ハイエンドモデルが好調のHuawei 次期「P」シリーズには日本仕様が盛り込まれる?

» 2017年07月28日 19時19分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 Huaweiは7月27日、コンシューマー事業部の2017年上半期(1〜6月)の業績発表会をグローバルで開催。スマートフォンの出荷数拡大で前年同期比36.2%増の売り上げを記録するなど好調な業績を公表したほか、CEOのリチャード・ユー氏がビデオ会議で日本からの取材にも対応し、今後の端末やチップセットに関する戦略について答えた。

ハイエンドモデルの伸びが好業績に

 SIMロックフリースマートフォン市場で人気が高まっていることから、日本でも注目を集めるようになったHuawei。そのHuaweiの中でスマートフォンなどを手掛けるコンシューマー事業部が、7月27日に2017年上半期の業績を発表した。Huaweiは今回、中国で実施された業績発表会の様子を、ライブ中継で世界各国の記者に配信。日本でもその様子を見ることができた。

 説明会に登壇したコンシューマー事業部のCEOであるリチャード・ユー氏によると、世界のスマートフォン市場は飽和傾向にあり、5年前と比べ失速しているとのこと。一方で、多くの国では中間層や若い世代が増えており、そうした人たちがよりよいスマートフォンを求め、新しい機種に変えたいという要望が高まっていることから、Huaweiでは買い替え需要を満たすためのスマートフォンに力を入れているという。

Huawei ライブ中継された業績発表会で、業績動向に関して説明するリチャード・ユウ氏

 いま消費者が重視しているのは、インターネット、カメラ、ゲーム、動画、決済、健康の6つであるとHuaweiは分析。そうしたユーザーニーズに応えるべく、Huaweiでは中国のほか日本や米国、ドイツなどに研究所を構え、R&Dに関する投資を10年間で450億ドル実施するなど研究体制を強化。通信やチップセットの高度化、バッテリーの長寿命化、そしてカメラの強化などを進め、より高度なスマートフォンの開発に力を入れてきた。

 さらに販売面でも、販売チャネルを毎年19%のペースで拡大し、世界的に見るとHuaweiの店舗は4万2300に達するなど大幅に強化。ブランド価値向上に向けた取り組みを積極化したことで認知度が大幅にアップしているほか、コールセンターや修理などのサポート拠点も充実させることにより、ユーザー体験を向上させてきたという。

 そうした取り組みの成果がいま、ユーザーの満足度に現れてきているそうで、同社が重視するNPS(顧客推奨意向度)という指標を基準とした場合、2015年時点では欧州や南米、アフリカなどで低かったNPSが、2016年には大幅に向上しているとのこと。「Appleと比較しても、市場の中でリーダーシップを取っていると考えている」とリチャード氏は話しており、その実績に自信をうかがわせる。

 その結果として、コンシューマー事業部の2017年上半期は好調に推移しているそうで、第1四半期の世界スマートフォン市場での販売シェアも9.8%にまで上昇。「年間シェアでは10%を超える」とリチャード氏は自信を示している。

Huawei 2017年の第1四半期におけるHuaweiの世界スマートフォン販売台数シェアは9.8%に到達。年間シェアで10%を超えたいとしている

 だが上半期のスマートフォンの出荷台数は、前年同期比20.6%増の7301万台であるのに対し、売上は36.2%増の1054億元と、より大きく伸びている。その理由についてリチャード氏は、「より価格が高いハイエンドモデルの比率が高まっているため」と説明する。

 そのことを示す数値として、リチャード氏はフラグシップモデルの販売台数を挙げた。「HUAWEI Mate 9」と「HUAWEI Mate 9 Pro」(日本未発売)は850万台以上、「HUAWEI P10/P10 Plus」は600万台以上、「HUAWEI nova 2/nova 2 Plus」(日本未発売)は1カ月で100万台以上の販売台数を誇り、500ドルを超えるカテゴリーの製品比率は5.8%から14%に向上したとのこと。高価格帯のモデルの販売好調が、Huaweiの業績の伸びを支えているようだ。

