社内で人事異動があり、前任者(すでに退職)の仕事を引き継いだところ、前任者による作業ミスが発覚。クライアントからクレームが入り、事情を知らない上司から「どういうことだ? 先方は契約を白紙に戻すことも考えると言っているぞ!」と詰め寄られてしまった。
上司から怒られるケースには何パターンかが考えられる。まずは、原因が自分のミスにある場合。これは誠意をもって謝罪した後に、手を尽くして問題を解決するしかない。難しいのは原因が自分にないと思えるような場合。思わず、「違うんです、これは私のせいではなくて……」と言い訳したくもなるが、やはりこれはNG。
いくら前任者のミスとはいえ、現時点での担当は自分。任される仕事の状況をチェックし、前任者と情報を共有しきれていなかった自分にも非があるわけだ。「『私も困ってまして……』など、自分を蚊帳の外に置くような発言もひかえて」(池田氏)。
ではどうするか。まずは当然謝罪するわけだが、「上司に謝るだけでなく、相手企業や自社に対しても迷惑をかけてしまい申し訳ない、という気持ちを伝えるのがポイント」(三塚氏)。先方などへの配慮を言葉にすることで、感情的になっている上司を落ち着かせよう。
その上で、ケース1と同じように解決策を提示する。ミスの原因を確認する手順と、次に同じミスが起こらないように対処する方法などを具体的に説明できればベストだ。ただし、理屈ばかりを並べてもいけない。
「人間は感情と理性の動物。事実(理性)と所感(感情)をどちらも伝える“事実所感法”を使うと相手の共感を得やすい」(池田氏)という。例えば、「申し訳ありません(所感)。前任者との情報共有不足でした(事実)」「至急先方に連絡を取ります(事実)。その後問題の解決を図ります(所感)」といった具合だ。事実と所感のバランスは半々程度が望ましいが、報告が長くなる場合は事実(結論)から伝えた方が相手は理解しやすい。
感情と理性の両方に働きかけることで、「誠意もあるようだし、話も分かるヤツ」「解決策の手順も固まったし、あとはこいつに任せておけば大丈夫そうだ」と思わせることができるという。
当然のことだが、上司も人間。無茶な仕事を振られたり、いわれのないことで怒られたりしても、ムッとしてはいけない。「上司はなぜ、ほかの人ではなく自分に仕事を振ったのだろう」「どう対応したら感情的な気持ちを抑えられるだろう」と、「会話の背景情報」(池田氏)を想像することで、自分自身もさらに成長できるはずだ。
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