中国のSNS事情――もはや生活インフラになりつつある「WeChat」

» 2016年06月13日 20時00分 公開
[田中宏明ITmedia]

 上海に来て4年目の筆者は、中国発のSNS「WeChat」が、もはやSNSの範囲を超えてしまっていると感じています。日本でもさまざまなSNSがありますが、1つの国でここまで浸透しているSNSはないのではないでしょうか?

 こうした中国のSNS事情を確かめるべく、弊社が上海で運営している中国人向け日本語ネットラジオ番組「LivAiA!(リヴァイア!)」の中国人リスナー78人にアンケートを実施しました。対象者の属性は「LivAiAリスナー」「上海在住」「日本語可」の3つで、男女比は男性が21人、女性が57人、年齢層は20代が30人、30代が45人、40代が3人です。

アンケートの対象者全員が使っている「WeChat」

 「現在、利用しているSNSは何ですか?」という質問をしたところ、78人全員が利用しているWeChatがダントツ1位でした。2位はQQ(36人)で、3位はなんと、中国ではVPNを使わないと使えないとされているFacebook(21人)でした。これは、日本語が分かる中国人にアンケートを取っているため、日本の友人などがいるからかもしれません。

中国SNS事情

 ある程度予想はしていましたが、「WeChatの浸透度」には驚きました。中国では、今やWeChatなしでは生活できないと言っても過言ではないほど浸透しています。

 ここまでWeChatが使われていると、使わなくなったSNSもあるはずです。というわけで、2つ目は「現在は使っていないが、以前は使っていたSNSはなんですか?」という質問をしました。回答の1位はQQ(21人)で、2位はMSN(MSN Messanger、18人)、3位はLINE(12人)という結果になりました。

中国SNS事情

 1位のQQは、現在使っているSNSでも2位ですが、仕事だけで使っている人が多かったです。実は、僕もQQはチャットメールとして、主に社内でのコミュニケーションに使っています。無料で、しかも画像もファイルも楽々送信できるので、社内では連絡事項などはほぼ100%QQを使っています。

 意外だったのは、MSNを以前は使っていた中国人が多かったことです。個人的には、全く使ったことがないのでイメージがつきませんが、その用途を聞いてみたところ、チャットやウォールなど、通常のSNSと似たような使い方をしている人が多かったです。

 LINEに関しては残念な結果になりました。一時期は上海でも地下鉄の中での広告などで中国人ユーザーが増えたのですが、規制により全く使えなくなってしまい、なぜかVPNを通じても使えないため、やむなく現在は使っていないユーザーが多いのではないかと思います。弊社の中国人スタッフも、LINEキャラがプリントされたTシャツを毎日来ているぐらいなので、人気はあるのですが……。

財布を持たず、WeChat Payで払う人も

 次に、中国人がWeChatでどの機能を使っているのかも聞きました。

中国SNS事情

 最も多かったのは「チャット」(72人)でした。実際、中国ではWeChatで連絡を取り合うことが本当に多いのです。その次に多かったのは、「モーメンツ」(62人)です。ここでは、自分の近況をアップしたり、友達のモーメンツを見たりしています。

 次に多かったのが「WeChat Pay」(58人)でした。WeChat Payは、オンライン方式の電子決済サービスです。毎月の携帯電話の利用料の決済や家賃の支払いができるほか、コンビニなどでもQRコードを読み取ってもらうと、クレジットカードのようにサインをしなくても決済できます。このように、さまざまな決済をWeChat Payで行っています。驚いたのは、飲み会などで割り勘をするときなども、WeChat Payを使っていることです。

中国SNS事情中国SNS事情 「クイックペイ」(写真=右)
中国SNS事情 クイックペイのイメージ
中国SNS事情中国SNS事情 携帯電話料金(写真=左)や公共料金(写真=右)の支払いもできます

 アリババの決済サービス「支付宝(アリペイ)」を利用している中国人も多いですが、実店舗での決済サービスが浸透していく中で、WeChat Payも利用者が増えてきており、この領域で両社の利用者獲得合戦が激しく繰り広げられています。今後も注目のジャンルですね。

 確かに、小銭でパンパンになった財布を持つのも嫌ですし、現金がたんまり入った財布を持つのも嫌ですよね。しかも、今やほとんどのお店が、こうしたWeChat Payなどの決済方法に対応しているので、中国人の友人たちと食事に行くと、みんな財布を持ってきてないんです。WeChat Payで払うね〜という感じで。

 また、変わった機能としては、お正月などに企業の社長から社員向けに、「微信紅包」という機能を使ってお年玉が配られたりします。誰にいくら支払われるかは分からないようなゲーム性もあり、楽しいです。

WeChat IDを名刺代わりに交換することも

 上海歴4年目の筆者は、WeChatでは通常のSNS同様に、「モーメンツ」というウォールのようなものに、画像やテキストベースで近況をアップしています。次に利用頻度が高いのは、WeChat IDの交換です。これは初めて会った時に名刺交換をする感覚に似ています。

中国SNS事情中国SNS事情 「モーメンツ」で近況をアップできます(写真=左)。QRコードを使ってWeChatIDを交換できます(写真=右)

 中国人と会食などで知り合った場合は、名刺よりもWeChat IDを交換することの方が多いです。その際に使うのが、このQRコードスキャンなんです。日本は名刺交換文化なのでイメージしにくいかもしれませんが、例えば名刺よりもFacebookでのつながりが強い人がいますよね? これに近いといえます。

 名刺交換しても、「あれ? この人誰だっけ?」といったことは多いのではないでしょうか。交換した名刺をなくしても、WeChatは携帯があればすぐにつながりますから、中国では名刺の代わりにWeChat IDを交換しますね。WeChatでつながっていれば、チャットで連絡もできるので、名刺交換よりも便利なことが多いのです。


 まだ全てを説明し切れないほど便利な機能が多数あるWeChatは、もはやSNSの範囲を超えた“生活インフラ”になっているといえるでしょう。

 現在は、中国を中心に拡大しているWeChatですが、海外でも中国人旅行者を取り込む上では、WeChatをどう活用していくかを考えざるを得ません。そうなると、必然的に中国人が旅行に行くような都市には、WeChat Payを導入するような店舗が増えてくると思います。日本でもWeChatが浸透する日はそう遠くはないかもしれません。

著者プロフィール

田中宏明

上海必赞信息技术有限公司

総経理/ラジオパーソナリティー

上海発! 中国人向けネットラジオ番組「LivAiA!」を約30番組を運営。自らも、上海で活躍する人たちをインタビューする番組「Switch」のパーソナリティーを務める。上海で出会った人は約4000人。現在46歳。上海歴4年目。読書好き、珈琲好き、野球好き、飲み好き。

http://livaia.com/ja/


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