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» 2011年11月21日 15時58分 UPDATE

スマホ×SNSの気軽さで、企業の情報共有を簡単に――「サイボウズ KUNAI」、本当の狙い

グループウェア大手のサイボウズが提供する、同社製品向けスマートフォンアプリ「サイボウズ KUNAI」。スケジュールが手元で見られる便利さも提供しつつ、コミュニケーション機能を拡充している点に、同社の狙いが見える。

[山田祐介,ITmedia]

 国内グループウェアの最大手、サイボウズの動きが最近あわただしい。10月、同社はグループウェアの新製品「サイボウズ Office 9」を発表。サイボウズ Office/ガルーンのユーザーに向けたスマートフォンアプリの新バージョン「サイボウズ KUNAI」の提供も開始した。11月には、業務アプリを簡単に開発できるサービス「kintone」、そしてkintoneやサイボウズ Officeなどをクラウド上で提供するためのプラットフォーム「cybozu.com」も発表している。

 クラウドやスマートデバイスといった時代のトレンドをキャッチアップしながら、同社は“スケジューラーのサイボウズ”というイメージからの脱却を目指している。企業に欠かせないスケジュール共有機能を製品の軸にしながら、さまざま付加価値を提供し、魅力を高めようとしている。

photo 同社グループウェアと同期するモバイルアプリ「KUNAI」の画面

 特に、スマートフォンとの連携は「最重要事項」だ。手元の端末でいつでもスケジュールが確認できたほうが便利だから――もちろんそれもある。しかし同社はそれだけでなく、モバイル対応を強化することで“グループウェアを通じたコミュニケーションスタイルの改革”を推進したい考えだ。

 スマートフォンでは昨今、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアや、さまざまなグループメッセージアプリが利用され、気軽でリアルタイムなコミュニケーション文化が生まれている。こうした動きを企業のコミュニケーションにも取り入れ、社員の情報交換を活性化させようというのだ。そして、そのための機能が、サイボウズ KUNAIにそろいつつある。

「スケジュール+メッセージ」でコミュニケーション

photo サイボウズ スマートフォン戦略部 部長 モバイル製品プロダクトマネージャーの中光章氏

 「スマートデバイスへの対応は最重要事項」――そう息巻くのは、サイボウズ スマートフォン戦略部 部長 モバイル製品プロダクトマネージャーの中光章氏。元々同社は、フィーチャーフォン全盛の2006年頃から、グループウェアとシンクするモバイルアプリの提供を、MVNO事業者として端末ごと提供しようと計画していた。その後、MVNO事業への進出はならなかったものの、2010年に入って同社はスマートフォン対応という形でモバイル連携に本格着手。Windows Mobile、BlackBerry、iPhone、Androidに向け、同社グループウェアのシンクアプリをリリースしていった。

 KUNAIのブランドを冠したこれらのアプリは、それぞれ対応機能に若干の差があるが、当然すべてのアプリがスケジュールデータのシンクに対応している。そしてもう1つ、全アプリの共通機能として注目したいのが「メッセージ」だ。メッセージ機能は、簡単にいえば社員同士が利用できるグループメッセージ機能で、1対1、あるいは複数人でチャット感覚のコミュニケーションが図れる。


photophoto iPhone向けKUNAIのトップ画面とスケジュール画面
photophoto メッセージの画面。グループメッセージアプリのようなインタフェースを採用しており、各人が簡単にコメントを共有できる

 このメッセージ機能に加え、スケジュール側のコメント機能も活用すれば、業務に関わる多くのテキストコミュニケーションをスマートフォンを介して済ませられると同社は考えている。日程や時期が決まっている「案件」のディスカッションはスケジュールのコメント機能で、「人」に対する連絡はメッセージ機能で――こう使い分けることで、スムーズな情報共有が可能になると中光氏は説明する。

