大容量プラン+データシェアで差別化を――“脱格安スマホ”を目指す楽天モバイル

» 2016年10月28日 16時39分 公開
[田中聡ITmedia]
楽天モバイル 左から楽天 楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサー 黒住吉郎氏、副社長執行役員 通信&エナジーカンパニー プレジデント 平井康文氏、執行役員 楽天モバイル事業 ヴァイスプレジデント 大尾嘉宏人氏

 MVNOサービス「楽天モバイル」が2周年を迎えた。10月27日に開催した新商品・新サービス発表会では、楽天 副社長執行役員 通信&エナジーカンパニー プレジデントの平井康文氏が、これまでの歩みを振り返った。

 2014年10月29日のサービス開始の発表会では、三木谷浩史社長が1000万台の契約を目標にすることを明かし、話題を集めた。2015年10月29日には「楽天モバイル 銀座店」をオープンし、店舗展開を本格化させた。

 その後も攻勢の手を緩めることなく、端末代+5分かけ放題+通信料で月額1880円からの「コミコミプラン」を2016年7月から、トライアル期間中はVoIPアプリ「Viber」が無料で使える「050データSIM」を9月から提供している。

 平井氏によると、この050データSIMの提供を開始してから2週間の新規申込数が、前月比で34%増加したという。またデータSIMの利用者のうち、46%が050番号を使って通話していることも判明した。

楽天モバイル Viberを無料で利用できる「050データSIM」
楽天モバイル 050データSIMの発売後、新規申込数が増加。050番号の利用率も半数近くを占める

 8月からは、「楽天スーパーポイント」を楽天モバイルの月額料金の支払いに充当できるようにした。その結果、利用料金の45%がポイントで支払われているという。「月額1600円の3.1GBプラン(通話SIM)の場合、ポイントで720円分を支払い、残り880円を現金かクレジットカードでお支払いいただくことになる。破壊的な価格でMVNOをご利用いただけており、他社ではマネできない楽天ならではのサービスだ」と平井氏は胸を張る。

大容量プラン+データシェアで利用シーンを拡大

楽天モバイル 大尾嘉宏人氏

 そして今回、新たに20GBと30GBの大容量プランと、翌月に繰り越したデータを他の楽天モバイルユーザーとシェアできるサービスを発表。さらに、携帯電話全体を見ると、41%が現金や口座振替で料金を支払っているという統計もあり、「お客さまからの根強いニーズがあった」(執行役員 楽天モバイル事業 ヴァイスプレジデント 大尾嘉宏人氏)ため、口座振替での支払いに対応する。

 大容量プランも、ユーザーからの声が大きかったことから提供を決めた。20GB、30GBのプランは大手キャリアも提供しているが、キャンペーンが終了するとテザリングオプションとして月額1000円が発生する。大尾嘉氏は、楽天モバイルはテザリングオプションが無料であることをアピールする。また大容量プランでは3日間の通信量を制限しない。

楽天モバイル 大容量プランの特徴
楽天モバイル 大手キャリアの大容量プランよりも安い

 20GB以上の大容量プランは、MVNOでもDMM mobile、イオンモバイル、エキサイトモバイルなどが提供しているが、楽天 楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏は、データシェアと組み合わせられることが差別化のポイントだと説明する。

 大容量プランとデータシェアを組み合わせ、家族でお得にデータ容量を分け合う例を、大尾嘉氏は“紙芝居”を使って説明。父親が20GB+5分かけ放題(5600円)、母親がコミコミプラン2GB+5分かけ放題+2GBシェア(1880円)、長男が3.1GB通話SIM(1600円)、次男が050SIM(ベーシックプラン)+1GBシェア(654円)という組み合わせなら、1人あたり月額2431円で済む。シェアする家族が増えるほど、1人あたりのコストを抑えられることをアピールしていた。

