KDDI田中社長、長期優遇は「割引よりポイント」「それだけだとハートに来ない」

» 2016年05月31日 22時29分 公開
[平賀洋一ITmedia]

 KDDI(au)は5月31日、新発表の7機種を加えた2016年の夏モデル第1弾と、新たな会員制プログラム「au STAR」を発表した。

auの2016年夏モデル auの2016年夏モデル
au STAR 「au STAR」

 この夏商戦に合わせ、“auは、大きくかわります。”“CHANGE!”というスローガンも打ち出したKDDI。田中孝司社長はその背景を「(料金の値下げを議論した)タスクフォースの影響で、3社間のユーザーが流動しなくなった。またタスクフォースの影響ではないが、スマホが普及したことで、ユーザーの意識が『スマホをどう使うか』に変わった。ユーザーの声を本当に聞いているのか、対応しているのかという大反省がある」と説明した。

KDDIの田中社長 KDDIの田中社長
au夏モデルは第1弾 今回のau夏モデルは第1弾。第2弾も予告した

 長期契約者を優遇する「長くつきあうと←イイコト これからのau」という新コンセプトも掲げ、利用年数とデータ定額料に合わせてポイントを還元する「au STAR ロイヤル」、定期的にサービスやコンテンツが無料になり、2年契約の更新時に3000円相当のギフト券をプレゼントする「au STAR ギフト」も開始。同じシリーズのスマホを使い続けるユーザー向けのイベントも定期的に実施する。

 長期優遇策が割引ではなくポイント還元なのは、「多数の調査をした結果だ。例えば、家族契約など料金を支払う人と使う人が違うケースが多い。その場合は、ユーザーごとにポイントを付与したほうが使い勝手がいい」(田中社長)ためだという。

au STAR 「au STAR」のユーザー向け特典
au STAR 16年いっぱいをかけて順次提供する

 ポイントをためるにはプリペイドカードのau WALLETカードが必要で、1枚1枚がau STARプログラムの会員証になる。プログラムに入れば、キャリアショップでの待ち時間が減る優先予約も可能で、「(カードは)ポイント付与と同時に、1人1人を識別するツールでもある。プラスアルファを提供するために必要」(田中社長)と理解を求めた。

 さらに田中社長は、auの夏モデルに「第2弾」もあると予告。ラインアップがさらに増えるが、「ユーザーごとの希望が違い、それに合わせていかなければならない」のが理由だという。

 イベント後の囲み取材の様子は以下の通り。

囲み取材に応じる田中社長 囲み取材に応じる田中社長

―― 長期契約者向けの優遇プランが通信料からの直接割引でなく、ポイント付与となったが、その理由は。

 例えば、スマホでデータチャージするのにコンビニで(データチャージの)プリペイドカードを買うことがあるが、それと似ている。au WALLETプリペイドカードを使う(副回線の)子供と、全部をお支払いする親という間では(ポイントのとらえ方が)違う。ポイントにした場合は通信料に充てることもでき、効用的には変わらない。

―― 明細を見ないため、割引額が分かりにくいという声もある。ポイント付与をどう分かりやすく説明するのか。

田中社長 もっとプッシュしたり、ポイントを付与する際に通知したりしなくてはいけない。通知は来店施策にもなり、エコシステムにもつながる。もっと向こう側、ユーザー側の視点に立たないといけないだろう。

 店舗の優先予約が可能になる「au STARパスポート」もそうだが、昔からスマホを使っていて全部自分で決める、店頭で余計な説明は要らない、契約書類も要らないという人もいる。方やシニアに限らず、40台前半の男性でもスマホについて聞くことが恥ずかしいという人に対して、どんな説明が必要なのかを抜き出すのは非常に重要。一律のプロファイルで対応するのは限度で、もっときめ細かにしないといけない。

 これはショップスタッフと一緒じゃないとできないことで、すごい大変。でも一歩一歩進める必要があり、それには今回のような宣言が必要。全店舗でできるようになるのに時間がかかり、そのご批判は承知の上でやっていく。

