2012年下半期のアキバを振り返ると、「クレバリー閉店」ほどのインパクトのある出来事はなかった。ただし、12月末にパソコン工房秋葉原本店が閉店を発表。パソコン工房のスタッフは「詳細は私も分かりませんが、賃貸契約が切れるタイミングで閉じることになったようです」と話していた。同居しているフェイス秋葉原本店も一時閉店し、時期は未定ながら新たなテナントで再スタートを目指すことになる。
両店の閉店は1月6日で、年末年始セールと合同の閉店セールが現在も行われている。周辺のショップからは残念がるコメントがたくさん聞かれたが、「ユニットコム系列としてはツートップもFreeTもあるので、運営企業が撤退するような閉店よりは悲観しないで済みます」といった声もあり、淡々と事実を受け止める空気が漂っている。
しかし、パーツ通りから少し離れた位置にある主要店舗が閉じることで、大きな動線が1本切れる事実は変わりない。
2007年、秋葉原に関わる人々に街の将来を語ってもらうインタビュー記事「5年後の秋葉原を歩く」を連載した。当事者や研究者が5年前に語った2012年のアキバ像は、「観光地としての地位を高めている」「自作PCに変わる顔が生まれている/生まれていない」「オフィス街になっているかもしれない」などさまざま。
そのなかには「アキバは圧縮し、さらに密度を上げていく」という予想もあった電気街・秋葉原としてのエリアは狭まるが、その分内側が濃くなっていくというわけだ。実際にパーツショップは数を減らしながら、各店が近づく傾向がある。パソコン工房秋葉原本店の閉店がこの流れを加速させるかもしれない。
ただ、多くの予想のうち「オフィス街になっているかもしれない」という懸念は不要だった。商業の街のとしての力は5年前と遜色ない。フェイスの復活店舗を含めた新たな店舗が、自作街としてのアキバの密度を濃くする未来像も現実的ではないだろうか。2013年も街の空気をリポートしていきたい。
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