Netbookより「山寨機」に席巻されそうな2008年の中華IT山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2008年12月25日 15時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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中国の独自開発規格がついに世界標準になるか?

 中国で開催された北京五輪を期に、世界の主要国と肩を並べるために、多種多様な中国独自開発の新規格を導入しようとした。例えば、中国独自の第三世代携帯電話規格こと「TD-SCDMA」は、五輪開催前に本運用が始まり、TD-SCDMAに対応した端末も携帯電話メーカー各社から数台同時にリリースされた。

 しかし、開始当初こそマスコミもネットの掲示板にも「中国を支持!TD-SCDMAを支持!」といった勢いがあったものの、将来サービスが開始されるだろうW-CDMAが控えていることもあってか、ほどなくTD-SCDMAは注目されなくなった。

TD-SCDMAは2009年ももつのか?(写真=左) その一方で、2008年に大ブレークした山寨機携帯電話(写真=右)。山寨機は携帯電話に限らずノートPCなど広いカテゴリーに進出して、中国国産メーカーの製品を駆逐する勢いになりつつある

 一方、TD-SCDMAとともに、本来ならば北京五輪前に解禁されていたはずのW-CDMAは現在一部の都市で商用テストを実施している段階だ。「中国独自のTD-SCDMA」と比べて「世界標準のW-CDMA」への期待は大きい。その理由の1つに「中国メーカーと韓国メーカーからしか端末が出ないTD-SCDMAに比べ、世界各国の最新端末が使えるW-CDMAは魅力」が挙げられる。現に、世界でも使える(GSMが使える)一部の日本製携帯電話は中国のIT事情通にはとても評価が高く、中国にも多数の機種が“転売”されて入ってきている。中国でW-CDMA解禁となれば、中国の消費者にとってNTTドコモやソフトバンクモバイルの端末がより身近な存在となるだろう。2009年は中国ITウォッチャーならずとも、日本市場にも影響を与える可能性がある「W-CDMAサービス中国解禁」に注目だ。

2008年に立ち上がるはずだったあの規格はどうなった

 北京五輪に合わせて登場するはずだった通信規格はW-CDMAだけでなく、「CDMA2000」や「WiMAX」や「WAPI」(これも中国独自無線LANセキュリティ規格)などが予定されていた。しかしサービス開始の目処はいまだに立っていない。そのほかに2008年の運用開始を目指していたサービスや製品の現状をいくつか紹介しておこう。

 中国のネット検閲システムこと「サイバー万里の長城」(またはグレートファイアウォール、金盾)も2008年の完成を目指している。現時点で完成しているのか否かは開発現場のみぞ知るところではあるが、少なくとも筆者が中国でネットを利用している分には、依然として抜け道が存在することに変わりはない。当局が完成したと宣言しても「?」と首をかしげてしまう状況だ。

 製品関連では、中国版HD DVD、またの名を「中国ブルーレイ」とも呼ばれる「CBHD」(旧名CH DVD)が2008年の年末に登場すると言われていたが、製品はいまだ市場に投入されていない。それどころか、「中国レッドレイ」ことEVD陣営が「自分たちの技術を盗んだ」とCBHD陣営に宣戦布告をする始末だ。EVD陣営は、この時期に「ブルーレイ陣営は2009年には崩壊するだろう。しかしEVDにはチャンスがある」と、えらく景気のいい予測まで行っている。同じような“ビックマウス”では、今や中国唯一のデジカメメーカーとなった「愛国者」(aigo)が、「2008年に中国国産のデジタル一眼レフをリリースする」と宣言していたが、こちらも製品はおろか詳報すらいまだに出ていない。

 日本人感覚から言わせれば「大風呂敷」感が否めない中国発の新規格と新製品だが、その一方で、家電製品同士をネットワークで接続する、DLNAの中国版ともいえる「IGRS」(閃聯)という規格がISO/IESにおいて多数決で可決し、世界に認められた規格となった。しかし、IGRSの開発を主導したレノボから対応製品がリリースされているものの、それ以外のメーカーは積極的に取り組んでいない状態で、金融危機の影響が本格的に押し寄せるであろう2009年以降、IGRS(と対応する新製品)ってどうなっちゃうんだろうね、と業界ではうわさされている。「規格だけ国際的に認めてもらって満足したから、これで終了」とならないことを2008年の最後に願わずにはいられない。

IGRSの概念。ISO/IESで支持されただけあって、一部の日本メーカーでもサポートを表明するなど、期待のかかる新規格だが、機器間接続をサポートする規格なのに、それに対応したデバイスが登場しないので、利用したくても利用できないという状況にある

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