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» 2012年03月23日 11時30分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「新しいiPad」で混乱して困惑する人々 (1/2)

誰もが驚いた「新しいiPad」という名前。アップルがこの名称に込めた狙いとは? そして、最も困惑しているのは、ユーザーではなく意外な彼らだったりするという。

[牧ノブユキ,ITmedia]

ブランドネームでもありペットネームでもある「iPad」

 先日発表された“新しいiPad”のネーミングが「iPad 3」でもなく「iPad HD」でもなく、そのまんま「新しいiPad」(The New iPad)だったことは、多くのユーザーが驚いたことだろう。製品がユーザーに届き始めた今もなお、この名称による混乱というか困惑は続いているように見受けられる。

 一般的に、こうした製品のネーミングには、「ブランドネーム」「ペットネーム」「型番」の3種類がある。iPad2を例にすると、ブランドネームはあくまでも「iPad」であり、ペットネームが「iPad 2」だ。iPadというブランドの中における第2世代の製品ということで、iPad 2という呼び名が用意されている。

 しかし、iPad 2に限らず、こうしたガジェットや周辺機器は色違いや容量違いなどのバリエーションが多く、製品の仕様とペットネームが1対1で対応するのは少ない。その識別のために用意するのが型番だ。「iPad2 Wi-Fi 16GB 黒」「iPad2 Wi-Fi+3G 64GB 白」などがそれに当たるが、これらは必ずしもメーカー公認の型番でない場合がある。「iPad2 Wi-Fi 16GB 黒」と呼ばれる製品は、正式には「MC769J/A」、「iPad2 Wi-Fi+3G 64GB 白」と呼ばれる製品は「MC984J/A」というのが、Apple公認の型番になる。

 じゃあ、最初から公認型番で呼べばいいじゃん、という指摘もありそうだが、さすがに分かりにくくてユーザーに覚えてもらえない。「えっ、お前MC769J/A買ったの? それメモリ足りなくね?」といった会話はよほどのマニアでも理解不能だろうし、まったく直感的ではないのは明らかだ。そんなわけで、ブランドネームとペットネームに加え、TPOに合わせて使い分ける2種類の型番が1つの製品に存在していたのが、これまでのiPadだった。

「iPad」への統一でブランディングを強化

 そうやって考えると、ペットネームとブランドネームを「iPad」に統一してブランディングを強化し、あわせて呼び名を整理しようという意図は、分からなくもない。一般的に、「iPad」は成功した製品として認知されており、ペットネームもそれに統一することでiPadというブランドネームが持っていたプラス評価のトラフィックを新製品に誘導できるという意味では、間違いなく販促面でプラスになるからだ。ブランドを指して「iPad」と呼んだつもりが、初代のペットネームだと誤解されてしまうリスクも、これで回避できる。

 それなら従来のiPad 2も数字を付けずに「iPad」でよかったのではないか、というのは鋭い指摘であり、このあたりに、Appleの方向性におけるブレも感じる。なにより、発売以来の「個体としての初代iPadとどう区別するのか」「新しいiPadが古くなったら呼び名はどうするのか」といったユーザーサイドからの疑問に対する回答にはなっていない。次の第4世代iPadの発売時に、もめることになるのは確実だろう。

 それでも、多少の混乱は覚悟の上で、将来的にますますややこしくなる前に先手を打ったと考えれば、今回の命名は理解できる。もちろん、これが受け入れられて定着するかは、また別の問題だ。うわさされている“小型のiPad”との関連もあるのかもしれないが、現状ではまだ分からない。

 余談だが、新しいiPadのペットネームに対する事前予想の1つに「iPad HD」というものがあった。確かにHDクオリティであることを訴求する効果があるだろうが、それは、“HDでないiPad”もあって初めて成立するわけで、将来的なことを考えると実現の可能性は極めて低かったといえる。少なくとも最近のAppleは、あまりそうした場当たり的なペットネームをつけないように思える。

型番は「大分類>中分類>小分類」が原則

 iPadは、かなり複雑な経緯と意図に基づいた名称を持つ製品といえる。対して、PC周辺機器やアクセサリなどでは、せいぜい「ブランドネームを兼ねたペットネーム」と「型番」の2種類だけ、もしくは、型番だけというパターンが多い。製品点数があまりにも多くてペットネームなどを個別につけていられないというのが主な理由だ。ブランディングの必要性がまったくない消耗品レベルになると、なおさらだ。

 その型番のフォーマットはというと「AAA-001」といった具合に、ハイフンでつないだ前半が製品カテゴリ、後半が連番という構成が多い。単純な連番のほかにも、容量やサイズを表す数字が入ったり、「BK」「WH」といったカラーバリエーションを表す記号が末尾に付与されたりすることもある。PC周辺機器業界では基本的にアルファベットを用いるのが常だが、文具業界だと平仮名や片仮名を使う例もある。

 こうしたルールは、業界統一のフォーマットがあるわけではないが、多くのメーカーは慣習的な“業界命名規則”に準拠する。複数メーカーの製品が量販店の在庫リストに並んだ場合、あまりにも特殊な命名ルールがあったりすると、売る側も混乱するからだ。

 「AAA-001」という製品が生産終了で出荷が終わるのと同時に「AAA-002」という新製品が登場すれば誰もが後継製品と分かるが、これが「AAB-001」だったりすると、後継なのか別の属性を持った製品なのか判断が難しい。型番の前から順に大分類>中分類>小分類の順になるよう命名するというのが、一般的なルールといっていい。

 ただ、このあたりは企画担当者の“好み”がなにかと作用してくる。まったく新しいカテゴリを育てるつもりで期待を込めて「***-001」といった型番をつけたはいいものの、「***-002」すら出ずに失敗してしまったり、中途半端な数字をつけたところ偶然にスマッシュヒットを飛ばして第2世代以降の製品で型番を付け直すことになったりと、そうした話はよくある。ソニーが投入したノートPCのVAIO「505」のように、ブランドネーム化した型番が、縁起担ぎのようにつけられる場合もあったりする。

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