Intelがx86系CPUとPC周辺技術の世界で変わらず技術革新を続けていることを確認できたIDFだが、メインテーマとなっていたのはPCよりも「IoT」「ウェアラブル」だった。販売台数の伸び幅が限られるPCに比べ、小型デバイスにコンピュータを組み込むことで機器のインテリジェント化を進める「IoT」や「ウェアラブル」は、その普及規模を爆発的に加速させる可能性がある。
2020年にはIoTやウェアラブルを含めることで500億デバイスの世界が到来するともいわれ、こうした市場を狙うのはIntelとして当然のことだろう。Intelの場合、データセンター向けCPUの世界ではXeonで圧倒的シェアを持っており、「末端デバイス向けCPU」と「その情報を集約して処理するデータセンター向けCPU」の2つの市場を同時に狙えるわけで、当面の注力分野はこの2つということになる。
クルザニッチ氏は、Intel技術を採用したウェアラブル製品の数々を基調講演で紹介している。それは、心拍数計測が可能なスマートイヤフォンであったり、スマートフォン連動が可能な女性向けアクセサリであったり、あるいは、IDFと同日にAppleが発表した「Apple Watch」を意識するような、ファッションブランドのスマートウォッチ関連の発表であったりと、Intelもこの分野にかなり力を入れていることをアピールしている。
さらに、2014 International CESで紹介した世界最小のx86系コンピュータともいえる「Edison」を正式に発表した。先行して米国市場で出荷を開始し、2014年中に世界65カ国に展開するという。ソフトウェアの開発キットともに提供するEdisonを使って、どのような製品やサービスを開発できるのか。1〜2年後の展開に注目したい。
IoTの世界で注目したいのは、各種センサデバイスから集めた情報をどのように処理するかだ。事前に交通状況や天気状況を把握できれば、車や公共交通機関で移動中の人々に知らせることで、渋滞や遅延トラブルをある程度回避できるかもしれない。
こうした仕組みを実現する「スマートシティ」を支えるのは、集めた情報を分析して的確な指示を出すコンピュータシステムの存在だ。米Intelシニアバイスプレジデント兼データセンター部門担当ジェネラルマネージャのダイアン・ブライアント氏によれば、2020年の500億デバイス時代に24時間365日にわたって収集できるデータ量は35ゼタバイトにも達するという。あまり聞き慣れない単位だが、テラバイトの1000倍がペタバイト、ペタバイトの1000倍がエクサバイト、エクサバイトの1000倍がゼタバイトといえば、その規模が少し想像できるだろうか。
これだけの情報を収集して保持し、さらにリアルタイムで的確な分析を行うとなると、データセンターには相応の処理能力が求められることになる。このプラットフォームを支える技術開発こそが、IoT分野でのIntelの2番目のチャンスというわけだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.