ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は2月21日、米ニューヨークのマンハッタンで、新型ゲーム機「プレイステーション 4」(PS4)を発表した。
発表会は2時間に渡って行われたが、CPU、GPU、メモリの帯域や容量といった基本スペック、コントローラーの「DUALSHOCK4」、HD品位(1280×800画素)のステレオカメラを搭載するオプション機器の「PlayStation 4 Eye」などが明らかになったものの、製品としてのPS4は発表されなかった。
プレイステーション 4の概要 | |
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メインプロセッサ | AMD製シングルチップカスタム品(CPUとGPUを統合) |
CPU | x86-64アーキテクチャ/8コア(開発コード名:Jaguar) |
GPU | 1.84TFLOPS/18演算ユニット構成(次世代Radeonベース) |
メモリ | GDDR5 8Gバイト(帯域:毎秒176Gバイト) |
光学ドライブ(読み出し専用) | Blu-ray Disc 6倍速(CAV)、DVD 8倍速(CAV) |
通信機能 | 有線LAN(1000BASE-T)、無線LAN(IEEE802.11b/g/n)、Bluetooth 2.1+EDR |
AV出力 | HDMI出力、アナログAV出力、光デジタル出力 |
PS4向けにゲームの開発を表明しているのは、日本国内45社、アジア地区4社、北米47社、欧州30社の合計126社だ。この中には、かつてマイクロソフトのゲームスタジオに所属したBungie(世界的なヒット作「Halo」シリーズの開発元。マイクロソフトの元を離れた後は、「Xbox 360」と「プレイステーション 3」(PS3)の両方に同じゲームを提供すると発表していた)や、これまでPC用ゲームしか開発していなかったBlizzard Entertainment(「ディアブロ」や「ウォークラフト」の開発元)が含まれる。
発表会の大半は自社ファーストパーティ(SCE World Wide Studio)および、主要サードパーティによるPS4向けタイトルの開発表明、あるいは物理シミュレーションやグラフィックスエンジンなどミドルウェアのデモに割かれた。
次いでゲーム開発の容易さを説き、プレイ動画の共有や異なるゲーム間で共通に呼び出せるコミュニケーション機能を紹介。PlayStation Networkを通じたゲーム仲間とのつながりと、Facebookの間をつなぐことで、リアルのゲーム友だちとネットワークを通じたゲームの世界をつなぎ合わせる試み、あるいはネットワーク経由で他のゲーム機を操作するリモートプレイを活用したソーシャル機能などのアイデアを披露した。
一方で製品のデザイン、価格、基本ソフトが持つ詳細な機能などは発表されず、発売時期も2013年の年末としかアナウンスされていない。なぜなら、「PS4の発表会」と目されていた今回の発表会は、正確には「ゲームプラットフォームとしてのPS4がどんなものか」を披露する場として設定されていたからだ。このため、PS4にどんなAV機能が搭載されるのか、インターネット・セットトップボックスとしての応用についてなど、ゲーム開発基盤とは関係しない部分に関して、ほとんど語られていない。
またPS3との下方互換性がないことを発表したうえで、クラウドゲーミング技術を持つGaikaiのサーバを通じてPS3のソフトをネットワークストリーミングで提供する(すなわちCellを使ったサーバでクラウドを構成し、その上で従来のソフトを動かす)と発表したが、こちらもすでに所有しているPS3用ゲームソフトを、どのように扱うか決まっていない。
詳細については、発表会直後のリポート「プレイステーション 4で巻き返しを図るソニーが示した二つの注目点」(Yahoo! ニュースへの外部リンク)にまとめているので、そちらを参照いただきたい。
さて、このように“プラットフォームの発表”で、ハードウェア性能については控え目な位置付けとなったのはなぜか。それは、SCEは新しい高性能かつ高機能なハードウェアを発売するだけでは、家庭用ゲーム機産業を発展させることができないと自覚しているからだ。
SCE社長兼グループCEOのアンドリュー・ハウス氏は「ゲーム市場の成長は鈍ったが、縮小しているとは言えない。日本では縮小傾向が見られるものの、ワールドワイド全体のコンピュータゲーム市場は成長している」と話した。
一方で、新しいゲーム体験を創造しなければ、これから先は生き残れないともいう。そのための戦略が、ゲームクリエイターが思い描く世界を表現できる、柔軟で開発しやすく、遊びを拡大する道具(ソーシャル機能など)を用意した新しいプラットフォーム(=PS4)ということだ。
「PS4で大きく力を入れているのが、大手のゲームパブリッシャーから支援を受けていない、独立系のゲーム制作会社にヒット作を世に出すチャンスを与えることだ」とハウス氏は話した。世の中、超大作の映画ばかりではなく、気の利いたサスペンスやドラマで見いだされる映画監督もいる。また、新人監督がチャンスを得るための登竜門として、確立された映画祭などが毎年定期的に催されている。
小規模のデベロッパーが、手軽にゲームタイトルを世界中に流通させる。これはPS1のときに多く見られたことだった。参入障壁の低さから、新たなスターが生まれる土壌ができあがり、高い創造性を発揮したゲームコンテンツが並ぶ。
そしてPS2の時代になり、PS1よりも参入障壁が高くなったものの、PS1で力を発揮したゲームクリエイターたちが、新たに得たPS2の表現力に夢中になって、新しいゲーム世界を創り出した。
ところが、今では新たな血が入り込む余地がなくなっている。ハウス氏はこうしたことが「多くのPS3用ゲームは、大手ゲーム会社が巨額の予算を組み、100人、200人といった規模のチームを編成してタイトルを開発している。こうした構造では、どうしてもマニアックな方向に先鋭化するうえ、斬新で挑戦的なアイデアの入り込む余地が少ない」という現状を招いていると分析した。
今後はデジタル配信で手軽に無料+アプリ内課金など、柔軟性の高いビジネスモデルの提供で新たなクリエイターの登場を促していく。また、PlayStation Plusを通じて無名クリエイターのゲームが、ゲームファンたちの目にとまるようにするなどの工夫も考えているようだ。これらは現在も行っているが、PS4の機能と組み合わせ、さらに改善していくという。
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