていただかないと、ご返却いただけないときに連絡も取れないのは困ります。これが1つ。

 また、お財布の中を見れば、複数のポイントカードが入れられている状況でした。TSUTAYAの単なる会員証でレンタルや本を買ったときだけ付くポイントだったのを、Tカード1枚でいろんなところでポイントをためて使えたら単純に喜ばれるだろうなと考えたことが原点であり、今でもそのことが一番の価値だと思っています。

―― Tポイントが立ち上がったときに面白いと思ったのが、通常のポイントサービスは、自社のお客さんに対してポイントを付与して、自分のところで使ってもらう囲い込み型です。汎用的な共通ポイントだと、さまざまな事業者との提携スキームが複雑化し、ポイントが自社のビジネスのためだけに使えなくなる。純粋にポイント事業で考えれば、囲い込み型の方が付与したポイントが他社に流出するようなリスクが少なく、導入メリットを短期間で出せる。そのような中で、Tポイントが初期から汎用化を目指したのはなぜですか。

北村氏 「顧客価値なき事業は成功しえない」のが前提なので、前提としての価値を置くところから逆算していくということにほかならないですね。ポイントがなかなかためられず、使えるところも1社あるいはその店舗だけという価値よりも、いろんなところでためて使える選択肢の多さを提供したということです。

 また、今は回復してきていますが、長らくデフレの時代があって、提携先が少なかった時代は使ったお金の1割くらいにしかTポイントが付かなかったのが、我々が提携アライアンス先を増やしていくに従って、使っている金額は同じでも5割くらいにTポイントが付くようになる。ささやかかもしれませんが、共通化することによって、お得をまとめて提供できるということが、一番ご支持されたところかなと思っています。

Tポイントのアクティブユーザーは5477万人

―― Tポイントの顧客基盤や加盟店の規模はどのくらいあるのでしょうか。

北村氏 7月末で提携社数が125社で、店舗数が43万店舗。会員数は5477万人で、1年前と比較すると560万人くらい増えています。この数字は「名寄せ後の利用会員数」で、複数のTポイントカードがあった場合は1ユーザーとしてカウントされています。かつ、1年以内に利用していただいているアクティブユーザーです。

photo Tポイントの名寄せ後の会員数
photo 日本の人口の4割がTポイントの会員であり、20代では7割を占める
photo Tポイントの提携先

―― アクティブユーザーとは、すごい数字ですね。

北村氏 あまり発表していませんが、Tカードは累計発行枚数だと1億7000万枚くらいになっているんです。日本の人口を上回る枚数ってリアリティがないですよね。だから、Tポイントが始まってから、1年間のアクティブユニークユーザー数をずっと言い続けています。

―― 誠意のある回答ですね。たいていは“発行枚数”を公表することが多いですから。

北村氏 これは1年間の数字ですが、月間、週間でも稼働は見ています。これが自慢でして、週間だと2000万人が使っている。1億2000万人のうちの2000万人が週に1回はTカードを使っているんです。

―― 私も毎日出していますよ(笑)。アクティブ率の高さは大きな特徴なんですね。確かにこのアクティブ率を実現するには、TSUTAYAだけだと難しいですね。

北村氏 提携先を見ていただくと、アクティブ率が決定的に違うことを理解していただけると思うんです。どれだけ日頃の生活の中に提携先企業が浸透しているかお分かりいただけると思います。

日常生活の支出すべてにTポイントを付けたい

―― ユーザーが日々、使う実感が得られるように、加盟店開拓も戦略的にやっていらっしゃったのでしょうか。

北村氏 総務省の調査で、国民の世帯支出はだいたい300兆円といわれています。総務省の家計調査ですが、平均化すると1人の家計の支出でエンゲル係数は約22%です。その中でも材料、食料品を扱うスーパーは22%のうちの60%を占めています。

 これを埋めていくとTポイント参加店が増えて、支出全部にTポイントが付いてためられる。そうなるようにというのが、我々の1つの指標です。それが「Tライフドミナント」という考え方です。

―― 面白いですね。タッチポイントの広さやアクティブ率の高さを重視されているんですか?

北村氏 いえ、来店頻度だったら1年に1回のところもあるので、タッチポイントとアクティブ率というよりは、家計の支出をカバーしているアライアンス先がどれだけいらっしゃるかというのが、このTライフドミナントの考え方ですね。

―― 決済額ベースの指標はどうなんでしょうか。クレジットカードのように、数が少なくても、1回が高額だったらいいという考え方ですか。

北村氏 我々の場合は年間で考えます。コンビニさんは1回は数百円ですが、掛け算すると年間で、という感じですね。洋服の青山さんだったら年に1回か2回かもしれませんが、1回に万単位で出る。そういう意味で単価や頻度だけで見るわけではなくて、最終的な売り上げの形成が大事です。少額だとポイントはたまりにくいけれど、一方で年に1、2回、万単位の買い物だと、ポイントはたまりますが、次回カードを持っていくか分からない。Tポイントの場合、さまざまな来店頻度、少額から高額まで集まっているところが価値だと申し上げたいですね。

―― マトリクスがちゃんとできているわけですね。クレジットカードのトラベル&エンターテインメント系ですと、ある程度高額なホテルや航空会社など偏りがありますが、Tポイントはあまり偏りがないですね。

北村氏 我々はずっとこだわって、一部例外はありますが、現金でもクレジットでも決済のいかんにかかわらず、Tポイントが付くようにしています。そうじゃないと、クレジットカード会社のように高額がいいという話になりますから。

―― 個人的には、ENEOSが提携先に入ったときからたまるようになりました。中額決済をコンスタントに週に2回くらいやっていると大きいですね。

北村氏 携帯電話キャリアさんでソフトバンクさんにしていただくと、毎月必ずたまります。ここが喜んでいただいている価値かなと思います。

1業種1社に規制しているわけではない

―― Tライフドミナントで「保険」が埋まっていないのが意外な気がしたんですが。

北村氏 保険業界や証券業界は業法の規制があって、ポイントを付けられないからなんです。銀行とか健康保険もそうです。やりたいんですが、できない。

―― タクシーとか公共交通系も厳しいですね。

北村氏 それでも東京無線さんには、クレジット機能付きTカードで払うとポイントが付くといったことをやっていただいています。また、先日発表しましたが、ようやく来年(2016年)、電力の自由化が始まりますが、東京電力さんがTポイントを導入されます。逆に言うと、競争相手が出てこない限り差別要因にもならない。時代は徐々に難しかったところも開けてきています。

―― 1業種1社の規制はなくなっているんですか。

北村氏 皆さん誤解されているんですが、我々は規制しているわけではありません。ENEOSさんのように、サービスステーションのシェアを3、4割持っていらっしゃることころは1社で十分だと思うんですが。スーパーやドラッグストアは複数入っています。1業種1社にしてしまうと、この地域でこの業種のポイントが付く機会がありません、みたいな形になる。そういった方針は取っていません。

―― なんとなく、Tポイントの立ち上げ期は1業種に代表的な1社、という印象でした。

北村氏 1カテゴリーでどこか1社は参加してほしいという意味ですね。

―― 立ち上げ期も排他的ではなかったということなんですね。

北村氏 例えはファミリーマートさんに入っていただいた後、スリーエフさんに入っていただいたりしていますし、排他的ではないですね。

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