自作PCユーザーが使える“デスクトップ版Llano”はどこまで遊べる?イマドキのイタモノ(3/3 ページ)

» 2011年06月30日 14時00分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]
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軽量級ゲームタイトルなら十分楽しめそうな予感

 3D描画を測定するベンチマークテストでは、3DMark Vantage、3DMark11、The Last Remnant、LOST PLANET 2(DirectX 11対応)、DiRT2(DirectX 11対応)、DiRT3(DirectX 11対応)を用いた。

3DMark Vantage 3DMarks
3DMark Vantage Graphics

3DMark11 3DMarks
3DMark11 Graphics

3DMark11 Physics
3DMark11 Combines

Lost Planet 2
Last Remnant

DiRT2
DiRT3

 3DMark Vantageで統合グラフィックスコアを比較すると、A8-3850に統合されたRadeon HD 6550Dのパフォーマンスが突出する。AMD 880Gに統合されたRadeon HD 4250はもとより、Core i5-2500Kに統合されたIntel HD 3000に対しても、テストによっては3倍近い差を付けている。個別テストのCPU TestはPhenom IIやCore i5に対して劣っているが、3DMark VantageにおけるCPU Testの比重からスコアを左右するには至っていない。

 Radeon HD 6670と組み合わせたDual Graphicsの結果とほかのシステムで外付けGPUを利用した場合の結果を比較すると、A8-3850とRadeon HD 6670の組み合わせはトップになる。しかしCrossFireXの効果はさほど大きくはなく、ほかの結果をわずかに上回る程度となっている。

 3DMark11はDirectX 11に対応する環境のみの比較となるが、こちらはDual Graphicsの効果がよりはっきりと確認できる。The Last Remnantは統合グラフィックスコアの比較でほかの環境の2倍近いスコアが出ており、A8-3850の統合グラフィックスコアにおける性能の高さが確認できる。1280×768ドットでは30fpsを超える結果も出ており、軽量級のゲームや画像設定を抑えた状態で楽しむ場合は十分な性能といえるだろう。一方で、Radeon HD 6670搭載時は、Dual Graphicsが最も低いスコアとなった。CrossFireXもそうだが、最適化がグローバルタイトル優先で、ローカルタイトルはほとんど期待できない、というドライバのサポート事情が影響しているといえるだろう。

 DiRT2とDiRT3の結果では、統合グラフィックスコアでは1280×768ドットでも30fps超えはできなくなる。一方で、Radeon HD 6670を追加した場合の挙動はDiRT2とDiRT3で分かれる。DiRT2はCrossFireXの効果がなく、単体のRadeon HD 6670に及ばず、一方、DiRT3では効果を発揮してトップスコアを出している。DiRT3ではMinimum FPSのマージンを見ても46fpsを記録しており、最少のコストでゲームが快適に楽しめるという可能性を示しているといえそうだ。

TDP100ワットに“ふさわしい”消費電力

システムの消費電力

 今回用いたA8-3850はTDPが100ワットとなる。一方、Phenom II X4 980 Black Editionは125ワット、Core i5-2500Kは95ワットだ。消費電力の評価では、15分間放置したなかでの最小値、3DMark VantageのGT1を実行した中での最大値、そして、CINEBENCH R11.5のMulti CPUを実行した中での最大値を計測した。

 統合グラフィックス環境で最も優れているのは3つの計測すべてで最小値だったCore i5-2500Kだ。A8-3850はアイドル時でPhenom II X4 980BEを若干上回り、3DMarkで若干下回り、CINEBENCHでは大きく下回るという結果となった。アイドル時でA8-3850の消費電力が比較的高かったのは意外だった。3DMark時の消費電力に関しては、Phenom II+AMD 880Gとの比較においてパフォーマンスの違いも考慮すれば妥当な結果だろう。

3D描画処理を使って意味が出るLlano

 デスクトップPC版のLlanoで性能を検証してきたが、CPUのパフォーマンスは突出しないものの、3D描画のパフォーマンスに関してはその優位性が改めて確認できた。「ゲームが楽しめる」というキーワードは、新しい統合グラフィックスコアが登場するたびに訴求されるが、ゲームタイトルで実用的な性能を出すものはこれまでになかった。Llanoの登場で“ゲームが楽しめる”というキーワードがようやく本当になりそうだ。とはいえ、フルHDはさすがに無理で、いわゆるメインストリーム層が遊ぶゲームタイトルに関してサポートできるようになるという程度だ。

 Dual Graphicsに関しては、ローコストで性能を向上できることが確認できた。ただ、CrossFireXを利用する技術なのでドライバやアプリケーション側の最適化が必要となる。一方で、3D描画性能はCPUも影響するため、例えば、LlanoにRadeon HD 6970を組み合わせるより、Phenom IIと組み合わせたほうがいいスコアになる。高性能GPUをLlano組み合わせるというのはあまり有効ではないため、Dual Graphicsに組み合わせるのは、AMDがいうように、Radeon HD 6670からRadeon HD 6350というクラスが妥当とも考えられる。いずれにせよ後から追加するアップグレードパスとして評価できるだろう。

 なお、COMPUTEX TAIPEI 2011でマザーボードベンダーに聞いたところでは、各社ともチップセットのコストを気にしていた。A75のOEM向け価格は比較的高く、低価格PCを求めるユーザー向けのシステムで採用するの難しいという。A75チップセットを搭載したマザーボードの実売価格は1万円前後が主流で、平均価格で言えばIntel H67 ExpressやIntel H61 Express搭載マザーボードに対してやや高い印象もある。このあたりの価格もLlanoが自作PC市場で受け入れられるかどうかに影響してくるだろう。

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