自作PCユーザーが使える“デスクトップ版Llano”はどこまで遊べる?イマドキのイタモノ(1/3 ページ)

» 2011年06月30日 14時00分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

“PC DIY”向けのLlanoが最後にやってきた

 すでにノートPC向けのLlanoこと“Sabine”プラットフォームをレビュー記事で紹介しているが、ようやく、デスクトップPC向けのプラットフォーム“Lynx”が登場した。自作PCユーザーにしてみれば、だいぶ待たされたAMDのFusion APUだが、はたしてどれだけ使えてどれだけ遊べるのか。評価機材で確かめてみた。

 デスクトップPC版のLlanoは、ノートPC版と同様に、A8、A6、A4、E2の4シリーズで展開する。今回試すのは最上位モデルの「A8-3850」だ。クアッドコアでCPUの動作クロックは2.9GHzになる。Turbo CORE Technologyに対応しないため、動作クロックはこの1パターンになる。

 統合するグラフィックスコアは「Radeon HD 6550D」と呼ばれ、内蔵するRadeonコアの数は400基、コアクロックが600MHzという仕様だ。なお、デスクトップPC向けLlanoだけに用意された機能として、DDR3 1866対応が挙げられる。ただし、“公式見解”によると1チャネルにつき1枚のモジュールでのサポートという制限がある。DDR3 1600以下では通常どおり1チャネルにつき2枚までメモリを実装できる。

左がLlanoで右がPhenom II。パッケージサイズはどちらもほぼ同じだ(写真=左)。ソケット側はピン配列がまったく異なる(写真=右)

 チップセットは、すでに発表されたA75、またはA55が利用できる。A75とA55の違いは、USB 3.0、Serial ATA 6Gbps、そして、FIB-Based Switching対応の有無だ。APUを搭載するソケットは「FM1」が採用された。現行のPhenom IIで使うAM3やAM3+とは互換性がない。

 今回の評価作業で用いたA75チップセット搭載マザーボードは、ASRockの「A75 Pro4」だ。デバイスマネージャーで確認すると、A75チップセットに統合されたUSB 3.0コントローラが確認できる。

デスクトップ版Llanoの評価用マザーボードとして用意したASRock「A75 Pro4」。メインストリーム向けマザーボードとしてはごく一般的なレイアウトだ(写真=左)。A75 Pro4に載っていたA75チップセットは、刻印のAMDの下に「FCH」と、最下段には「218-0755044」と記載されている(写真=右)

 A75 Pro4は、4基のUSB 3.0をバックパネルに配置する。そのほか、バックパネルには映像出力インタフェースとしてDVI、HDMI、アナログRGBの3系統を用意する。拡張スロットは、PCI Express x16スロットを2基用意しているが、これは16レーンと4レーンの組み合わせで固定されている。Serial ATAはすべてのコネクタで6Gbpsに対応しており、基板に5基を載せるほか、バックパネルに1基のeSATA 6Gbpsを用意する。

3系統のディスプレイ出力端子を持つA75 Pro4のバックパネルと(写真=左)Socket FM1。なお、CPUクーラーユニットのリテンション金具はSocket AM3互換とされる(写真=右)

評価用のA75 Pro4で構成したシステムでデバイスマネージャーを開くと、A75チップセットに統合されたAMDのUSB 3.0コントローラが確認できる

Dual Graphicsに対応して“複雑な”独自型番も用意する

 A8-3850に統合されたグラフィックコアのRadeon HD 6550Dは、グラフィックスメモリをメインメモリで共有する。A8シリーズとA6シリーズは「Dual Graphics」にも対応する。Dual Graphicsは、APU内の統合グラフィックスコアと、グラフィックスカードなどで接続する外付けのGPUをCrossFireXで連携する機能だ。

 この機能では、Radeon HD 6550Dに対して、種類の異なるGPUを組み合わせることができる。CrossFireXブリッジも不要だ。AMDではDual Graphicsで組み合わせるGPUとして、Radeon HD 6670、同 6570、同 6450、同 6350を推奨している。統合グラフィックスコアを有効利用して、かつ、低価格のGPUを追加することでグラフィックス性能を向上できるのがDual Graphicsのメリットだ。

 なお、Dual Graphicsを導入したシステムは、APUと組み合わせたGPUによって、別の“型番”が与えられる。例えば、A8、または、A6シリーズとRadeon HD 6670の組み合わせで「Radeon HD 6690D2」、A8シリーズとRadeon HD 6570の組み合わせで「Radeon HD 6630D2」、A6シリーズとRadeon HD 6570の組み合わせで「Radeon HD 6610D2」など、その命名は複雑だ。末尾は、デスクトップPC向けでD2、液晶一体型PC向けでA2となる。

 Dual Graphicsを構築する手順は以下のようになる。

1. BIOSからDual Graphicsを有効にする

2. グラフィックスカードを装着し、ディスプレイ出力ケーブルを接続する

3. ドライバを適用後に、ユーティリティ「Fusion Control Center」からCrossFireXを有効にする

 なお、ディスプレイ出力ケーブルは、統合グラフィックスコア側(マザーボードの映像出力インタフェース)に接続しても、外付けのGPU側(グラフィックスカードの映像出力インタフェース)に接続しても、CrossFireXを有効化すればDual Graphicsとして機能する。

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