2020年に吹き荒れた新型コロナウイルス感染症の影響はiPhoneにも及んだ。生産開始が3カ月遅れ、発売も1月おいて2回に分ける異例の措置が取られた。それでも2020年末までの新モデルの生産総数は約8000万台と2019年同様の水準を達成し、組立現場のすさまじい頑張りが伺える。
iPhone 12シリーズのうち、約1500万台は米国限定のミリ波5G通信に対応した。2019年から米モトローラや韓国サムスン電子が少ない機種で少数をリリースしていたが、これほど大量のミリ波対応端末が一気に投入されるのはiPhoneが初めてだろう。今回はミリ波に注目しながらiPhone 12シリーズの目立った点をご紹介したい。
長年iPhoneを調査しているが、前年モデル(今回はiPhone 11シリーズ)よりバッテリー容量が減ったのは今回が初めてだと思われる。4種類それぞれの減り方は異なるが、平均1割弱ほど減っている。
なぜ容量が減ったのだろうか。考えられる理由は3つある。
1つはiPhone 12シリーズが前年より1mmほど薄くなった影響と考えられる。バッテリーはiPhone構成部品の中で最も容積のある部品の1つであり、iPhoneの薄型化と一緒に薄くなったと考えられる。
省エネに貢献している部品が増えたことも、バッテリー容量減に踏み切った理由なのかもしれない。1つはA14プロセッサが世界初の5nm微細化技術を採用し、大幅な節電効果を生んだ。
もう1つは電源管理ICの増加が挙げられる。一般論として、スマートフォンはシステム用に1個、通信用に1個、合計2個の電源ICを搭載すれば動く。細やかな電源管理を行うため、iPhoneにはカメラ用や5G通信用に別途電源ICが追加された。iPhone 12シリーズが搭載する電源ICは5個まで増えた。電子部品が増えるのでコストは上がるが、省エネ対策としては有効で、他社のプロセッサやスマホでも同様の傾向が広がっている。
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