基地局データから“これまでにない”人口統計データを――ドコモの「モバイル空間統計」

» 2010年09月15日 21時20分 公開
[後藤祥子,ITmedia]

 ケータイ基地局の運用データを街づくりに活用――。この秋、NTTドコモと東京大学がこんな取り組みを開始する。

 今回の取り組みでドコモは、携帯電話の基地局に集まる利用者データを匿名化し、ドコモ端末の普及率などを加味した統計データに変換。時間ごとに変化する各地域の人口分布や人口構成、移動人口を把握できる「モバイル空間統計」データとしてまとめる。ドコモと東京大学は、統計データの信頼性を精査するとともに、統計データをどのような形で街づくりに生かせるのかを検討する。

Photo サービスについて説明するNTTドコモ 先進技術研究所 所長の村瀬淳氏(写真=左)と、同ネットワークシステム 研究グループ 主幹研究員の岡島一郎氏(写真=右)

Photo モバイル空間統計の仕組みと特性

これまでにない、人口統計データを生成可能に

 基地局の運用データを活用するモバイル空間統計は、これまでにない人口統計データを生成できると、NTTドコモ 先進技術研究所の岡島一郎氏(ネットワークシステム 研究グループ 主幹研究員)は胸を張る。

 人口分布などの統計データについては、統計局の国勢調査がよく知られているが、調査は1年に1度であり、その上「夜と昼の人口しか出ていない」(岡島氏)など、日々変化する情報までは追いきれていない。ドコモのモバイル空間統計は、ある場所にいる人の人数や性別、年齢が分かるほか、時間ごとの変化も確認できる。

 デモンストレーションでは、時間の推移に伴って変化する東京23区の人口分布や、新宿駅、巣鴨駅周辺の人口構成のイメージ、千代田区への流入人口のイメージを示し、時間によって人口分布や人口構成が大きく変化する様子を紹介した。

Photo 時間に伴って変化する東京23区の人口分布。朝5時(写真=左)と13時(写真=右)とでは、人口分布が大きく異なる

Photo 新宿駅と巣鴨駅周辺の人口構成イメージ。年配女性に人気の「巣鴨地蔵通商店街」がある巣鴨は年配女性の比率が高く、若者に人気の新宿は若者層の比率が高い

Photo 千代田区への流入人口。通勤時間帯にさしかかると、周辺から千代田区への人口流入が増え、夕方になると減っていく

基地局の運用データを統計データとして活用

 ドコモがこのような統計データを作成できるのは、基地局と端末との間で定期的に通信が発生しているためだ。基地局側は、携帯電話がいつでも通話やメールの着信を受けられるように、基地局のカバーエリア内にある携帯電話を1時間ごとにチェックしている。エリア内にある携帯電話からは、契約者の電話番号や性別、生年月日などのデータが分かり、運用データと呼ばれるこのデータが統計のベースになっている。

 運用データの統計データ化にあたっては、まず、電話番号や生年月日など個人を識別できるデータを除去する処理を行い、「男性、40代」といったデータに変換。次に、ドコモ端末の普及率などを加味し、エリアごとのデータに落とし込む。最後に、エリア上の少人数の部分を除去、あるいは集計単位を広げてまとめるなどの処理を施し、モバイル空間統計データに仕上げている。

Photo 統計用データ処理の流れ(写真=左)と、モバイル空間統計の想定する利用分野(写真=右)

 ドコモはモバイル空間統計について、有用な情報基盤の1つになりうるとして期待を寄せており、街づくりや防災計画の基礎データとしての活用や、商圏分析、出店計画などの指標としての活用などを想定。ほかにも、学術研究分野で活用することで、新技術やライフスタイルの創造につなげたい考えだ。

 ドコモと東京大学の共同研究においては、東京大学柏キャンパスがある千葉県柏市で統計をとり、時間によって変動する人口分布データをもとに統計の有用性や、人口変動と都市空間との関係性を分析する。

Photo 共同研究の流れ

 なおドコモは、モバイル空間統計の検証を始めるのに伴い、自社メディアを通じてドコモ携帯ユーザーへの周知を図っていく考えだ。

携帯ベースのデータならではの課題も

 ドコモが新たな統計データとして期待を寄せるモバイル空間統計だが、課題も見えている。1つは、高齢者のデータが取りづらい点だ。「80歳以上は携帯電話を使っている人が少ない」(岡島氏)。また、端末の契約者と利用者が必ずしも一致しないことが、データに誤差を生じさせる恐れがある。年配の人や子供は、契約者と利用者が一致しないケースも多いことから、ドコモでは誤差の生じ具合も含めてデータの有用性を検証するとしている。

 また、“これまでにないデータ”であることから、どのような方法で有用性を検証するかも難しい。これについては、既にあるデータと、時間や場所が一致する部分で比較するなどの方法で対応する考えだ。

 モバイル空間統計の活用についてはまだ研究段階であり、収益化の時期や具体的なビジネスモデルについては、「社会にとって有用かどうか、社会に受け入れられるかどうか」(岡島氏)をみながら検討する方針。まずは柏市の共同研究で可能性を探り、その結果を“社会全体がメリットを享受できる街づくり”に生かすことを目指す。

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