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日本マイクロソフトの平野新社長は「グローバルな“道産子”」ツートップ新体制でさらなる成長へ

» 2015年03月02日 18時30分 公開
[前橋豪,ITmedia]

日本マイクロソフトが7月1日付で新経営体制に

 日本マイクロソフトは3月2日、2015年7月1日付で、現社長の樋口泰行氏が代表執行役会長に、平野拓也氏が代表執行役社長に就任することを発表した。平野拓也氏はこれまで執行役専務 マーケティング&オペレーションズ担当を務めていたが、3月2日付で代表執行役副社長に昇格し、同社の新会計年度(2016年度)が始まる7月1日付で代表執行役社長となる。

 同社にて開催された記者会見では、樋口氏、平野氏、そして2人の上司となる米Microsoftのインターナショナルプレジデントであるジャンフィリップ・クルトワ氏が今回の新経営体制について説明した。

左から樋口泰行氏、平野拓也氏、ジャンフィリップ・クルトワ氏

 まずクルトワ氏は、2011年2月1日付でMicrosoftの日本法人を「日本マイクロソフト」に社名変更(旧社名:マイクロソフト)してから、「過去4年間のうち3年間において、日本マイクソフトがMicrosoftにおける先進国6カ国の子会社で1位の地位を獲得し、素晴しいリーダシップを発揮した」と、樋口氏の経営手腕を高く評価した(Microsoftは毎年、売上予算など多数の項目で子会社を総合的に評価している)。

 新社長となる平野氏については「(日本法人に)入社してから10年間、マイクロソフトで活躍した実績があり、グローバルでの豊富な実績と日本市場の主要ビジネスに携わった経験を持つ。モバイルファースト、クラウドファーストを掲げた新しいMicrosoftの日本市場におけるコミットメントを強化する新リーダーとして適任だ」と述べる。

空席だった会長となる樋口氏は、財界や政府への影響力向上へ

7月1日付で日本マイクロソフトの代表執行役会長となる樋口氏

 現社長の樋口氏は、アップルコンピュータやコンパックコンピュータ(後に日本ヒューレット・パッカードと合併)での経験後、日本ヒューレット・パッカードの代表取締役社長、ダイエーの代表取締役社長を経て、2007年3月にマイクロソフト(日本法人)の代表取締役兼COOとして入社。2008年4月から約7年間、同社の代表取締役社長を務めてきた。7月1日からは会長の座につくこととなる。

 樋口氏は「外資系企業では突然リーダーが不在になったり、交代したりと急な人事が多いが、今回の人事はそれらを反面教師に、長期間をかけて綿密な計画を立てた」と自信をのぞかせる。6月末までの準備期間では、円滑な移行を促すため、来期の予算や人事、事業計画について意志決定に平野氏が加わり、「ビジネスを止めず、7月からジャンプスタートできるよう、2人が全速力で並走する」という。

 現状で日本マイクロソフトは会長が空席(かつては古川亨氏が会長を務めたこともある)だが、樋口氏は新たに会長へ就任する背景として、「1人で社内と社外の仕事をまとめていくのが大変だった」と振り返る。会長就任後は、平野氏のサポートを行いつつ、平野氏の手が回らない部分の業務として、「トップ営業、財界や政府への影響力向上、顧客満足の強化、さまざまな社会貢献」といった面に注力していくと語る。

 樋口氏は新社長の平野氏について「人格的にも能力的にも適任で、熱意、グローバルでの経験も申し分ない」と太鼓判を押す。特に「グローバル経験が豊富で日本語も英語も堪能なため、私が日本語なら言えるのに……と思っていた細かい部分でのコミュニケーションも円滑に運ぶのではないか」と期待を寄せる(その後、クルトワ氏が「樋口氏も英語は堪能で、オフィスでも英語が響いていた」と和やかにフォローする面も)。

グローバルでの豊富な経験と日本人のマインドを持つ新社長

7月1日付で日本マイクロソフトの代表執行役社長となる平野氏

 新社長となる平野氏は、北海道の札幌市出身。父が日本人、母がアメリカ人のハーフであり、流ちょうな日本語で「自分は道産子。よく見た目と話す言葉にギャップがありますね、と言われる」と笑う。

 平野氏は米ブリガムヤング大学を卒業後、Kanematsu USA、Arbor Software、ハイペリオンを経て2005年8月にマイクロソフトに入社。以後エンタープライズビジネスを長年担当し、Microsoftの中央・東ヨーロッパゼネラルマネージャーを務めた後、2014年7月に日本マイクロソフトの執行役専務 マーケティング&オペレーションズ担当に就任と、その経歴には海外が目立つ。しかし、「小さいときは父と座禅したり、学ランを着て学校に通い、受験勉強も経験するなど、自分のベースは日本にある」と断言する。

 新社長としての具体的なビジョンや戦略は、7月1日に向けて準備中とのことだが、抱負として「まず日本に根付き、信頼される会社という点は踏襲する。一方で米国本社では新CEOのサティア・ナデラ氏による変革が始まり、その結果が少しずつ見えてきた。日本でも臆することなく、使いたくなる製品、愛される会社、先手を打っていくことを目指し、チャレンジ精神に富んだ職場環境を作り、クラウドを中心にワクワクするような新提案をしたい」と意気込んだ。

新体制でWindows 10発売に備える日本マイクロソフト

 日本マイクロソフトが2011年2月に社名を変更した際、樋口氏は「日本に根付いて貢献するという点を強調すべく、社名の頭に“日本”を付けた」と繰り返し述べていた。実際、同社は米Microsoftの戦略をそのまま日本に持ってきているわけではなく、最近の例ではOffice Premiumに代表されるように、日本市場に合わせた独自の製品やサービスを関連企業と協力体制を築きながら展開している。

 そうした国内の独自戦略に通じつつ、グローバルでの豊富な経験を生かし、本社主導のサティア改革を推し進めることも期待されているであろう平野新社長が、今後どのように新しい日本マイクロソフトのビジョンを描き実行していくのか。2015年はナデラ氏による改革を色濃く反映させた次期OS「Windows 10」が登場する同社にとって非常に重要な年だ。7月1日の就任時、平野社長の語る内容に注目される。

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