Huawei 「Mate 9」シリーズは850万台、P10/P10 Plusは600万台を記録するなど、フラグシップモデルの販売好調が業績の伸びに大きく貢献している

 地域別の動向を見ると、同社が力を入れている地域の1つである欧州では、ハイエンドモデルの販売増によって前年度比18%の伸びを示しているとのこと。またアジア圏での伸びも著しく、お膝元の中国では24%の成長を誇るほか、東南アジアや中東では50%以上、日本と韓国でも47%の成長を実現しているそうだ。

 では今後、Huaweiはどのような取り組みで成長を進めていこうとしているのだろうか。リチャード氏はその鍵として人工知能(AI)を挙げている。「2025年頃までには90%のスマートデバイスにAIが搭載され、デバイス自体が考え、話ができるようになるなど新たな段階に入っていく」とリチャード氏は話しており、AIが本格的に台頭する時代に備え、Huaweiではスマートデバイスに搭載する、AI用の強力なチップセットを独自に開発していくことを明らかにした。

 さらにHuaweiでは、デバイス、そしてクラウドも直接手掛けることにより「Googleが独自のソリューションで実施していることを、Huaweiが独自でやっていくことを考えている」(リチャード氏)など、AI時代の技術開発で主導権を取っていく考えを示した。

Huawei AIが大きく広がる今後に向け、スマートデバイスに搭載する独自のAI用チップセットを開発することも明らかにされた

2018年の「P」に期待、日本市場への熱い思いも

 業績発表会の後、リチャード氏が各国の記者の質問にビデオ会議で答える場も設けられ、日本の記者から寄せられたいくつかの質問にも回答した。

Huawei 各国の記者からのインタビューに答えるリチャード氏

 市場規模が小さい日本での事業に、Huaweiが積極的に取り組む理由について聞かれたリチャード氏は、「日本は新しいテクノロジーが多く存在し、Huaweiでも日本製の部品をたくさん使っている。ハイエンドマーケットの中でもリーダー的な存在と考えており、日本市場はEUに並んでプライオリティが高い国だ」と回答。カメラセンサーやディスプレイパネルなど、スマートフォン用に多くの部品を調達している日本市場に力を入れることが重要な意味を持つとし、長期的に取り組む構えを見せている。

 一方で、日本市場は携帯電話端末のビジネスもキャリアが主体であり、メーカーではAppleが非常に強いなど、他の国にはない独自の特徴も持ち合わせている。こうした状況下でシェアを拡大する上で、鍵となるのは「テクノロジーだ」とリチャード氏は回答。「HUAWEI P9」で実現したデュアルカメラ機構など、他社に先駆けて新しい技術を取り入れることで、勝ち抜く構えを見せた。

 さらに日本市場に合わせた対応として、「日本では防水が重要だと思っている」「FeliCaの対応も考えていく」などと回答。事業としての効率性を上げながらも、日本市場に合わせた対応を検討していく考えを示した。

 また「日本の多くの人が地下鉄などでスマートフォンを利用していることから、大画面ながらも片手操作ができるコンパクトさは重要」とリチャード氏は話し、「来年(2018年)のPシリーズのスマートフォンを待っていてほしい」と、Pシリーズの次期モデルでより日本市場に適合したモデルを投入することをうかがわせたほか、キャリアとの連携を強化していく考えも示した。

 一方で、現在「楽天モバイル」が独占販売している「honor」シリーズに関しては、「日本で力を入れているのはハイエンドモデル。honorは補完的に出している」と回答。あくまでハイエンドモデルの販売に力を注ぐ方針のようだ。

 最後にリチャード氏は、「私は入社以降常に、真面目で勤勉で、品質にこだわる『日本とドイツから学べ』と教わってきた。日本には敬意を払っている」「Huaweiの製品は日本の部品を多く使っている。『メイドイン日本』だ」と話すなど、日本に対する熱い思いを語っていた。

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