MFC-6490CNの印刷解像度は最大6000×1200dpiで、インクは4色(黒のみ顔料インク)、最小ドロップサイズは1.5ピコリットルである。このスペックから印刷品質に問題点はないだろうと思われたのだが、普通紙にプリンタドライバ「普通」設定でモノクロテキスト印刷を行うと、顔料系インクの割に若干シャープさに欠ける印象だった。
手動でインクを濃い目に調整すると改善されるのを見ると、プリンタドライバのチューニングがうまくいっていないようだ。おそらくブラックインクで印刷できる枚数をできるだけ確保するようにテキストの品質を決めのだろう(大容量カートリッジを利用してA4用紙に700枚程度)。テキスト印刷のクオリティを求める場合、印刷可能な枚数が減ってしまうが「きれい」設定でインクが濃くなるように調整するとよさそうだ。
今回は印刷サンプルとして、ドライバ設定「普通」で印刷したテキストと、ドライバ設定「最高速」で印刷したサンプルを掲載する。なお、スキャンにはMFC-6490CNを利用し、モノクロのスキャンは600dpiで、カラーのスキャンは、ドライバ「きれい」設定が600dpi、それ以外の「普通」と「最高速」は300dpiにしている。ドライバ設定の違いがどれだけ大きいかを確認してもらいたい。
本機はビジネス向けということもあり、カラー印刷に関してそれほど期待する向きは多くないだろうが、普通紙を使った写真出力を見ると、キヤノンやエプソンなどのフォト印刷が得意なインクジェットプリンタと比較すればやはりその差は歴然としている。もっとも、部分部分で粒状感は見られるものの、ビジネスで利用するという条件では、十分な品質が確保されており、大きなマイナスにはならないと思う。ただし、ビジネス系グラフィックス(グラフや表など)の出力に向いたカラーバランスなのか、写真出力では赤味が強い傾向が見られるので、カラーバランスを調整しておきプリンタドライバに用意されている「おまかせ印刷」タブに登録しておくとよいだろう。
ここまでMFC-6490CNを紹介してきたが、前編の冒頭で「2008年で最もインパクトが大きかった」と書いた割には肯定的な表現が少ないと思われるだろう。繰り返すがMFC-6490CNの最大のメリットは「A3対応、低価格」に集約される。A3のPDFやFAXのやり取りをしたり、雑誌の見開きをコピーしたりすることが日常的な人にとって「買っておけば仕事が楽になる」ことは間違いない製品なのである。ただし、これには改善してもらいたい部分も多い。
特に不満に感じたのは、標準では上段トレイでしか「A3→A3のコピー」が行えない点だ。コピーモード時に下段トレイにA3用紙をセットしても、用紙選択でA4に固定されてしまいA3原稿の読み取りはA4の範囲内だけ行われA3用紙にその範囲だけが印刷されて出てくる。また、上段トレイにA3をセットし、下段トレイにA4をセットすると、外観は上段トレイが出っ張っるスタイルになってしまう。加えて、A4横のコピーにも対応していない。A3用紙の半分にコピーされ、残りが真っ白の用紙が吐き出されてくるのだ。さらに付け加えるなら、プリンタドライバのチューニングも必要だろう。
ただし、現状で同価格帯にライバル機と呼べるA3対応FAX付きインクジェット複合機が存在していない以上、その選択肢はMFC-6490CNに限られるのも事実だ。ライバル不在の現在、次期モデルではさらなる作り込みを行い、より不満の少ない製品へと仕上げてもらいたい。そしてこのカテゴリーの製品が増えることによって、将来的には両面印刷や両面スキャン、増設用カセットといった機能も加わってくるはずだ。
総じてMFC-6490CNは、ビジネス向けとは言え、万人が満足できるほどの性能を持っているわけではない。また、MFC-6490CNだけですべてのビジネス用途をまかなうには、かなりの妥協が必要である。それでもなお、「フォト印刷はしないがA3用紙の出力やスキャンが必要で、さらに速度や品質にはこだわらず、なるべく安価なFAX付き複合機がほしい」という筆者のような人間には、まさにうってつけの製品なのだ。
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