プロとアマとの“中間”に経済支援――作品発表の一大プラットフォーム目指す携帯サイト「E★エブリスタ」

» 2010年06月01日 11時35分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo 左から、NTTドコモの辻村清之代表取締役副社長、エブリスタの池田純代表取締役社長、ディー・エヌ・エーの南場智子代表取締役社長兼CEO

 「創作活動で生計を立てられるプロのクリエーターと、読者からの激励のみを糧とするアマチュアとの間に、さまざまなレベルの中間層がいるはず。そこにしっかりと経済的な報酬を還元していく」(ディー・エヌ・エー 南場智子代表取締役社長兼CEO)――。

 6月7日に本格的にオープンする無料の携帯向けサイト「E★エブリスタ」は、小説、漫画、エッセイなどのさまざまな作品をユーザーが投稿・閲覧できるUGC(User Generated Content)メディアだ。同サイトでは、人気の作品を手掛けたユーザーに「最大100万円」の報酬を与えたり、出版/映像化などを支援したりすることで作り手の意欲を刺激し、幅広いユーザーの参加を募る。さらに、“ケータイ総合雑誌”として著名なクリエーターの書き下ろし作品を集め、UGCとの連動も図るドコモ端末向け有料サービス「E★エブリスタプレミアム」を月額210円で提供。収益の一部をクリエーターへの報酬の原資としてサービスの活性化を図り、1年半を目処に有料会員の100万人突破を目指す。

 5月31日に行われた記者発表会では、運営会社であるエブリスタの池田純代表取締役社長、出資企業であるディー・エヌ・エーの南場智子代表取締役社長兼CEO、NTTドコモの辻村清之代表取締役副社長が事業の内容や狙いを説明した。

報酬やイベントで創作支援。無料UGCと有料の“ケータイ雑誌”でエコシステム形成

 E★エブリスタは、ディー・エヌ・エー運営の携帯サイト「モバゲータウン」のクリエーターコーナーにある約80万の投稿作品をそっくり反映し、3キャリア対応のケータイサイトおよびPC向けWebサイトとして5月17日にプレスタートを切った(ともにURLはhttp://estar.jp/)。今後はモバゲータウンの創作系サービスを引き継ぎ、クリエーター向けのコーナーはE★エブリスタに集約される。投稿されたコンテンツはモバゲータウンとE★エブリスタのどちらでも閲覧できるほか、両サイトの行き来がしやすいように双方のマイページにリンクを設けるという。

 UGCに特化したサイトとして、従来からクリエーターコーナーにあった「小説」「イラスト」「レシピ」に加え、新たに「コミック」「写真」「エッセイ・How To」「俳句・川柳・短歌」の投稿を受け付ける。プレオープンに併せて賞金総額700万円超の投稿イベントを開催するなどして投稿を促し、「コンテンツの数は108万を超えた」(池田氏)という。

photophoto E★エブリスタでは一般のアマチュアにも報酬が得られるチャンスが用意されている。もっとも人気のある投稿者には100万円に換金できるポイントが与えられる

 6月7日の本格運営開始後には、閲覧者が気に入った作品に投げる「スター」の数を基準に、人気クリエーターに幅広く報酬を用意する。月ごとに特に人気のある作品の投稿者を「エッジスタ」に認定し、最低でも3万円相当、最も人気のクリエーターには100万円相当の報酬を与える。報酬はポイントとして提供され、銀行口座を登録すれば、現金に換えられる。

 6月末時点で30人程度のエッジスタを選定し、その後は「月に10人ぐらいのペース」(池田氏)で総数を増やす予定。9月末には66人を予定する。1位以下のエッジスタにも順位に応じた報酬を用意する考えで、9月末の計画では、2位で76万円相当、5位で38万円相当、10位で13万円相当と、かなり高額な報酬が用意されている。また、一般クリエーターに対しても、毎月100人程度に何かしらの報酬を用意する計画。

