インタビュー
» 2015年12月15日 12時31分 UPDATE

開発陣に聞く「Xperia Z5 Premium」:目指したのは4Kではなく“最高画質”――ソニーモバイルが「Xperia Z5 Premium」で越えた壁 (1/3)

スマートフォンでは世界初となる4Kディスプレイが注目を集めている「Xperia Z5 Premium」。なぜこのタイミングでの搭載を決めたのか? 肉眼でどこまでフルHDとの違いを識別できるのか? 消費電力は大丈夫? ソニーモバイルの開発陣に疑問をぶつけた。

[田中聡,ITmedia]

 この冬に発売されるスマートフォンの中で、特にスペック面で注目度の高いモデルが、日本ではNTTドコモが取り扱う「Xperia Z5 Premium」ではないだろうか。スマートフォンでは世界で初めて4K(2160×3840ピクセル)という超高精細なディスプレイを搭載した。ボディもXperia Z5とXperia Z5 Compactがフロストガラスを用いて落ち着いた仕上げにした一方、Z5 Premiumでは鏡面仕上げにしており、強烈なインパクトを放っている。

photo 「Xperia Z5 Premium」のChromeとBlack

 なぜこのタイミングで4Kディスプレイを採用したのか? そもそもスマートフォンに4Kディスプレイが必要なのか? 消費電力は大丈夫なのか? ソニーモバイルコミュニケーションズの商品企画担当 板倉氏、ディスプレイ担当 尾崎氏、デザイン担当 村井氏に話を聞いた。

photo 左から村井氏、板倉氏、尾崎氏

4Kディスプレイを実現するためのハードル

photo 商品企画担当の板倉氏

―― まず、製品名の「Premium」に込めた意味を教えてください。

板倉氏 Xperia Zシリーズでは、フラッグシップモデルとコンパクトモデルの2ラインが受け入れられてきた中で、フラッグシップモデルではデザイン性が強く求められていると感じています。カメラもとんがりたいけど、設計が難しく、フラッグシップゆえの制約があります。

 薄さやスリークさが求められている一方、最高の品質やテクノロジーを詰め込んだ商品を実現したらどうなるのか? という議論がありました。その構成要素を検討した中で、「4Kディスプレイ」が搭載可能と判断しました。この4Kディスプレイを最大限使っていただける範囲内で大きなサイズにして、とがった商品を目指しました。

 Xperia Z5 Premiumの何がプレミアムかというと、ハイレゾ(高解像度)なディスプレイ、カメラ、オーディオと、プレミアムなエッセンスを詰めたデザインです。高い次元でバランスの取れた商品に仕上がったのではないかと思います。

―― なぜ4Kディスプレイをこのタイミングで搭載しようと思ったのでしょうか。バッテリー駆動の関係で、フルHDを超える解像度の液晶は、時期尚早という話も聞きました(→WQHD液晶は時期尚早?/オムニバランスデザインは終わらない?――Xperiaの今後を聞く)。

板倉氏 やはり技術的な成熟度が一番大きいですね。パフォーマンスやスタミナが、お客様の要望に見合うようになったからです。われわれはWQHD(1440×2560ピクセル)のディスプレイはかたくなに拒んできました。複数の方から「なぜWQHDに行かずにフルHDにとどまるのか」という質問は受けていましたが、そこはスキップすべきと考えました。4Kコンテンツがまだ少なく、鶏が先か、卵が先かになりますが、「われわれが先に4Kを出す」という意志でやっています。

―― WQHD液晶をスキップした理由は?

板倉氏 動画コンテンツとの親和性を考えたからです。ハードだけWQHDでもコンテンツが存在しません。一般の方はあまり意識しないと思いますけど、われわれはそこは意識して、コンテンツが存在する解像度を追求したいですね。

―― スマートフォンに4Kディスプレイを搭載できたということは、技術的なブレークスルーがあったということでしょうか。

尾崎氏 4Kを実現するにあたって、「画質」と「システム」という2つのハードルがありました。

 4Kでは縦も横も2倍になるので、画素1つ1つのサイズが非常に小さくなります。これによって、バックライトの透過率を確保するのが難しくなります。4Kディスプレイのプロトタイプは2〜3年前から作ってきたのですが、「光が通らない」「明るさを確保できない」という理由で、なかなか商品化に結び付きませんでした。

