個人的には利用頻度の高いスクリーンショットが大きく改善された点がうれしい。
スクリーンショットの保存先、マウスカーソルの表示・非表示の選択の他。撮影タイマーで時間差のスクリーンショットを取ったり、あるいは操作シーンを動画で記録したりする機能も備える。動画の記録は画面全体の他、指定範囲のみの録画とすることも可能だ。動画はH.264でエンコードされたQuickTime形式で記録される。
また静止画、動画ともに撮影されたスクリーンショットは、iOS 11と同じように撮影直後にサムネイル表示され、静止画、動画ともに簡単な編集をその場で行える。さらに望んだような撮影結果になっていない場合は、保存せずに捨てることが可能な点も、iOS 11のスクリーンショット機能と同じだ。
保存先はデスクトップ、書類フォルダ以外に、メール、メッセージ(iMessage)、プレビュー、クリップボードが指定でき、特定のフォルダに保存しないまま直接、望んだコンタクト手段で画面情報を送ることもできるなど、かなり強力な機能となっている。
動画でのスクリーンショット保存は極めて滑らか。さまざまな使い方が考えられるだろう。なお、当然ながら複製制限のある動画コンテンツなどは、この機能ではキャプチャーすることができないよう配慮されている。
またiPhone・iPadの内蔵カメラを用いてMacに写真を取り込める「カメラ連携」だが、「写真を撮る」「書類をスキャン」という2つのモードで同じApple IDを登録したiOSデバイスのカメラを活用できる。
連携先のデバイスにはリリース前のiOS 12がインストールされている必要があるため実際に試すことはできなかったが、WWDC 2018におけるデモではBluetoothとWi-Fiをうまく連携させることでスムーズな動作が実現されていた。従来のAirDropを用いた転送よりもずっと手軽に使えるであろうことは想像に難くない。
この他、Mac用のアプリ流通を活性化させるため、iOS向けと同様のよりリッチな機能紹介が含まれるアプリストア(Mac AppStore)などアップデートは盛りだくさんだ。
地味ではあるものの、最後にmacOS標準Webブラウザ「Safari」のアップデートについて触れておきたい。なお、以下の点はiOS向けSafariでも同様とのことだ。
WWDC 2018の基調講演では、「フィンガープリント」を追跡できないようにする機能について時間をかけて解説が行われた。フィンガープリント(指紋)とは、デバイスの特徴を読み取って特定するため要約値を算出し、それを追い掛けることでユーザーのネット上での振る舞いを追跡する技術のことだ。
システムのスペックやブラウザに組み込まれているプラグインなど、さまざまな固有の情報をブラウザ経由で取得し、その特徴を「指紋」とすることで、どのブラウザからアクセスされているかを認識するが、新しいSafariはフィンガープリントを曖昧にするためのマスキング技術が導入され、正確な追跡を不可能にする。
また、Webサイトの中には、サイト上のインタラクティブな機能を利用する際、その行動を意図せず特定の情報収集を行うサーバに送信している場合もある。しかし、そういった利用者が意図しない第三者に情報を送っている可能性を検出すると、送信の是非をユーザーに尋ねるようになるという。ホッピングという手法で、自分がクリックした先ではないサーバに送り込まれる手法もSafari側で検出され、警告を発するようになるそうだ。
Facebookの個人情報流出事件、あるいは欧州委員会の定めた一般データ保護規則(GDPR)の施行など、セキュリティとプライバシーを取り巻く環境はより複雑になっている。
Googleなどの企業が、クラウド上での利用者の振る舞いを自社サービスの品質向上や新機能、新サービスへの展開に活用しようとしている中、Appleはあくまでも「製品内に閉じた利用履歴の機械学習」で使いやすさを高める方針を打ち出し、開発者に向けても機械学習のためのツールをiOS・macOSともに提供。データでのビジネスやサーバに何らかの履歴情報をアップロードし、それを活用することに対して否定的な見解を表明している。
上記の機能はあくまでも「Appleが提供する標準ブラウザ」の機能ではあるが、ネット社会における情報の扱いに対し、Appleの考えを示す行動の一端ともいえるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.