「Mantle」の効果をRadeon R9 290X/280X/270Xで試してみた期待の新API(2/3 ページ)

» 2014年03月04日 10時40分 公開
[石川ひさよし,ITmedia]

最大で19%の向上、特定処理での負荷を和らげる効果も確認

 ベンチマーク結果を説明する前に使用機材を紹介しておこう。今回は、通常のベンチマークレビューと同じCore i7-4770K(3.5GHz/最大3.9GHz)にIntel Z87マザーボード、16GバイトのDDR3-1600メモリという構成を用い、グラフィックスカードにはRadeon R9 290X、R9 270Xのリファレンスカード、そしてRadeon R9 280Xを搭載したMSI「R9 280X Twin Frozr 4S OC」を用意した。Radeon R9 280Xのみ非リファレンスカードなのは、R9 280Xにリファレンスカードがないためで、オリジナルクーラーのOC版であるが、これをそのまま使用している。

 ベンチマーク比較では、GPU毎に、解像度と画質オプションを切り替えたもので進めていこう。まずはRadeon R9 290Xの解像度別のグラフを見ると、中画質というR9 290Xとしては比較的軽負荷な設定で計測しているものの、どの解像度でも大幅に平均フレームレートが向上した。向上率は、最も低い2560×1440ドット時でも9%、最も高い1280×720ドット時なら16%となった。そして最も使用されるだろう1920×1080ドット時は14%、20fps近く向上している。

 Radeon R9 290Xの画質オプション別の結果を見ると、これも、設定に関わらず、向上していることが分かる。向上率は、低画質時で17%、最高画質時で8%となった。最高画質時の8%という値は小さくも感じてしまうが、実際には5fps以上向上するわけで、けっこう違う。

 最後に、CSVデータそのもののミリ秒での推移を見てみると、全体的にMantleのほうがDirectX 11の折れ線よりも下(1フレームの描画時間が速い)に来ていることに加え、後半部分でDirectX 11が20ミリ秒近くかかっている部分があるところ、Mantleは15ミリ秒あたりで留まっていた。

 Mantleでは、特定の描画処理時にGPUを直接操作することができ、ここがDirectXとは異なると説明されていたが、この部分はそうした状況が顕著に表れたのかもしれない。全体的にブレ幅が抑えられた印象で、安定したフレームレートが出せているという点は、プレイ時の快適度にも好影響といえるだろう。

Radeon R9 290X(解像度別)

Radeon R9 290X(画質別)

Radeon R9 290X(ミリ秒)

 こうしてRadeon R9 290Xでは一定の効果が得られたわけだが、次のR9 280Xでは、Mantleが効いていないのではないか、という結果となった。いちおう、1280×720ドットの中画質時だけは5fps近く向上したものの、Radeon R9 290X時の向上率と照らし合わせると、誤差の範囲であるようにみえる。

 また、それ以外はまさに誤差の範囲であり、不可思議な結果だ。結局、再計測しそれでもダメで、Mantleを指定してゲームだけでなくシステムを再起動してみても結果は変わらなかった。ミリ秒での推移を見ても、両者に変わりはないように見える。Radeon R9 280Xの場合、AMDドライバも、Battlefield 4でも未最適化の状態であり、それがこの結果の原因だったのかもしれないし、あるいは、OC版カードである点や、システム側のトラブルかもしれない。結局、原因は究明できなかった。

Radeon R9 280X(解像度別)

Radeon R9 280X(画質別)

Radeon R9 280X(ミリ秒)

 最後はRadeon R9 270X。こちらも、AMDドライバ、Battlefield 4ともに未最適化段階という点では先のR9 280Xと同様だが、結果としては、Mantleの効果がみられた。

 まず解像度別の結果では、1280×720ドットで約24fps、2560×1440ドット時でも5fps近くの向上が得られている。向上率では、19%〜8%と、1280×720ドット時の率では、Radeon R9 290X時の16%よりも向上したことになる。

 画質別では、こちらも各画質設定で確かに向上しているようだ。ただ、低画質〜高画質までは15%程度で安定した向上が見られたが、最高画質時は4%で、これのみほかの画質設定時のよりも向上率が小さかった。Radeon R9 290Xでの高画質対最高画質時は、11%対8%、これがR9 270Xだと14%対4%となる。これは落ちすぎであるようにも思う。

 ただし、ミリ秒での推移を見ると、Mantle自体は効いているようだ。平均的なフレーム描画時間に関しては、20〜30ミリ秒でどちらもほぼ同じだが、DirectX 11側の折れ線には、ところどころスパイクのように、極端に描画スピードが落ちるところがある。しかし、Mantle側にはそれがない。

 例えば高画質時のグラフ(注意:時系列は同一ではない。一定の時間を切り出したものであって最高画質時と重ねることはできない)を見てみると、DirectX 11側に顕著なスパイクが生じるのは同じで、平均的なフレーム描画時間に関してはMantleのほうが速い結果になる。こうしたことから、Mantleは効いている、ただし最高画質は負荷が大きすぎるためにMantleでも対応しきれない場合がある、ということが考えられる。そしてスパイク部分が解消される点は、MantleがGPUを直接叩いていることの効果、と捉えることができるのではないだろうか。

Radeon R9 270X(解像度別)

Radeon R9 270X(画質別)

Radeon R9 270X(ミリ秒)

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