「VAIO Duo 13」の“最先端スライドボディ”を丸裸にするVAIO完全分解&開発秘話(前編)(6/6 ページ)

» 2013年09月19日 11時30分 公開
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ペンの書き味、持ち運びやすさ、使い勝手も改善

 液晶ディスプレイには5点マルチタッチ対応の静電容量式タッチパネルと、256段階の筆圧検知ペン(デジタイザスタイラス)に対応したデジタイザも備えているが、前述のオプティコントラストパネルは、見えている画面とタッチパネルのセンサー位置のズレ(視差)を抑える効果もあり、タッチ操作やペン入力の精度向上にも貢献する。さらに、表面ガラスの厚みをVAIO Duo 11の0.7ミリから0.55ミリに薄型化することで、剛性を落とさずに従来より少ない視差を実現した。

 デジタイザスタイラスの書き味にも手を加えている。ペンの長さをVAIO Duo 11のものより伸ばして握りやすく改良しつつ、ディスプレイ表面の摩擦係数を少し上げることで、より紙に近い書き味を目指した。また、ファームウェアの更新でペン入力時のレポートレート(反応する周波数の周期)をすべて一定に保つことにより、ペンで書き殴ってもいびつな線にならないようチューニングしている。

 笠井氏は「一般的なPCに採用されているデジタイザスタイラスで“森”の字をものすごく速く書くと、“木”が“ホ”のように一部抜け落ちて認識されることも多いが、VAIO Duo 11ではきちんと“森”になる。書き味は多面的なものなので、1つ1つの感覚を大事にし、総合的な対策をした」と、書き味の向上について語る。

VAIO Duo 13(左)とVAIO Duo 11(右)でペン入力の追従性を比較してみた(使用アプリはNote Anytime for VAIO)。どちらも高速にペンで円を書き続けてみたところ、VAIO Duo 13はほぼリアルタイムに滑らかな円が描けているのに対し、VAIO Duo 11は描画がわずかに遅れて少々いびつな円になっている。VAIO Duo 11ももう少しゆっくりペンで手書きすれば問題なく描画できるのだが、VAIO Duo 13のレスポンスと精度は優秀だ

 ペン入力は書き味だけでなく、持ち運びや使い勝手の面も強化した。デジタイザスタイラスは本体側面に新設されたフックに装着して携帯でき、利用時は開閉可能なペンホルダーに立てておけるよう進化している。これでもうペンの置き場所に困ることはない。

 さらに、PC本体のスリープ中にフックからペンを引き抜くと、たった0.3秒で高速復帰し、あらかじめ指定しておいたアプリ(標準ではNote Anytime for VAIO)が自動的に立ち上がる「Pen Wake」も大きな魅力だ。ペンにマグネットが内蔵されており、フックから引き抜くと直ちにスリープから復帰する。

 スリープから復帰した後に表示されるWindows 8のロック画面は、付属ユーティリティの「FastAccess」を使うことで、顔認証による高速なロック解除が可能だ。ペンを抜いたら自動的に復帰してロックまで解除し、アプリをすぐに起動するといった一連の動作がスムーズに行える。「紙のノートのように、アイデアを思いついたら、すぐにペンで書いてもらえるように、Pen WakeとFastAccessを搭載した」(笠井氏)

VAIO Duo 13に付属するペン(手前)は、VAIO Duo 11のペン(奥)より長くなり、握りやすくなった(写真=左)。ペン軸にラバーのストッパーとクリップも追加している。VAIO Duo 11と同様、固さの違う2つのペン先を用意(写真=中央)。単6形乾電池1本で駆動する(写真=右)

本体右側面に用意されたペンフックとスタンドを底面から見た様子(写真=左)。ペンフックにペンを差した状態で、本体を持ち運べる(写真=中央)。開閉式のペンスタンドにペンを立てておけば、使いたいときにすぐ書き始められる(写真=右)

VAIO Duo 13の「Pen Wake」機能。スリープ状態でペンフックからペンを抜くと、瞬時にWindows 8が復帰し、ロック画面になるが、ここでFast Accessによる顔認証ログオンが自動的に行なわれ、ロックがすぐ解除される。ロックが解除された後は、あらかじめ指定しておいたアプリ(動画では初期設定のNote Anytime for VAIO)が立ち上がる

ペンをより活用するためのアプリ環境も充実

 VAIO Duo 11と同様、ペンを活用するアプリもそろっているが、新たに「CamScanner」というWindowsストアアプリを追加した。これは内蔵カメラをスキャナ代わりに使えるアプリで、紙の印刷物やプロジェクターの投写画面、ホワイトボードなどを撮影すると、自動で輪郭検出と台形補正の処理ができ、ゆがみを抑えた読みやすい状態で画像やPDFとして保存できる。OCR機能により、画像内の文字を読み取ってテキストデータを作成し、クリップボードにコピーする機能も持つ。

 山内氏は「ペン入力にこのアプリを組み合わせるため、"Exmor RS for PC" CMOSセンサー搭載で約799万画素のアウトカメラを新たに採用した。CamScanner自体はiOS/Android版もあるが、VAIO Duo 13のスマートデバイスより大きな13.3型ワイド画面で見る体験は一味違う。VAIO Duo 13のカメラをドキュメントスキャナ代わりに使えれば、もっとペンの活躍の場が増えるという考えから、他社に先駆けてWindows版を搭載した」と、採用の経緯を説明する。

内蔵カメラをドキュメントスキャナ的に利用できるCamScanner。紙の印刷物を撮影すると(画像=左)、自動的に輪郭を検出でき(画像=中央)、台形補正によるゆがみを抑えた画像を作ってくれる(画像=右)

 なお、VAIO Duo 13はVAIO Duo 11と同様、筆圧検知に対応するアプリケーションが限定され、手書きノートを作成・管理する「Note Anytime for VAIO」や、付属のフォトレタッチソフトである「Photoshop Elements 11」では筆圧検知が利用できない(WinTab API非対応)。前者は「メモ管理ツールなので筆圧検知を重視していない」(山内氏)とのことだが、後者は筆圧検知に対応することで、イラスト制作など利用シーンの幅が広がるはずだ。

 今後、VAIO Duo 13のデジタイザスタイラス(N-trigのDuoSenseがベース)を使ってPhotoshop Elements 11上で筆圧検知を効かせるには、アドビシステムズ側がアプリを対応させる必要があるのだが、状況は改善されつつある。

 2013年9月に独ベルリンで開催された家電見本市「IFA 2013」にて、ソニーはアドビシステムズの協力を得て、「Adobe Illustrator CC」と「Adobe Photoshop CC」の筆圧検知対応アップデートを年内に行う予定と発表した。これにより、VAIO Duo 13の日本モデルにおいても近い将来の筆圧検知サポートが期待できる。


 以上、今回はVAIO Duo 13の開発経緯や進化した変形機構、液晶ディスプレイ、タッチパネルとペン入力機能をチェックした。後編ではPC本体をさらに分解し、バッテリーをはじめ、第4世代Coreと省電力技術、放熱設計、キーボード、サウンド面など、各部のこだわりをじっくり追っていこう。

・→VAIO完全分解&開発秘話(後編):「VAIO Duo 13」を“徹底解剖”したらPCの未来が見えてきた

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