レビュー
» 2011年10月12日 13時01分 公開

イマドキのイタモノ:Bulldozerは気難しい──AMDの新CPUアーキテクチャ“Zambezi”を試す (3/3)

[石川ひさよし,ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

性能は横並びながら、興味深い機能も実装

 FX-8150はPCMark 05が苦手のようだ。FX-8150のスコアは11759で、13000台のスコアを出すほかのCPUと比べ大きく下回っている。各テストのスコアを確認すると、DDR3-1866対DDR3-1333となるMemoryはFX-8150が1100Tを上回る(ただし2600Kには及ばない)。となると、スコアを下げている要因はCPUとGraphicsにあるようだ。

 CPUテストの詳細を見ていくと、対1100Tで上回っているのはFile Decompression、Audio Decompressionのシングルスレッド/マルチスレッドのみで、あとはすべて劣っている。Decompression系でも、Image Decompressionでは1100Tが47に対しFX-8150は36と、とくに分が悪い結果だ。なお、File Encryptionのような暗号化に関するテストでは、PCMark 05がAESに対応していないこともあって、FX-8150には分が悪い結果となっている。

 次にマルチスレッドへの対応が進んだPCMark 7では、FX-8150が1100Tを上回っている。ただし、個別テストで上回ったのは、creativity、computation、system storageの3つであり、lightweight、productivity、entertainmentでは、わずかながら下回っている点に注意したい。また、2600Kは3000台のスコアを出しているなか、2つのAMD CPUは2500台であり、対ライバルという点ではなかなか難しい評価だ。

 Sandraでは、演算性能やメモリ周りを詳しく見ていこう。CPU ArithmeticのDhrystoneでは、FX-8150は2600Kと1100Tの中間というスコアだ。また、WhetstoneやCPU Multimediaでも1100Tを上回りアーキテクチャが変更されたことを大きく印象づける結果となった。一方で.NET Arithmeticは1100Tに及ばず、.NET MultimediaではMulti-Media-Int/Floatで上回るが、Doubleではやや劣った。Cryptgraphyは、SandraがAESに対応していることで大きくスコアを伸ばし、AES256に関しては2600Kをも上回っている。一方でSHA256は1100Tや2600Kの約半分となった。

 SandraのCache and Memoryでは、キャッシュ構造が大きく変わったことから独特のグラフとなっている。1KBから64KBまでは1100Tとそこまで大きくは変わらないが、2次キャッシュメモリの領域となる128KBから512KBまでは1100Tに劣り、3次キャッシュメモリの領域となる1MBから16MBは上回る。そしてメインメモリの領域となる64MB以降はFX-8150が上回る。なお、メインメモリ性能となるMemory BandwidthはおよそFX-8150が19GB/sで、1100Tが12GB/sと、大きく帯域を伸ばしている。

 CINEBENCH R11.5は、Multi-CPUが対1100Tで微増、Single-CPUが微減となった。6コアから8コアに増えているのに微増にとどまるほか、より高クロックになったのにSingle-CPUで微減という結果だ。ただし、OpenGLに関しては向上している。

 トランスコードテストは、Media Espressoを用いている。その結果は1100Tに対しては大幅な向上が見られ、2600Kに迫る。ただし、これは、Core i7のQuick Sync Videoを無効としたCPU演算のみでの結果である。ソフトウェアフィルタを多用するような用途ではこの点で評価できるだろう。なお、CINEBENCH R10の結果からすると、演算性能というよりは拡張命令の対応強化がこの速度を実現した要因と捉えることが出来る。

 3Dグラフィックス性能は、3DMark 11と、Crysis 2、Lost Planet 2という2つのDirectX 11対応ゲームタイトルで行った。3DMark 11の結果は、Overallでは1100Tに及ばないが、CPUが関与するPhysicsスコアでは1100Tを大きく上回っている。Crysis 2とLost Planet 2は、どちらもそこまで変わらない傾向にあり、対1100Tでは向上が見られるものの、2600Kには及ばない。

 消費電力でのポイントは、FX-8150のアイドル時の消費電力が1100Tと比べ大きく引き下げられた点だ。高負荷時のテストとしてCINEBENCH R10を用い、シングルスレッドと各CPUの最大スレッドを計測したが、シングルスレッドの消費電力は対1100Tで同等、一方で最大スレッドではシステム全体で200ワット超という、TDPが125ワットのCPUを組み込んだとは思えない消費電力値が出ている。アイドル時は低くても、高負荷をかけた状態では1100Tをも上回ることに十分注意するべきだろう。

水冷ユニット同梱で実売3万円台前半。発売日は10月下旬に延期

 BulldozerとZambeziに対する期待の高さからすれば、FX-8150のベンチマークテスト結果は、その期待に応えるほどのスコアは出せていない。Phenom II X6 1100Tに対しては、FXシリーズの登場が遅かったためにリリースされた高クロック版というポジションから、仕方のない印象もある。一方でCore i7-2600Kの場合、そもそもBulldozerのスケジュールが遅れに遅れまくったために、その間、IntelのCPUが進化し、Bulldozerが当初想定していたパフォーマンスレンジより上の製品を相手にしなければならない結果に陥ったとも考えられる。とはいえ、Core i7-2600Kに負け一方ではなく部分部分で迫り、抜いたテストもあるという点は評価したい。また、ベンチマークテストをしていて気づいたのだが、Phenom II X6 1100Tと比べデスクトップがキビキビ動きその感覚はCore i7-2600Kにより近いと感じた。スコアとして表れない部分で性能向上を体感できる可能性はある。

 実売想定価格は、FX-8120が1万8800円程度、FX-4100に関しては9980円程度と、リーズナブルな価格帯に収まりそうだ。(掲載当初、実売想定価格に誤りがありました。おわびして訂正いたします) ただし、FX-8150は水冷ユニットが同梱されるため、3万3800円程度と、悩ましい価格となっている。高性能な水冷ユニットでガンガン回して欲しいというのがAMDの想いなのかもしれないが、すべてのPCケースが12センチ角ラジエータを搭載できるわけでもない。AMD 9シリーズマザーにはMini-ITXも存在するわけである。こうしたあたり融通が効くといいのだが、そうもいっていられない話がでてきた。

 AMDは当初、FXシリーズの出荷開始を10月16日と設定し、同日に秋葉原でのイベントを企画していたが、その出荷開始を10月下旬以降に変更した。およそ半月の遅れであるから、ここにきてハードウェアの問題ということではなさそうだが、そうなれば予想されるのがBIOSなどの問題や、出荷数を確保できないという製造面の問題が原因になるだろうか。特にFXシリーズではアーキテクチャの変更と32ナノメートルプロセスルールの導入を同時に行なっており、歩留まりには不安がある。そしてFX-8150の出荷数が少ないことから、単品リリースをではなく水冷ユニットというプレミアを付けるとなれば、ストーリー的に納得がいく。

 AMDはBulldozerにFusion APUと、画期的なアーキテクチャを提案しながらもスケジュール通りにリリースできないことで苦戦を強いられている。ただ、自作PCの視点で見れば、Bulldozer、そして、Zambeziの興味は尽きない。FXシリーズはUnlockedとされており、オーバークロックという楽しみができるほか、イベントで8GHz超を記録したという(液体ヘリウムはなかなか個人レベルでは難しそうだが……)。まだまだ、潜在能力が引き出せそうな期待がFXシリーズを手にする楽しみともいえるだろうか。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia PC USER に「いいね!」しよう