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» 2011年10月11日 10時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:“iPhone以外”の競争力向上を図るソフトバンク――スマートフォン市場第2ラウンドに先手 (1/2)

ソフトバンクの端末ラインアップは、戦略商品であるiPhoneの影響を色濃く受ける。しかし、市場全体のスマートフォン移行が急速に進む中で、同社は早くも次の一手を打ってきた。ソフトバンクモバイルの2011年度冬春モデルをひもとく。

[神尾寿,ITmedia]

 9月29日、ソフトバンクモバイルが2011年度冬春モデルを発表した。詳しくはリポート記事に譲るが、今回発表されたラインアップは、スマートフォンが9機種、フィーチャーフォンが1機種、モバイルWi-Fiルーターが1機種、ホームセキュリティ端末が1機種という内容。KDDIが“2011年秋冬モデル”までの発表であったのに対して、ソフトバンクモバイルは秋冬モデルに加えて、2012年の春モデルまで発表した。むろん、ここにはAppleの「iPhone 4S」は含まれておらず、他キャリアの動きに対抗して、年明け早々に追加で“隠し球”が投入される可能性はある。しかし、いずれにせよソフトバンクの2011年末から2012年春商戦にかけての布陣がおおむね明かされたのは確かである。

Photo ソフトバンクモバイル代表取締役社長の孫正義氏

 ソフトバンクモバイルは、社長の孫正義氏がいちはやくiPhoneの可能性に着目。Appleとのトップ交渉で販売権を獲得した後、日本における「iPhoneのエバンジェリスト(伝道師)にして、優秀なセールスマン」に徹することで、この数年の躍進を果たした。しかしその一方で、iPhoneの商品力に過度に頼る現在の状況が、キャリアの戦略・経営としては偏りがあり、バランスを欠いていたのも事実である。

 市場全体のスマートフォンへの移行が鮮明となった今、ソフトバンクモバイルはどのような「次の一手」を打つのか。今回の新商品ラインアップを俯瞰しながら、考えてみたい。

Androidは“スマートなケータイ”を目指す

 「iPhoneのシェアは、(スマートフォン市場の)8割。今までと変わらず王者であり続ける」

 これは約1年前の2010年11月4日に、孫正義氏が語った言葉だ。周知のとおり、スマートフォン市場におけるiPhoneの競争力は圧倒的であり、さまざまなメーカーのベンチマークとなる「メートル原器」のような存在。ソフトバンクモバイルはそれを今日まで日本で独占的に扱ってきたため、その優位性をあますことなく活用してきた。誤解を恐れずに言えば、これまでの同社のAndroidスマートフォンは、市場の2割程度しかない、一部のマニア向けのニッチな商品だったのである。

 しかし今回の秋冬春モデルにおいて、ソフトバンクモバイルはAndroidスマートフォンのラインアップも拡充。“iPhone以外”の部分でも、他キャリアに負けない布陣を敷いてきた。そして、ここで注目すべきは、今回のAndroidスマートフォンのラインアップに“日本のケータイ”を意識した端末が多数投入されたことだろう。

 例えば、シャープの「AQUOS PHONE THE HYBRID 101SH」はスライドボディに物理式のテンキーを搭載しており、文字入力や通話などでケータイに近い使い勝手を実現。実際に筆者も使ってみたが、先代の「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」で覚えた違和感がほとんどなくなり、スマートフォンとケータイが高い次元で融合していた。また同じシャープの「AQUOS PHONE 102SH」や「AQUOS PHONE 103SH」なども、日本のケータイに必須の“おサイフケータイ・赤外線通信・ワンセグ・緊急地震速報”を備えており、ケータイユーザーが買い換えしやすいスマートフォンになっている。

 この傾向はシャープ以外のメーカーでも同様である。デジタルカメラブランドを冠し、“デジカメケータイ”の路線を踏襲した「LUMIX Phone 101P」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ製)、丸みを帯びたボディで女性向け商品企画を徹底した「MEDIAS CH 101N」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)などは、往年のケータイ時代を彷彿とさせるものだ。

Photo 京セラが企画した女性向けの高機能スマートフォン「HONEY BEE 101K」

 そして、もう1つ。今回発表された新商品の中で、珠玉の1台となっているのが、「HONEY BEE 101K」(京セラ製)である。同機はウィルコムの人気機種「HONEY BEE」のスマートフォン版であり、ターゲットは若い女性層(女子高生)になるが、とにかくその“作り込み”と“こだわり”がすばらしい。外観デザインやUIがポップで魅力的なことはもちろんのこと、「通話」キーと「メール」キーが追加された物理キーは押しやすく使い勝手がすこぶるよい。ワンセグとおサイフケータイは対応しないものの、赤外線通信と防水機能には対応しており、女子高生のニーズはしっかりと押さえている。

 HONEY BEE 101Kは、このように“女子高生向け”に優れた商品企画が行われている一方で、デュアルコアCPUと「ULTRA SPEED」(詳しくは後述)に対応し、基本性能が高いところにも注目である。ミドル層やエントリー層向けのモデルというと、限られたコストの中でお得感を出すために、基本性能は抑えつつ、いろいろな機能を搭載しようとする傾向があるが、スマートフォンにおいてはこの発想は間違っている。スマートフォンの使いこなしスキルが高くないミドル/エントリー層向けの商品こそ、“ユーザーが難しい設定・カスタマイズなどをしなくても快適な動作環境を得られるため”に、付加価値機能を削ってでも基本性能の充実に取り組むべきなのだ。HONEY BEE 101Kはまさにこの方向性で、シンプルだがパワフルな構成・仕様になっている。この設計思想については、高く評価したいところだ。

 このようにソフトバンクモバイルのAndroidスマートフォンの主力機種は、どれもが「ケータイらしさ」を企図しつつ、スマートフォンとの融合を狙ったものになっている。いわば、Android上でさまざまなタイプの“スマートなケータイ”を構築したものだ。スマートフォンの主力は引き続きiPhoneに任せつつ、2012年に本格化する「一般ケータイユーザーのスマートフォン移行」を積極的に取りに行こうというラインアップなのだ。

 今回の記者会見において孫氏は、「iPhoneは依然として業界の中でも最も優れたスマートフォンとして、技術革新が続いている。(ソフトバンクにとって)最重要なものの1つ」としながらも、「Androidも数多くのメーカーがしのぎを削っている。開発環境がこなれてきたことで、若い女性向けや日本固有の機能など、一般ユーザー向けとして完成度の高い製品が出てきた。またソフトウェアのモジュール開発ができるようになったことで、(日本市場向けの)作り込みを行ってもバージョンアップ対応ができるようになった」(孫氏)と、Androidスマートフォンを評価。従来どおりiPhoneを戦略商品としつつも、今後はバリエーション拡大を行っていく姿勢を示唆した。

 実際に今回のラインアップを俯瞰してみても、iPhoneとAndroidスマートフォンの棲み分けにかなり腐心した跡が見て取れる。HONEY BEE 101KやAQUOS PHONE THE HYBRID 101SHなど、“iPhoneでは絶対に出てこないプロダクト”にきちんとした個性と魅力があり、今回のiPhone以外を強化するという商品戦略はかなり成功していると言えそうだ。

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