2016年は“継続”と“変革”の年?――通信4社の年頭所感

» 2016年01月05日 18時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクグループ、UQコミュニケーションズの4社は、2016年の年頭所感を発表した。

 2015年は、MVNO(仮想移動体通信事業者)の「格安SIM」がより普及し、その流れを受けて「格安スマホ」も売れ行きが伸びた。また、携帯電話料金・端末代金の「公平化」に向けた議論も行われた。競争環境が大きく変わる中で、通信事業者が通信以外の事業領域に注力する姿も、珍しくはなくなった。

 より厳しさを増す市場環境下で、各社は何を考えて2016年に挑むのか。各社社長の年頭所感には、そのヒントが隠されている。その概要をまとめて見てみよう。

競争ステージを変える取り組みを継続――NTTドコモ

NTTドコモの加藤薫社長 NTTドコモの加藤薫社長

 NTTドコモの加藤薫社長は、2015年を「競争ステージを『サービスによる付加価値競争のステージ』へ変えていくため、邁進した1年」と振り返った。

 3月に提供を開始した光回線サービス「ドコモ光」は、12月21日時点で100万契約を突破し、好調に推移している。

 4月には、パートナー企業との「協創(コラボレーション)」によって新たな付加価値を創造する「+d」の取り組みを発表し、さまざまな分野において提携・協業などを推進している。その一環として、12月にはドコモポイントを「dポイント」に、クレジットサービス「DCMX」を「dカード」にそれぞれリニューアルし、ポイントをためたり使ったりしやすくする取り組みを実施した。

 ショッピングポータル「dマーケット」も順調に推移し、合計契約数は1400万件に達した。「dマガジン」はサービス開始(2014年6月)から1年3カ月で契約数が250万件を突破したほか、5月に開始した「dグルメ」は契約数60万件を突破している。LTE-Advacedサービス「PREMIUM 4G」では、10月に国内最速の下り最大300Mbps(ごく一部で337.5Mbps)を実現した。

 2016年は、これらの取り組みを継続するという。まず、携帯電話の販売面では、行き過ぎた販売方法をさらに段階的に見直すと同時に、料金面でも多様なニーズに応えられるように順次見直していく。

 ドコモ光については、生活を便利で楽しくするためのサービス拡充を図る。+dの取り組みについては、「オープン&コラボレーション」を掲げ、「IoT(モノのインターネット)」「社会的な課題の解決」「地方創生」「2020年」といったテーマに沿って提携・協業の強化を図る。

 PREMIUM 4Gについては、10月に下り最大370Mbpsのサービスを開始する予定だ。さらに、第5世代移動体通信(5G)については、2020年度を見据えて世界中のパートナーと協力して実証実験や標準化活動に積極的に取り組む。

 経営面では、一層の事業の効率化を進め、経営体質の更なる強化を進めるとしている。

“変革”に挑み、新たな成長を確固たるものにする――KDDI

KDDIの田中孝司社長 KDDIの田中孝司社長

 KDDIの田中孝司社長は、2015年を「通信を取り巻く、ビジネス環境の大きな変化が、はっきりと見えた1年」と振り返った。

 モバイル市場の同質化とMVNOの拡大によってスマホシフトが鈍化する中で、通信事業者は、通信事業やその周辺領域にとどまらない事業拡大や提携・協業の動きを強めている。KDDI自身も「au WALLET Market」を開始したり、ミャンマーでの通信事業をより強化したりと、さまざまな取り組みを進めている。

 その結果、競争軸が「より広い領域」にシフトし、通信事業者以外の企業と競合する事業も多くなってきた。「あらゆる産業分野が関わるIoTが進展すると、この動きはより一層加速する」と指摘する田中社長は、4月から新たな中期経営計画が始まることも踏まえて、2016年を「会社も個人も“変革”していくことにより、新たな成長を確固たるものにする」1年にしたいとした。

 KDDI社員に対しては、この目標を踏まえて「自ら変革していく強い『思い』を持つ」「個人個人も成長する」「スピードアップ」の3点を心構えとして実行してほしいというメッセージを寄せた。

革新しながら成長を続けていく――ソフトバンクグループ

ソフトバンクグループの孫正義代表 ソフトバンクグループの孫正義代表

 2015年7月、ソフトバンクは「ソフトバンクグループ」に商号変更した。同社の孫正義代表は、この商号変更を「グローバル規模で事業資産を持つ日本企業から、長期的視野で持続的に成長できるようなグローバル企業として歩み出すための決意」であることを2016年の年頭所感で改めて説明した。

 国内事業については、2015年4月にソフトバンクモバイルを存続会社として通信事業を手がける4社を統合し、同年7月にはソフトバンクモバイルを「ソフトバンク」に商号変更した。統合後の通信事業会社では、孫代表に代わり宮内謙氏が社長兼CEOとなり、通信事業だけではなくIoTやAI(人工知能)といった新事業分野への挑戦を始めている。さらに、2016年4月に同社が一般家庭への電力の小売りを始める。「通信と電力の融合によって生まれる新しいサービスにもご期待ください」と、孫代表はアピールした。

 米Sprint事業については、「強力なリーダーシップを持ったCEOであるマルセロ・クラウレと、多様な経験を持った幹部チームが一丸となって努力を続けており、主要な経営数値が改善の兆しを見せています」として、再建が順調に進んでいることを明らかにした。

 ソフトバンクグループの強みは「世界各地で『情報革命で人々を幸せに』という経営理念を共有する素晴らしい経営者チームが各事業を率いていること」とする孫代表は、「革新しながら成長を続けていくことで情報革命を牽引していく企業グループであり続けたいと強く思います」と年頭所感を締めくくった。

「つなぐを、磨く」で、お客様に新たな感動を届ける――UQコミュニケーションズ

UQコミュニケーションズの野坂章雄社長 UQコミュニケーションズの野坂章雄社長

 UQコミュニケーションズの野坂章雄社長は、2015年は「UQにとって、まさに激動の1年であった」と振り返る。

 WiMAX 2+サービスでは、月間の通信容量制限を設けない新料金プラン「ギガ放題」の導入を導入し、「4×4MIMO」と「キャリアアグリゲーション」の2方式による下り最大220Mbpsサービスを開始した。結果、J.D. パワーの「モバイルデータ通信サービス顧客満足度調査」において2013年から3年連続となる総合満足度第1位を獲得できた。

 また、2015年10月にはKDDIバリューイネイブラーと合併し、沖縄県以外での「UQ mobile」事業を継承した。WiMAX/WiMAX 2+によるワイヤレスブロードバンド通信事業に加え、MVNO・MVNE事業という新しい顔を持った。

 それを踏まえて、野坂社長は2016年を「更なる成長の起点となる1年にしたい」とする。UQ WiMAXと、新たに加わったUQ mobileの両サービスによって、「既存の携帯キャリアとも一般のMVNOとも違う “新たな第3極”を目指す」という。また、「『つなぐを、磨く』をさらに推し進め、「お客様に新たな感動をお届けできるよう、全社一丸となって取り組む」と意気込みを語った。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年