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» 2009年11月17日 08時01分 UPDATE

iPhoneと位置情報の連携で「感性に響く最先端の館内案内」

相田みつを美術館で、クウジットの位置検出技術「PlaceEngine」を使ったiPhone/iPod touch向け施設案内アプリ「DaMoNo」が提供されている。ユーザーの“居場所”に合わせて配信情報を自動でコントロールし、“親切でじゃまにならない”館内案内を目指した。

[山田祐介,ITmedia]
photo クウジットが開発した館内案内アプリ「DaMoNo」

 作品の前で専用端末に番号を打ち込み、音声ガイドを聞く――。美術館や博物館では、こうした音声による作品案内がおなじみだが、スマートフォンをはじめとする高機能なモバイル端末が普及しつつある今、新しい館内案内の手法も模索されている。

 東京国際フォーラムにある相田みつを美術館では、10月20日からiPhone/iPod touchを利用した作品案内を提供している。館内案内用のiPhone/iPod touchアプリ「DaMoNo(だ・も・の)」を開発したのは、無線LANを活用した位置検出技術「PlaceEngine」で知られるクウジットだ。美術館では貸し出し用のiPod touchを30台用意しているほか、AppStoreで販売しているDaMoNo(800円)をダウンロードしたiPhone/iPod touchの持参者は、企画展が行われている12月20日まで、入場料(一般・大学生は800円)が無料になる。

 DaMoNoでは、展示作品の中から館長の相田一人氏が厳選した24作品を、テキストや写真で解説する。特徴は、ユーザーがどの展示室にいるかをPlaceEngineの屋内位置測位ソリューションで検出し、展示室ごとに案内画面が自動で切り変わることだ。来場者が展示室に入ると、自動的にその展示室の作品がサムネイルで表示され、タッチパネルを操作することで解説や関連作品の画像などが閲覧できる。また、順路の途中にあるカフェコーナーに近づくと、来場者が寄せた感想文が端末から見られるようになり、世代別に整理された感想文をカフェの椅子に座ってゆっくりと読むことができる。

photophoto 順路の案内(写真=左)に従い展示室に入室すると、自動的に作品案内のモードに切り替わり、展示室にある作品のサムネイルが表示される(写真=右)。作品をタップすれば、解説を見ることができる
photo 入室済みの展示室がグレーに表示されるため、展示室を見逃すこともない
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 相田みつを美術館 業務部 企画担当の成田信勝部長によれば、iPhone/iPod touchを導入したのは「感性に響く最先端の館内案内を提供したかった」という理由からだ。単なる音声案内では得られない、端末に触れること自体に楽しさを感じるような表現力と操作性を求めた結果、3.5インチのタッチパネルディスプレイを備えたiPhoneに行き着いたという。開発にあたっては操作性のシンプルさにこだわり、ユーザーが端末の操作に“没入”することなく作品の情報に触れられるようにした。「子供からお年寄りまで幅広い年齢の方がアプリを利用しているが、『使い方が分からなかった』ということは聞いていない」(成田氏)というから、狙いは成功しているようだ。

企画当初は拡張現実の案も

 美術館では、館内案内はあくまでも観賞をサポートする脇役であり、主役は目の前の作品である。スマートフォンを使えば、動画や音声を駆使したり、Webサイトへのリンクなどを設けたりと、コンテンツをリッチにすることは簡単だが、ユーザーが「ディスプレイを見るのに一生懸命」になっては元も子もない。その点では、視覚を占有しない音声案内が優位といえる。相田みつを美術館ではDaMoNoによる館内案内を継続的に提供していく予定だが、今回はトライアルとしての意味合いもあり、解説作品を厳選し、写真とテキストのみの情報提供にとどめた。単に情報を豪華にすればサービスが向上するわけではないのが、デバイスを使った館内案内の難しい点だ。

 一方で、鑑賞の合間や鑑賞後の情報提供という面には、高い期待が寄せられている。例えば、紙では「存在に気づかずに帰る人も多い」(成田氏)という感想文集が、DaMoNoではカフェコーナーという“場所”をトリガーに自動で感想文モードが起動し、より多くのユーザーに感想文に触れる機会を与えられる。現在は感想文を読むだけの機能だが、今後は端末から感想を書く機能も付けたいと成田氏は言う。

photophoto カフェコーナーに近づくと、感想文モードが起動し、「感想へ」と書かれたハート型のアイコンが画面に出てくる(写真=左)。アイコンをタップすると、10代、20代、30代と世代別に整理された感想文を読むことができる(写真=右)

 クウジットの末吉隆彦社長は、館内案内のような“脇役”に徹するアプリでは、「情報を出すタイミングをいかにコントロールするか」が重要だと話す。DaMoNoは、PlaceEngineを使うことで“その部屋に来た”タイミングで情報を配信しているが、“絵の前に立った”タイミングまで把握してくれれば、作品をサムネイルから選ぶ手間もなくなり、さらに快適に美術鑑賞を楽しめるはずだ。現状、PlaceEngineの位置検出では数メートルの誤差が発生するため、作品それぞれの位置を正確に把握することは難しいが、画像認識などの技術を組み合わせれば、個別に認識することも可能になる。

 実際、アプリの企画当初には画像認識を使うことも検討していたと末吉氏は明かす。仙台のショッピングモールでも採用された、クウジットの拡張現実(AR)技術「KART」(Koozyt AR Technology)を利用して、絵の近くに設けた画像認識用のマーカーにカメラを向けると情報が提供されるといった機能を考えていたという。しかし、混雑する館内ではマーカーにカメラを向けるのが難しいという、美術館ならではの問題もあって実装は見送られた。


 スマートフォンをはじめとする高機能な携帯端末には無線LANやカメラ以外にも、GPS、Bluetooth、電子コンパス、加速度センサーなど、多くのデバイスが搭載されている。こうした機能でユーザーの状況を予想し、その時々で最適な情報を配信できるのはスマートフォンの持つ大きな可能性だ。特に、“親切だけどじゃまにならない”ことが求められる館内案内の分野では、アプリの進化とともに、これまでにない利便性を提供してくれそうだ。

 また、ユーザー自身の端末にアプリを提供すれば、端末を回収せずに済むだけでなく、美術館を出たあとにもサービスを提供できるメリットがある。例えばDaMoNoは、美術館の外でも展示会のカタログとして楽しむことが可能だが、そのほかにも、“あとで読む”用に作品の詳細な情報を提供したり、作品にちなんだ商品や観光地を案内したり、次の展示会の情報を配信したりと、使い道はいろいろと考えられる。

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