この記事を執筆時点で筆者は、米国・サンフランシスコで開催中のIEEE International Microwave Symposium(IMS 2016)に参加している。基調講演にはMotorolaで携帯電話を開発した「ケータイの父」と呼ばれるマーティン・クーバー博士が招かれ、スマートフォンの今後について話していた。
開発当時の携帯電話はれんがサイズでバッテリーの稼働時間はわずか20分だった。しかし、「重たい電話機を20分も持てる人は少ないだろう」と問題にならなかったという。
それから数十年が経過し、携帯電話はPC並みの性能を手のひらに納め、バッテリーも何とか一日持つようになった。クーパー博士によると、現在のスマホはこれから大きな変化を迎える事になり、それが訪れる時、スマホはその役割を終えて消えるだろうと述べた。
その変化とは「最適化(カスタマイズ)」。今のスマホはその対極に位置しており、皆が同じ端末を使い、スマホを側頭部に押し付けて話し、ヒマな時に皆それを眺めている――そんな時代が終わる事を予告していた。
その変化は将来の話だ。今回はスマホで世界最大のシェアを持つSamsung製の最新端末「Galaxy S7 edge」(米国T-Mobile版)の調査結果をご紹介したい。
Samsungによると、2016年のスマホ生産予定数は約4.1億台である。この中には修理交換用の製品が20%程含まれており、これを差し引いても約3.3億台が販売されることになる。
Galaxy S7 edgeやGalaxy Noteなどのフラグシップ機の割合は20%程度だが、それでも予想より売れ行きは良いとのこと。最も売れているのはミドルレンジのやや下のグレード、価格にすると150ドル以下の製品が大多数だという。
Galaxy S7 edgeは5月19日に日本でも販売がスタートした。GfK Japanの調査では、22日までに「iPhone SE」を上回る数が販売されたようだ。
サンフランシスコの前はロンドンに滞在していたため、偶然にもGalaxy S7 edgeの英国、米国、日本での販売価格を知ることができた。32GBモデルの価格はドコモ版が税込9万3960円、au版が税込9万8280円。英国のあるショップでは税別9万9040円(619ポンド)、米国では税別7万7000円(699.99ドル)であった。日本や英国に比べ、米国では少し低めとなっていた。Appleの牙城を崩すため、米国では戦略的な価格を設定したのかもしれない。
2014年に発表された「GALAXY S5」は防水・防塵(じん)対応だったが、デュアルエッジスクリーンとなった「Galaxy S6 edge」は非対応に、そして今回のS7/S7 edgeは再び防水に対応した。
そのボディーは防水/防塵機構のためS6/S6 edgeから少し厚くなった。その分、レンズ部の出っ張りが指摘されていた背面カメラがほぼフラットになり、ポケットから取り出す際の引っ掛かりがなくなる点を歓迎するユーザーも多いだろう。
USB端子は防水スマホのトレンドでもあるキャップレス防水を採用した。ただ内部に大きな変化は見られず、ヘッドフォン端子やMicroUSB端子のジャックのすぐ後ろにフレキシブルプリント基板があるなど、従来機種と変わらないレイアウトだ。
分解していて気付いたのは、防水のためにこれまでとは異なったタイプの接着剤を使っている点だろう。従来の接合面はセロハンテープのような表面的なものだったが、今回分解したS7/edgeはスポンジ状のものに変化していた。これが防水機構を支えるものではないかと推測でき、またこの部分の厚さが増したことで、端末の奥行きにも影響を与えたとも考えられる。一般的に防水構造にすると、原価コストは15ドル程上がるといわれている。
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