photo 9月末のエッジスタに対する報酬の計画。報酬の原資は月を追うごとに増える

 また投稿者の「出口支援」(池田氏)として、作品の出版や映像化に向けた取り組みも実施する。「E★エブリスタ小説大賞」では幻冬舎から作品が出版されるほか、「E★エブリスタ×角川コンテンツゲート コミック・イラスト大賞」では作品の映像化が検討されているという。また、二次創作の許可を得て行うイラスト投稿イベントなど、ユーザーが気軽に参加できるイベントを開催していく。

photo E★エブリスタプレミアムの連載陣の一部

 さらに、こうした無料のUGCサービスだけでなく、有料の“ケータイ総合雑誌”を抱えた「2層構造」(池田氏)でクリエーター向けのエコシステムを循環させるのがエブリスタの考え。6月7日に開設する月額210円のE★エブリスタプレミアムでは、“紙のない初の本格的ケータイ総合雑誌”とうたい、松本零士さんの描き下ろし漫画「幻想新幹線0」や、中田英寿さんがワールドカップを語る独占コンテンツなど、約50タイトルを展開する。コンテンツのボリュームは、紙の雑誌に換算して500ページ程度になる見込みだ。

 E★エブリスタプレミアムでは、プロ作家や著名人の作品で注目度やブランド力を高めていく一方で、将来的には投稿ユーザーの中から発掘したクリエーターの作品の掲載も目指す。さらに、同サービスの収益の一部を投稿者への報酬に還元するほか、注目の投稿作品を誌面で紹介したり、ユーザーの質問などにプロクリエーターが応える場を用意するなどして、投稿者の創作意欲に訴えていくという。


photo 有料のケータイ雑誌をブランド化し、雑誌の投稿欄のように、参加ユーザーが目指す“ステージ”に育てたい考えだ

 収益化に向け、1年半を目処に有料サービス登録者を「早期に100万人突破」させる考え。ユーザー数が増加すれば、広告の掲載も検討すると池田氏は話す。また、有料サービスはドコモ端末専用に展開するが、ドコモの辻村氏は「サービスがドコモだけに閉じることは考えにくい」と、将来的には3キャリア対応を検討する姿勢を見せた。

E★エブリスタは「インターネットの王道」

 E★エブリスタの取り組みを、ディー・エヌ・エーの南場氏は「インターネットの王道の事業化」と位置付ける。なぜなら同氏は、SNSをはじめとするさまざまなソーシャルメディアが広がる中で、インターネットが「情報収集するメディアから、仲間とのつながりや感動を共有するメディアに大きく様変わりしている」と考えるからだ。

 こうした状況の中で、創作物を発表するという「普遍的な欲求」に応えるソーシャルプラットフォームを築き上げることには、大きな価値があると南場氏はみる。さらに、プロへの道を報酬などの形で“段階的”に提供し、眠れるスターを発掘することにも期待を寄せる。「これまでプロになるには大きな覚悟が必要だった。会社を辞めたり、働きながらコンテストに応募して受賞を待ったりと、ハードルが高かった。我々が目指す世界は、アマチュアの層から一歩一歩階段を上っていけるもの。少なめのお小遣いから、生活できるレベルの報酬へと、一歩ずつ登っていける。そうした考え方は以前からもあったが、今回はそれを大きなスケールで実現する、初めてのプロジェクト」(南場氏)

 南場氏の説明によれば、E★エブリスタでは平均して「1分18秒に1作品、1.89秒に1ページ」のコンテンツがユーザーの手によって創造されているという。そして、ケータイ小説を初めとする日本のUCG文化やサービスは「世界に通用する」と同氏は考える。

 モバゲータウンの小説投稿コーナーでは、会員の4%程度が小説を自身で書いていたが、米国でディー・エヌ・エーが展開したSNSサービスの小説コーナーには、会員の8%程度が小説を投稿したという。「外国人は指が大きいから親指では小説を書けない(ケータイで小説を書かない)という人もいたが、そんなユーザーが米国に8%もいたのはうれしい驚き。こうしたユニバーサルなニーズを引き出すノウハウを、日本はケータイが先行して発展したために他国に先んじて得られた」(南場氏)。エブリスタの池田氏は、まずは国内でしっかりと事業化することに重点を置くとしたが、ドコモの辻村氏によれば、ドコモが持つアジアへのチャンネルを通じて、将来的に海外へ展開することも考えられるという。

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