2020年代に向けてモバイル分野はどうなる?SIM通

» 2015年10月09日 06時00分 公開
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 先日、総務省から「2020年代に向けたモバイル分野の競争政策の在り方」の中間報告が発表されました。ここから、今後どんなことが決まっていくのかを、分かりやすく解説してみたいと思います。

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 先日、総務省から「2020年代に向けたモバイル分野の競争政策の在り方」の中間報告が発表されました。

 この中では特に、格安SIMを展開する仮想移動通信事業者(以下MVNO)の今後の姿について議論が進められることが触れられています。どのようなことが考えられていくのでしょうか。

 これまで通信業界を引っ張ってきたのは、料金プランの届け出義務などのある通信事業者です。その中で、通信事業者の小回りが利かない領域については、MVNOが回線の卸売り(機能の貸し出し)を受けサービス提供する形態も登場してきました。この形態の中でも、古くから機能分担が制度等ではっきりしていた固定網に比べ、携帯電話網の機能の貸し出しについてはしっかりした制度の裏づけが無い状態が、長らく続いてきました。

 そこで総務省としては、これからの十年に向けてどのような制度整備をしたらいいのか、有識者や事業者自身に意見を聞きながら進めていこうとしています。

 総務省としては、従来はいろいろな事業者に公平に周波数を割り当てていろいろな新規事業の創出を加速しようとしてきたのですが、資本的な買収、合併により大グループに周波数が独占されつつある現状を特に危惧しているようで、MVNOへの期待は大きくなっています。

 そのために、制度をしっかりと整備して、貸し出しを渋る携帯電話事業者(以下MNO)にもしっかりとルールを守ってもらい、MVNOが事業展開しやすい社会を目指しましょう、というのが、この検討の大まかな目的となっています。

 そんな中で、総務省の中間報告では、いくつかの問題が掲げられています。それぞれについて、どのような課題で、どんな風に解決していこうと考えているのかを見てみましょう。

1.携帯電話網貸し出しルールの不在

 意外に思うかもしれませんが、携帯電話網の貸し出しについては、制度上のルールが存在しません。あるのは、強制力の無い「ガイドライン」(指針)だけです。そこに書かれたいろいろな決まりは、せいぜい努力目標というところでしょうか。

図 LTEネットワークの概念

 そのため、MNOによって貸し出しに関していろいろと差があるのが実情です。MVNOの形態で「レイヤー2接続」というような用語がありますが、これは、ネットワークのどの「機能」を貸し出し可能にする(アンバンドルする)か、というのを表したうちの一つで、実のところ、今はまだアンバンドルされる機能は非常に限定されています。

図 これまでのMVNO接続

 さらに、MNOごとに対応にも大きな差があります。今のところ、もっともMVNO対応が進んでいるのがドコモなのですが、それでも、コスト構造の開示は不十分だと言う声があります。auだと接続料はドコモの2倍、ソフトバンクにいたってはドコモの3倍にも上りますが、その根拠は一切開示されていません。このため、弱小なMVNOにとっては、アンバンドルする機能にや接続料について交渉さえできないのが実情です。

 総務省の考えとしては、こうした課題に対応するために、「省令」でMNOに対する何らかの義務付けをしていきたい、ということのようです。その形は今後議論の対象となるのでしょうが、アンバンドルする機能をルール化して義務付けたり、コスト構造に関する情報の開示を義務付けたり、MVNOからの接続要請があった場合の迅速な対応を義務付ける、などなどが案としてあがっています。

図 これからのMVNO接続

 当然ながらMVNOやインターネット業界からはこれを歓迎する声が集まっているようですが、MNO側はそろって慎重で、特にドコモは、アンバンドルする機能によっては携帯電話ネットワーク全体の安定動作への影響も生じうると具体的な課題を指摘して注意深い検討を求めています。

2.電気通信番号の割り当て

 アンバンドルする機能の中でも、特に「加入者情報データベース(HLR)」のアンバンドルについては別の課題があります。

 HLRは、SIMに書き込まれた加入者IDが本当の加入者かどうかを判断するための機能で、いろいろなサービスに接続していいのかどうかといったポリシー管理の基礎にもなっています。もしこのHLRをアンバンドルできるとすると、MVNOが自分で加入者の加入処理をし、いろいろなサービスポリシーを自在に設定できるようになるので、特にIoTなどのようにSIM埋め込みデバイスを扱うようなサービスでの活用が期待されます。

 もちろんHLRのアンバンドルに関しても技術的な課題は大きく、MNO各社とも自社網や自社ユーザへの悪影響が見込まれるとして反対していますが、それよりも、加入者情報を直接扱うということは、「電気通信番号(つまり携帯電話番号)」をMVNOに割り当てるということを意味することが一つの課題となっています。

 というのも、電気通信番号の割り当てを受けると、電気通信番号の種類にしたがって様々な管理義務が課されるからです。携帯電話でいえば、特にMNPをしたときのために、その番号の「元の所有者」がその番号がどのキャリアで使われているのかを正しく追跡し、かかってきた電話を正しいところに転送してあげる、というような管理をしなければなりません。今でこそ3社だけですが、もしMVNOすべてに携帯電話番号を割り当てることになると、どの番号がどのM(V)NOに加入しているかを追跡するためのシステムを各MVNOが持たなければならなくなり、その管理コストは大変なものになります。当然それはMVNOの料金に響きます。

 こうした苦労をすでに知っているMNO各社は「現実的とは思えない」とコメントし、一方でMVNO側は「ぜひとも割り当てを」とコメントしているというのが現状です。今後、総務省がどのように進めていくのかが注目ポイントとなりそうです。

3.端末とネットワークの相互依存

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 最後に、端末のつくりについても今後注文をつけるかもしれない、という話が出ています。たとえば、キャリア製のスマホのSIMロックを解除してMVNOのSIMを入れ、端末のメニューで「テザリング」を選んでも、うまく動きません。

 MVNOとしてはこれはとんでもない話だ、ということになるのでしょうが、MNOにはそれなりの言い分があり。というのもテザリングは、スマホ本体での利用とは使い方が違うのでオプションにしていたり、より低コストのネットワークに負荷を逃がしていたり、ということを行うための仕掛けを端末に組み込んでいます。もしここが簡単にいじくれる作りだとすると、規制やオプション料金逃れのズルがまかり通ってしまうので厳重に封印している、という事情があったりします。

 MNOが端末に仕込んでいるいろいろな制限はほとんどの場合、MNO独自サービスを維持するための「ズル封じ」の側面が強いので、こういったつくりを法令で禁止するのはさすがにやりすぎだとは思いますが、総務省としては一つの課題として取り組む、とコメントしています。

 全体として、まだ中間報告でどのようになるのか分からない状況ですが、LTEのネットワークはもともと機能ごとのアンバンドルがしやすいように標準規格が作られていますので、おそらく横並びのルールを作るのはさほど難しくないと思われます。

 総務省の方には、各社からのヒアリングだけでなく、標準規格をしっかりと分析してもらい、どの機能のアンバンドルが簡単でどこが難しい(MNOオリジナルの実装が入りやすい)のかを把握し、能動的にルール作りをしてもらいたいものです。

 おそらく世界も同じ動きをしていくと思われるので、そうなると、アンバンドル用の装置も世界と同じ仕様で安く手に入り(=通信料金は安く)、世界中で販売される多様なSIMフリー端末が過不足無く動作する、という「通信のエコシステム」が実現するのではないでしょうか。

(文:記者M)

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