楽天モバイル 「楽天モバイル劇場 楽天ファミリーの分けあえるってすばらしい」と題して、紙芝居風に大容量プラン+データシェアのモデルケースを説明

 店舗については2017年内に150店舗の展開を目指すほか、ジェラートやアイスを販売するViTOとコラボし、下北沢店で楽天モバイルの商品を取り扱うことが決定。さらに、ショッピングモールなどに出店するポップアップストアも増やしていく。このポップアップストアではスーツケースを機材に使用しており、機動力の高さを生かす考えだ。「全国どこでも即日申込と開通ができる」と大尾嘉氏は話す。

楽天モバイル 10月27日時点で106店舗を展開している
楽天モバイル
楽天モバイル スーツケースを使ったポップアップストアも増やしていく

 なお、LINEモバイルやFREETEL SIMなどで実施している、特定サービスの通信量をカウントしない「カウントフリー」は、「今のところ検討していない」(大尾嘉氏)とのこと。

より充実した端末ラインアップに

 2016年冬〜2017年春の新機種として、スマートフォン「AQUOS SH-M04」、ケータイ「AQUOSケータイ SH-N01」、タブレット「MediaPad T1 7.0 LTE」を投入する。

楽天モバイル
楽天モバイル
楽天モバイル 「MediaPad T1 7.0 LTE」を手にする黒住吉郎氏

 AQUOS SH-M04は防水やおサイフケータイに対応しながら2万9800円という安さを実現。端末事業を統括する黒住氏は「シャープは高機能スマホに加え、中価格帯にも注力してきている。AQUOS SH-M04はミッドレンジスマホの集大成だと感じている」と自信を見せる。またエモパーやイルミネーション、本体を持つと自動で画面が点灯する機能など、「ちょっとしたおもてなしの部分」もシャープ端末の良さだと黒住氏は話す。

 AQUOSケータイを投入するのは、「使い慣れたキー入力ができ、折りたたんでコンパクトに使える従来型ケータイが欲しいという声はまだまだ大きい」(黒住氏)ため。大手キャリアのようなLTEケータイ専用の料金プランは作らないが、「大手キャリアのケータイ向けプランは、2段階定額と呼ばれているもので分かりづらくなっていると思う」と同氏は話し、5分かけ放題+3.1GBプランなら一律の料金で利用できる分かりやすさを強調した。

楽天モバイル AQUOSケータイは、大手キャリアのような2段階制ではなく、一律の価格で利用できる

 MediaPad T1 7.0 LTEについては、ほぼ1万円という安さ、片手で簡単に持てる単行本サイズ、高級感のあるアルミボディー、通話ができることなど、黒住氏はコスパの高さをアピールした。

 端末は他に「ZenFone 3」、楽天モバイルが独占販売しているHuaweiの「honor8」なども扱っており、「2016年秋〜冬にむけて、より充実した魅力的なラインアップになると確信している」と黒住氏は手応えを話した。

楽天モバイル 楽天モバイルの端末ラインアップ

“脱格安スマホ”でシェアナンバーワンを目指す

楽天モバイル 平井康文氏

 平井氏は「この2年で、MVNO事業の基礎はできあがったと思っている。来年(2017年)は、基礎から大きく勝負に出る年だと思っている。MVNO、業界全体にとっても勝負になる。MVNOは格安スマホではない。“脱格安スマホ”を目指したい」と語る。

 第三者機関の調査では、メインで利用している格安SIMは楽天モバイルが1位という結果も出ているが、実際の契約数はトップではない。目標の契約数を問われた平井氏は「数字は言えないが、間違いなくシェアナンバーワンを大前提にしている」と力強く語る。

 脱格安スマホを目指すとはいえ、価格の安さが大手キャリアとの差別化になるのは言うまでもない。必要なのは格安+αの価値。平井氏が「お客さまのニーズに愚直に応え続け、他社との差分を加えることで勝利への方程式が生まれる」と話す。今回発表した大容量プラン+データシェアもその一環といえる。楽天の場合、ECやポイントなど、楽天経済圏との連携も差別化の鍵を握っている。

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