学割として段階制の料金プランを導入した理由は、ユーザーによって利用するデータ量が異なり、しかもその差がかなり大きくなっているからだ。田中氏が紹介した2016年の学割の実績によると、3GB以下しか利用しなかったユーザーが23.5%いたのに対し、10GBを超えるユーザーは25.3%、5〜8GBのユーザーも25.9%存在する。つまり、人によって使うデータ量はまちまちで、年齢層による傾向が見いだしづらいということになる。
また、同じ人でも「学校が休みのときはガンガン使う、学校に行っているとスマホを持ってきてはいけないところもあり、そうするとデータ量が少ない」(田中氏)と、時期による変動もある。ここに合わせたプランを作ろうとすると、データ量が少ないプランだけでは不満が出るし、2016年のようにデータ量を増やすだけでもお得感が生まれない。田中氏は「両方のお客さんが満足でき、使い方が変わっても柔軟に対応できる」と述べていたが、やはり1つの料金プランで全てをカバーしようとすると、段階制は最適な解だ。
ただし、“素の状態”のU18データ定額20では、勢いを増すMVNOの料金プランや、Y!mobileなどと比べるとやはり金額面で見劣りする。「前はMNOのセールスシーズンにはMVNOが減る方向だったが、この前のiPhone(7)から、シーズンが重なるようになってきた」(田中氏)と、市場の動向も変化している。KDDIとしては、ここに対抗する必然性が出てきたというわけだ。
競合他社を見ると、1年間の期間限定ながら、Y!mobileはデータ容量2GBの「スマホプランS」が1980円。詳細は異なるが、KDDI傘下のUQ mobileも、同様のプランを展開している。楽天モバイルやFREETELのようなMVNOに至っては、端末をセットにして、ここに近い価格を打ち出している。そこでKDDIはauスマートバリューや家族の新規加入など、「いろいろな制限がある」(田中氏)形で、限定的にこの市場に対抗した。田中氏が「格安スマホの領域に、片足が入っている」と語っていたのは、そのためだ。
それでもY!mobileやUQ mobileより1000円ほど高いが、「MNOは何もしないではなく、iPhone 7やいろいろなサービスがついている」(田中氏)と対抗心をのぞかせる。1000円の差分は、MVNOやサブブランドにはない最新の端末や同時に開始した「auスマートパスプレミアム」で埋めていくということだ。「MNOはiPhone需要が基本になる。ここをベースにやっている」(同)。田中氏がこう語るように、春モデルは、iPhoneには足りないピースを埋める端末ラインアップに仕上がっている。主役はiPhone 7、iPhone 7 Plusで、その脇を固める端末をそろえたという言い方もできそうだ。
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