SNSの気軽さをグループウェアにも

 テキストによる情報共有は、これまで多くの企業がメールを使って行なってきたことだが、これをグループウェアに移行することで、どんなメリットがあるのだろう。

 1つに、グループウェアの情報は“社外に誤って発信される心配がない”というメリットがある。また、自分のコメントを編集したり削除したりできるため、「一度出した情報は修正できない」という従来型メールの面倒さもないという。さらに、コメントの履歴が残るため、後から加わったメンバーなどが議論の経緯などを簡単に振り返られるのも便利だと中光氏は話す。なお、同社は従来よりサイボウズ Officeのコンセプトとして「No-Eメールワークスタイル」を提唱しており、その訴求点は紹介サイトの1コーナーに詳しく説明されているので参考にしてほしい。

 こうした点に加え、中光氏がもう一つ、モバイル対応を進める上で出てきたという興味深いメリットを挙げている。SNS的な「ライトなコミュニケーション」による、情報共有の効率化と活性化だ。

 「ちょっと親しくなった社員には、Eメールではなくソーシャルメディアで連絡を取るケースが増えているように思う。確かに、そのほうが連絡を取りやすい。Eメールは挨拶文から始まり、文面にこだわりがちになるが、ソーシャルメディアだと文字数は少なく、単純な連絡で済む」(中光氏)

 SNS的なプラットフォームでは、形式にとらわれず簡潔に情報を交換できることで、ちょっとした気づきや感想も含めた情報交換がより活発になる――そんな考えを中光氏は示す。実際、中光氏の部署では、“その日のちょっとした意見交換”を行うための場をスケジュールに毎日の定例予定として設定しているという。その予定にメンバーが「今日は出社が遅れます」といった日々の報告を書き込み、共有しているそうだ。そして、こうした活用法は、場所を問わず利用できるスマートフォンを組み合わさることで、より効果を発揮するという。

 一方で、現状のKUNAIにはコミュニケーションツールとして足りない部分もある。現状のKUNAIは新着情報のプッシュ通知には対応しておらず、手動、あるいは一定時間ごとに情報を取得する仕様だ。中光氏は「プッシュ通知への対応はモバイルにおいて絶対必要」と考えており、今後のアップデートで機能を実装する予定。実現すれば、よりリアルタイムな情報共有が可能になり、従来型の電話やメールによる連絡頻度をさらに減らすことになるかもしれない。

スキマ時間の活用も重視

photo スマートフォンを通じて各種の承認作業ができるワークフロー機能

 このようにアプリのコミュニケーション機能に力を入れているサイボウズだが、それだけでなく、スマートフォンの業務活用のメリットとしてよく語られる「スキマ時間の活用」といった業務効率化のための機能にも磨きをかけている。

 特に便利と思われるのが、稟議などの各種承認を端末上から行える「ワークフロー」への対応だ。現在、Android以外のアプリには搭載済みの機能で、Androidアプリにおいても今後のアップデートで搭載される予定となっている。

 「100人以上の会社規模になると専用の決裁システムを持っているケースも多いが、中小企業では紙やメールを使っている場合も多い」と中光氏。スマートフォンでこうした承認ができるようになれば、スキマ時間を生かしながら決裁のスピードを上げ、“ハンコを待つ”という時間のロスを減らすことができると考えている。

 また、セキュリティという面では、iPhoneやAndroidなどそれぞれのプラットフォームの端末を中央管理できる「KUNAI MDMパック」をオプションとして提供。端末管理機能、リモートワイプ機能に加え、SSL暗号化によるセキュアな通信環境を提供し、サービスの安全性を高めている。


 KUNAIのコミュニケーション機能には便利な側面があるが、コミュニケーションは“相手”があって成り立つものであり、1人の意思だけで改善できるものではない。機能の効果を十分に発揮するには、導入企業が情報共有のスタイルを全社的に変革していく必要もありそうだ。

 KUNAIでは今後、社内専用のメッセージ機能とは別に、Eメール機能の対応(Windows Mobile、BlackBerryは対応済み)を進め、社内外双方の連絡の起点としてKUNAIを利用できるようにしていく。このほか、グループウェア上の最新情報を集約する「Twitterでいうタイムラインのような」コーナーも作り、グループウェア上の最新情報をより気付きやすいように改良する予定だ。利便性のさらなる向上により、社内コミュニケーションにおける「No-Eメールワークスタイル」の輪を広げることができるのか。同社の手腕が試される。

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