携帯料金を3分の1に――“業界最安”の音声SIMを提供する「楽天モバイル」競合他社と比べてどれだけ安い?

» 2014年10月29日 20時45分 公開
[田中聡 ,ITmedia]

 楽天グループのフュージョン・コミュニケーションズがMVNOとして、ドコモ網を利用した携帯電話事業に参入し、月額1250円からの格安通話サービス「楽天モバイル」を10月29日から提供する。ドコモのフルスピードのLTE通信と音声通話を、低価格で利用できるのが大きな特徴だ。

月2960円で7Gバイトまで――楽天が格安通話サービス「楽天モバイル」開始

photo 「楽天モバイル」の料金プラン

競合他社の音声SIMと比べても「業界最安」

 最も安い月額1250円(税別、以下同)の「ベーシックプラン」は、通信速度は200kbpsに制限されているが、現在、MVNOが提供している通話SIMでは最安値を実現している。月額1200円台のプランは、日本通信が携帯電話SIMで1290円の「音声プランS」を提供しているが、こちらはデータ通信には対応していない。

photo 競合他社との比較(ベーシック)

 同じく日本通信は月額1560円で1Gバイトの通信が使える「スマホ電話SIMフリーData」を販売しているが、楽天モバイルの「2.1GBプラン」(月額1600円)の方がお得感は高い。フュージョンの調べでは、競合他社の音声SIMと比べ、2Gバイト以上3Gバイト未満は楽天モバイルの「2.1GBパック」が最安、4Gバイト以上5Gバイト以下では「4GBパック」が最安、7Gバイト以上8Gバイト以下は「7GBパック」が最安としている。

photophoto 競合他社との比較(2.1GBパックと7GBパック)

 2Gバイト以降のプランについては、IIJmio(みおふぉん)を特に意識していることがうかがえる。みおふぉんの最安プランは月額1600円で2Gバイトが使える「ミニマムスタートプラン」で、楽天モバイルの2.1GBパックと同じだが、使える通信量は楽天モバイルの方が0.1Gバイト多い。月4Gバイトの通信が利用できる、みおふぉんの「ライトスタートプラン」(月額2220円)と楽天モバイルの4GBパック(月額2150円)を比べても、楽天モバイルの方が50円安い。7Gバイトを利用できるプランも同様で、楽天モバイルの7GBパック(月額2960円)の方が、みおふぉんの「ファミリーシェアプラン」(月額3260円)よりも300円安い。

 楽天モバイルは音声通話の契約が必須だが、フュージョンはデータ通信のみを使える「楽天ブロードバンド」も展開している。こちらは月834円300Mバイトから。それぞれサービス名は異なるが、楽天モバイルの登場で、楽天グループの格安SIMサービスがさらに拡充された形となる。

30分の通話+2.1Gバイトのデータ通信で月2200円に

 楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、「楽天モバイルのキーワードは3分の1。高品質、超低価格なサービスだ」と語る。日本の携帯電話料金の平均値は主要国で2番目に高い7263円であること、通信キャリアが提供している新料金プランは安くても月額6500円(データ定額2Gバイト選択時)で横並びであることに言及し、毎月の携帯料金を、通信キャリアが提供しているものから3分の1に下げたいと意気込む。

photophoto 「1/3」「高品質 超低価格」という言葉をキーワードに挙げる三木谷氏

 三木谷氏は、ドコモユーザーの毎月の平均通話時間は30分というデータを出し、2.1GBパック+「楽天でんわ」で30分通話をしても、毎月の料金は合計2200円になり、3キャリアの新料金プラン(6500円)と比べても約3分の1に抑えられると説明する。1人あたりの節約額を(6500円−2200円の)4300円とすると、家族4人の年間節約額は20万円、10年後には200万円、40年後には800万円にも及ぶことを三木谷氏は強調した。

photophoto 日本の携帯電話代金は、諸外国と比べても高い(写真=左)。楽天モバイルを使えば、既存キャリアよりも電話代を3分の1に抑えられる(写真=右)

 楽天モバイルはMNPでの契約も可能。サービス開始当初は手続きに2〜3日かかるが、今後は実店舗などで即日手続きを可能にすることも検討している。手続きができる拠点や時期などの詳細は現時点では未定。

端末のセット販売も展開 第1弾は「ZenFone 5」

 音声SIM単体だけではなく、スマートフォンとのセット販売も行う。第1弾はASUSの5型LTEスマートフォン「ZenFone 5」(8Gバイトモデル)をセットで販売し、キャリア網を使用した通話料金が(通常の半額になる)10円/30秒の「楽天でんわ」に加え、無料のVoIPアプリ「Viber」、050番号が利用できる「SMARTalk」をプリセットする。端末価格は2万6400円で、当初は一括払いのみを受け付けるが、今後は分割払いも可能になる予定。セット販売する端末は、2014年12月に第2弾、2015年2月に第3弾の投入を予定している。

photophoto セット販売する「ZenFone 5」(写真=左)。ZenFone 5を手にする三木谷氏(写真=右)
photophoto 端末ラインアップは拡充していく(写真=左)。3つのキャンペーンも実施する(写真=右)

 三木谷氏は、発表会の最後に楽天モバイルの販売目標を「1000万台」だと明かし、携帯利用料を3分の1にすること、あらためて強調した。

通信キャリアとガチンコで勝負、競合MVNOはどう出る?

 現在、MVNOが提供しているサービスは「データ通信」と「データ通信+音声通話」の2種類の大別される。前者のデータ通信は、MNO(既存キャリア)の回線と組み合わせた「2台目」としての用途が主流だろうが、後者のデータ通信+音声通話は、MNOに並ぶ選択肢になる。

 三木谷氏も29日の発表会で楽天モバイルと通信キャリアをガチンコで比較しており、その本気度の高さがうかがえた。料金の安さはもちろん、8〜9万円するキャリアのスマホよりも6万円ほど安いZenFone 5という武器(端末)を得たことも強い。楽天モバイルは、キャリアにとっては無視できない存在だといえる。

 一方、音声SIMを提供する競合他社が、このまま黙っているとも思えない。特にIIJは、ビックカメラにカウンターも設置して即日MNPできる環境を整えており、実際にMNP(通話SIMユーザー)も増えているという。今後、IIJを含む他社がどのような対抗措置を取っていくのかにも注目したい。

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