 画質の方針は各メーカーで違いますが、ソニーモバイルとしては「ブライト&ビビッド(明るく鮮やかに)」をベースに絵作りを進めました。4Kでも当然、明るく鮮やかでないといけないので、妥協せずに検討してきました。2〜3年前から始まり、「どうやったら小さい画素でも光を透過させ、色の再現性を確保できるか」を突き詰めました。そして「これなら行けそうだ」というのが、2014年の夏前に見えてきて、何とかハードルを超えることができました。

 システム面でのハードルは、4Kになって扱うデータ量が増えることです。巨大な4Kデータをデバイスに表示させるまでに、CPUの制御部分とデバイスをデータが往復するわけですけど、その量をいかに制御するかが課題でした。

 データの転送を最適化するために、プロセッサ側で最適なデータ量に圧縮して、それをデバイスに転送して、圧縮したものを復元して表示するという構築を行いました。もちろん、圧縮した画素情報が欠落しないように、です。圧縮する側と復元する側でプロトコルを合わせないといけないのですが、当初は、経由した後にうまく復元できませんでした。こうした不具合があったときに、どちら(CPUかデバイス)がどう悪かったのかという切り分けがとても難しく、苦労した点です。

―― なるほど。データを圧縮して復元させる手法は、フルHD液晶ではやっていなかったのでしょうか。

尾崎氏 はい、やっていません。

―― データを圧縮することの一番のメリットは何でしょうか。スピーディに表示できることでしょうか。

尾崎氏 それもありますが、どちらかというと消費電力の観点からですね。

―― Xperia Z5 Premiumの消費電力は、従来モデルと変わらない?

尾崎氏 そうですね。Z5、Z5 Compactと同じく、Z5 Premiumでも3日間お客様に使っていただけることを実現することも大きな課題でした

―― 例えば、同じ解像度の写真をXperia Z5 PremiumとXperia Z5で表示した場合は、大きな差は出ないのでしょうか。

尾崎氏 厳密に言うと違うと思いますが、(Z5 Premiumは)大きなバッテリーも搭載しているので、端末のバッテリー持ちは同レベルにしています。

―― スタミナ面で不利になることはない。

尾崎氏 そうですね。

―― 4Kコンテンツを表示しているときの発熱は大丈夫でしょうか。

板倉氏 Z5と同じく、ヒートパイプを2つ持っているほか、熱を逃がす導電性のジェルを採用しています。

全てを4K表示にしなかった理由

photo ディスプレイ担当の尾崎氏

―― Xperia Z5 Premiumでは「アルバム」「動画」アプリで表示したもの以外は、4Kでは表示できず、フルHDとなります。この理由を教えてください。

尾崎氏 どこまで4K表示をするかは、社内でもかなり深く議論しました。その中で「お客様が4Kを楽しみたい場面はどこか?」を抽出した結果、アルバムアプリで静止画や動画を4Kでフル表示したときだろうと考えました。

―― 全てを4K表示にすることは、あまり意味がない。

尾崎氏 そうですね。バッテリー持ちの観点では、常に4Kがいいかというと、ベストではありません。

―― フルHDから4Kにアップスケーリングするコンテンツに制約はあるのでしょうか。

尾崎氏 静止画はアルバム、動画はアプリを問わず、アップスケーリング可能です。

板倉氏 動画はAndroid標準のデコーダーを使用していることが(アップスケーリングの)条件です。動画アプリで独自のプレーヤーを持っているものがまれにありますけど、その場合はアップスケーリングはかかりません。

―― アップスケーリングはどういう仕組みで実現しているのでしょうか。

尾崎氏 例えばフルHDのコンテンツを4Kにアップスケーリングすると、純粋にもともとのドットが4倍になります。その際、斜めの線を純粋に4倍にすると、間がカクカクとなります。そういったものをうまく補完してあげます。

板倉氏 フレーム内での画素補完と呼ばれているものです。フレーム内で画像を認識して、その間を埋めています。

―― アップスケーリングをしても、データの転送量は変わらないのでしょうか。また、CPUへの負荷はどうでしょう。

尾崎氏 アップスケーリングのありなしで、データの転送量が変わることはありません。CPUも、それによって負荷が上がることはないですね。

―― アップスケーリングは設定で切り替えられるのでしょうか。

尾崎氏 「X-Reality for mobile」とひもづいているので、それと連動します。

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