日本ヒューレット・パッカードは7月28日、PCレスでインターネットに接続してさまざまなコンテンツの印刷が行えるA4インクジェット複合機「HP Photosmart Wireless B110a」を発表した。8月5日に発売する予定だ。同社直販「HP Directplus」での販売価格は1万2810円。
製品発表会では最初に代表取締役 社長執行役員の小出伸一氏が登壇し、同社の歴史を振り返ったうえで、「ポートフォリオの変更と拡充はすべてユーザーの視点に立ってかじ取りをしており、“Everything as a Service”(あらゆる取り組みがサービスとして提供される世界へ向かっている)という考え方のもと、さまざまな分野でイノベーションにチャレンジしている」と述べた。
新製品のB110aについては「これまでプリンタはPC周辺機器という定義の中で考えられてきたが、新製品は新しいクラウド時代のための進化したプリンタであり、“プリンタの夜明け”といえるもの」と、その先進性をアピールした。
同社執行役員 イメージング・プリンティング事業統括の挽野元氏は、B110aの製品コンセプトや特徴を説明した。同氏はHPのインクジェットプリンタ事業について「1984年に投入した世界初のインクジェットプリンタであるThinkJetをはじめ、1991年に廉価版のカラープリンタ、1994年にオールインワンの複合機、2003年に無線LAN内蔵プリンタを投入するなど、この分野における技術革新をリードしてきた」と説明し、「2009年にはテストマーケティングとしてWebに接続できるプリンタを米国にて販売したが、今年(2010年)はプリンタそのものがネットデバイスになる“世界初の次世代ネットプリンタ”を発売する」と続けた。
ここでいう次世代ネットプリンタとは「プリンタドライバがないスマートフォンなどのデバイスからプリントできるほか、プリンタ自体がネットにつながってプリントできる製品」とのこと。具体的には「メールdeプリント」と「アプリdeプリント」の2つの機能でこれらを実現している。
メールdeプリントとは、プリンタ1台ごとに固有のメールアドレスを持たせることで、そのアドレスにメールを送信することにより、メール本文(テキスト、HTML、リッチテキスト)や添付ファイル(TXT、PDF、Microsoft Word/Excel/PowerPoint)をダイレクトプリントできるという機能。添付できるファイル数は10個まで、添付ファイルを含めたメールサイズは合計5Mバイトまでとされている。今秋にはJPEG画像の印刷もサポートするという。
プリンタ自体でメールを受信して印刷まで行えるため、PCはもちろん、スマートフォンやPDAといったプリンタドライバがない携帯機器などからのダイレクトプリントにも対応できるのが特徴だ。挽野氏は「スマートフォンの画面サイズは小さいため、紙に情報を印刷したほうがいいシーンは少なくない。紙は究極のモバイルデバイスなので、あらゆるデバイスから紙へ手軽にプリントできることには大きな意味がある」と力説する。
アプリdeプリントとは、プリンタ内蔵の液晶パネルをタッチ操作することで、専用アプリから対応Webサイトにアクセスし、必要な情報をダイレクトプリントできる機能だ。現状では、けい線やカレンダーなどのフォーム、数独パズル、キャラクターの塗り絵が出力できる「ディスニー」、ペーパークラフトなどが楽しめる「ドリームワークス」、登録した地点の天気予報が分かる「Weathernews」といった専用アプリを用意している。
日本独自の展開としては、ぐるなびとの提携により、レストランを検索して割引クーポンや店舗の地図が印刷できるアプリや、クレオとの提携により、豊富なデザインテンプレートから年賀状や季節のあいさつ状などを印刷可能なアプリを今秋の提供に向けて準備中という。このほか、リクルートなどとの提携により、日本独自のコンテンツを順次拡充していく方針だ。
挽野氏は「今後リリースする日本HPのインクジェットプリンタ新製品はすべて、メールdeプリントとアプリdeプリントの機能を搭載していく。時代のニーズに合致したクラウド・プリンティングを実現するネットプリンタの認知度拡大を図り、市場を盛り上げていきたい」と、新ジャンルのプリンタにかける意気込みを語った。
日本HPが今回発表したHP Photosmart Wireless B110aはエントリークラスの複合機だが、2010年秋以降は上位クラスの機種も複数投入する予定だ。
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