―― (ショップの変革に)どのくらいかかりそうか。

田中社長 まず500店舗は大きく変わったな、というところまで持って行きたい。特に秋はいろいろイベント(新型iPhone発売)があり、時間はかかるけど着実に進めたい。

―― 第2弾の夏モデルとは何か。

田中社長 今言うなら、これ(今回のラインアップ)に入れてます(笑)。一緒に発表したらいい、という声もあるが、少し特徴のあるもので別にした。

―― 各社夏モデルは機種数を絞っているが、auは第1弾、第2弾と数が多い。

田中社長 秋は話題が1つ(新型iPhone)になっちゃうので(多い方が)いいんじゃない? と思う。本当は数を少なくして1機種の台数を増やした方が単価が下がる。でも、それってどうなの? とも思う。「少し多すぎる」と思われるかもしれないけど。

―― 実質0円がなくなり、在庫を減らすのが難しくなった。

田中社長 その通りで、良く考えてやらないといけない。ただ在庫の問題は提供者側の問題。維持が難しくなったら機種は減らすかもしれないが、今はチャレンジしていこうということ。

―― 総務省での議論は家計に占める通信量の負担増を問題視している。料金そのものを下げる考えは。

田中社長 料金はニーズに合わせてやっていくつもり。総務省さんでの議論は、ポイント、ポイントでは正しいと思うが、本当に正しいかというと、そうでもない。安く端末を買いたいというのがマジョリティー。そこはバランスを取らなくてはいけない。

 お客さんはそれぞれ違うんですよ、というメッセージを伝えたい。スマホを何年も前からガンガン使っている、どんどん機種変更している、という人と、(1機種を)長く使う人を一律で議論しては間違ってしまう。(タスクフォースで)いろいろとおっしゃっている点は、できるかぎり自分たちで消化していきたい。ポイント付与と月額料金を下げるのはちょっとしか変わらない。

 ダム・パイプになって安い回線だけ提供する生き方と、せっかくスマホがあるのならアドオンサービスを付けて、一律にならないよう少しでもワクワクを感じられるように、という両方がある。グローバルでも2極化しているが、僕らは後者を選びたい。

 だってIoTをやりたいのに、IoTの端末だけをどうやって売るのか。アプリケーションや使い方など、ベネフィットがないと展開なんかできない。まずサービスにジャンプして、もっと分かってからやろうとしている。

 (サービス展開の1つ)保険も、結構数がでている。意外だったんだけど、お客さんはauショップを身近に感じてくれていて、「そこにあるから」と入ってくれる。僕らの世代は会社に入ったら保険の人(外交員)が来て加入した。でも今の若い人は保険に入らない。結婚した、子供が生まれたという時に考え出す。そのときに一番身近なのはどこか? ということ。

 (料金・ポイント制度について)まだまだ不十分とご批判を受けるが、できるだけ画一的にならないよう努力していきたい。

―― 「世界データ定額」について。なぜこのタイミングか。

田中社長 本当に昔から検討していて、2015年の夏にやろうとしたけど(さらに)1年かかった。時間がかかったのは海外と国内で料金を分けるためで、今ままでは(現地の)データ料でいくら、あとはその額を下げるという交渉だった。

 今度は(データ単価が)国内料金と同じレートでプラス980円、スイッチを押して後は何時間――と、分かりやすいが、ここまで来るのに時間がかかった。結構まじめに考えたので、結構良いはず。地味な良さね。

―― 長期契約者向け優遇策の重要性について。

田中社長 当然ポイントバックもあるが、不思議な話でそれだけではここ(ハート)に来ない。ギフトも付け加えたのは、それぞれのタイミング(毎月や3カ月ごとなど)でリマイドして欲しいという意識を持ったから。

―― ユーザーをつなぎ止めるのに苦心しているということか。

田中社長 タッチポイントを維持したいということ。これを失うと土管屋になる。お客さんが来てくるのはありがたいことで、そうでなければ「安く提供してください」「MVNOです」となってしまう。今回のラインアップも、(タッチポイント維持のため)ある程度チャレンジするという意思の表れ。在庫がいっぱいたまったら、またいろいろ考えていかないといけないけど(笑)。

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