筆圧1024段階で5万円台のWindows 8タブレット――「Latitude 10」は漫画家を満足させられるか?知られざる“お絵描き”性能に迫る(3/3 ページ)

» 2013年03月21日 15時00分 公開
[山田胡瓜(撮影:矢野渉),ITmedia]
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1024段階の筆圧レベルで強弱のある表現が可能

 本レビューではデジタイザスタイラスとして、Latitude 10向けに用意されたワコム・アクティブスタイラスペンを利用した。同製品は1024段階の筆圧レベルに対応し、底部には消しゴムボタンを搭載。サイドボタンも1つ設けられている。プラスチック製で高級感はないが、軽くて扱いやすい。

photo オプションで用意する「ワコム・アクティブスタイラスペン」。高級感はないが、一般的なシャープペンシルを使っているかのような程よい軽さと太さが好印象だ

 使い始めてまず思ったのが「ちょっと力がいるな」ということだ。「intuos」などクリエイター御用達のペンタブレットと比べると、ある程度強い筆圧を加えないとペン入力が始まらない。絵を描いているときはあまり気にならなかったが、ボタンやアイコンをタッチしたつもりが反応していなかった、という誤操作が頻繁に起こり、操作時は意識して力を込める必要があった。

 一方で、筆圧による表現の強弱については「さすが1024段階」という印象で、線の美しいイリとヌキや濃淡が表現できると感じた。ペン先はホワイトボードに描くような比較的ツルツルとした描き心地だが、ペン先の交換にも対応しているので、その気になれば思い思いのペン先を試せる。

photo 左がワコム・アクティブスタイラスペンでの入力で、右が筆圧のないタッチ操作での入力だ
photo 1024段階の筆圧レベルで、線の強弱を滑らかに表現できる

 ポインタとデジタイザスタイラスとの位置合わせはなかなか難しそうだ。画面の中心部では問題ないものの、端の方ではペンとポインタのズレが大きくなる。コントロールパネルにある「ペンとタッチ」の項目で位置を調整しても、満足のいく結果にはならなかった。絵を描くぶんには画面の中心を利用することが多いのであまり問題にはならないと思うが、操作パネルを使うときなどは、ボタンの小ささなども相まって不便に感じることもあるだろう。

タッチ操作との両立が難しく、手袋などの一工夫が必要

 前述の通り、現状ではLatitude 10のペンタブレット機能でWinTabが利用できないため、CLIP STUDIOを使うときは利用するタブレットモードをTabletPCに切り替える必要がある。モードを切り替えると、マルチタッチ操作が使えなくなり、拡大/縮小といった操作をCLIP STUDIOの操作パネルで行うことになる。ソフトウェアごとに挙動は異なると思うが、こういった問題が起こり得ることは留意しておこう。マルチタッチが使えないのは不便ではあるが、画面が小さいぶん、操作パネルを使う際の視線移動や手の移動が少なくて済み、使っているうちに意外と慣れてしまった。

photo USBやBluetooth経由で外部キーボード/マウスに接続するという方法もある

 ソフトウェアキーボードで各種ショートカットを利用することも一応可能だが、キーボードを画面に出現させた後にポチポチとキーを押すのが、ちょっと煩わしい。キーボードやマウスをつないで使うなら話は別だが、Latitude 10単体で使うならショートカットで生産性を向上させるのは難しいと思ったほうがいい。“ペンでひたすらゴリゴリ描く”といった使い方が合っている。

 ペン入力時に画面に手が触れて誤操作しやすいのも、タブレット端末でお絵描きする際には悩ましいところだ。しっかりと手を画面に添えて絵を描きたい場合は、手袋をはめるなどの一工夫が必要になる。軍手などの指先をカット(小指以外)して使うと便利なので、ぜひ試してみてほしい。


 Latitude 10でイラストを実際に描いてみた印象をまとめると、「メインで使うには性能的に厳しい面もあるが、モバイル環境でイラストを描いたり、持ち運べるサブ機が欲しい人には魅力的なお絵描きデバイス」だ。

 「イラストを効率よく描きたい」「レスポンスにこだわりたい」といったプロ志向で同モデルに手を出すと、性能や仕様に不満が残るかもしれないが、5万円台という価格は手ごろだし、普通のWindows 8タブレットとしても利用できる。「タブレットを買うついでに、液晶ペンタブレットの世界も体験してみたい」という人にオススメしたいモデルだ。

著者紹介:山田胡瓜

 漫画家。月刊アフタヌーン(講談社)が主催する漫画新人賞「アフタヌーン四季賞 2012年・冬」で四季大賞を受賞。「アフタヌーン四季賞PORTABLE 2012 冬」に受賞作品「勉強ロック」が掲載されている。


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