今さらながらに「PacketiX Desktop VPN」に驚いた――出張術が変わるかも樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

EvernoteやDropboxなどの便利なWebサービスがあるが、わたしの出張スタイルにはイマイチ合わなかった。いろいろ悩んだ末に行き着いたのが「PacketiX Desktop VPN」。今さらながら“出張術”が変わるかもしれない。

» 2010年03月11日 17時38分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 非常に困っていた。米ラスベガスに滞在していた時のことだ。新しいノートPCに古いPCのデータを移すのを忘れていたからである。ラスベガスは午前中だったが、日本ではもう夜中。仕事の締め切りが近づき、慌てていたのだった。

 結局、国際電話で呼び出した日本のスタッフを職場まで来てもらうことに。わたし自身のPCを立ち上げ、Skypeを起動してもらい、ラスベガスからわたし自身の音声ガイドで該当のファイルを見つけ出すまでに1時間もかかった。そのファイルをラスベガスのホテルに転送してもらった時には、日本側では真夜中だった。

 以前、金沢でも同じ体験をした。大学の講義で使う予定の写真が必要だった。持参しているノートPCの外付けHDDに入れていたと思った写真データは、東京のオフィス(アイデアマラソン研究所)に設置した外付けHDDに入っていた。面倒がるヨメサンに頼んで、膨大な数のデジタル写真のファイルの中からわたしが必要な写真を口頭で指示して見つけてもらった。

 これは何とかしなければいけない。友人に相談したら、遠隔操縦の方法があると教えてもらった。それもいくつかの方法があるらしい。まずはどこかの外部サーバに特定のフォルダやファイルを預ける方法。ファイル転送サービスなどが該当する。最近だと「Evernote」のようなサービスだ。もう1つは、特定のフォルダやファイルを同期できる「Dropbox」のようなWebサービスも教えてもらった。

 EvernoteもDropboxも使い方によっては素晴らしいサービスだが、わたしの要望とは若干異なる。だいたい特定のフォルダやファイルを事前に預けることや、アップデートすることが煩雑(はんざつ)なのが機械オンチのわたしには困難。メインメモリを増やすだけなら、利用するPCを1台に限って、そのPCのHDDを追加した方がいいかもしれない。

 ただ、PCを1台だけにするのも不安だ。わたしの扱うデータには、それなりの個人情報が入っていて、外部のサーバに預けるのがはばかられるケースが多い。自分で管理する責任がある。持ち運びするPC1台ですべてを済まそうと思うと、このあたりのデータが非常に気になる。

 ここまでを整理すると前提条件は、

  • 複数のPCを利用すること
  • 特定のフォルダやファイルではなく、PC全体をリモートで操作できること
  • 個人情報を含むデータがあるので、セキュリティには十分注意が必要なこと

 ――と言えそうだ。Skypeをよく使うわたしにとって、Skypeの「エクストラ」(Firefoxの機能拡張のようなもの)を利用する方法も考えた。このエクストラの中には「RemoteX」のような、その名の通りの遠隔操作機能もあるからである。だが、海外では国によってSkypeの発信を認めない国もある(特にUAEのような中近東の国)。だから、Skypeも不安が残る。

 そんな時に、友人からソフトイーサの遠隔操縦ソフト「PacketiX Desktop VPN」を勧められた。Windowsをリモートで操作するためのソフトである。1カ月間は無料で使える試用期間になっていた。

 普段、オフィスに設置したメインのPCで仕事をしているが、PacketiX Desktop VPNを利用すると出張中はノートPCから、オフィスのPCの中にあるファイルを閲覧できる。以前は、出張前に出張中の仕事を想定して、それに必要なデータやファイルをすべて、メインのPCから取り出して、SDメモリやフラッシュメモリ、外付けHDDに入れていた。それがPacketiX Desktop VPNを利用すれば、外にいながら自分の机の前に座っているような不思議な気分だ。

 もちろん見るだけでなく、メールを作成したり、ブラウザを開いたり、Officeでビジネス文書を作成したりも可能だ。後はサーバ1台につき月額950円が高いか安いかだが、その必要性のある人には便利に違いない。

 セキュリティも心配をしていたが、SSL-VPNで通信は暗号化しているし、クライアントソフトを起動する際はIDとパスワードが必要で、情報の漏えいや盗聴の恐れは低いという。Windows標準のリモートデスクトップよりもセキュリティは強そうだ。大事なことは、大切なデータはメインのPCにだけ収納し、手持ちのノートPCには入れないこと。必要な時に外からメインのPCにアクセスすればいい。

こちらはメールを送受信するところ
当り前だが資料も見られる

 海外出張するときわたしは、2台のノートPCを持参する。バックアップが目的だったが、先日は1台を作業に、もう1台をPacketiX Desktop VPN用に活用した。1台はオフィスのメインPCを開き、1台は現在の作業を続ける――というわけだ。もちろんPacketiX Desktop VPNを利用するにはブロードバンド回線が必要。だが、その環境がある限り、職場や自宅のPCに保存したデータを外からノートPCで操作ができる。

 2007年にβ版を公開したPacketiX Desktop VPN(当時はDesktop VPN)だが、使ってみたら今さらながらに衝撃だった。わたしの出張にとって、これは大きな変化になりそうだ。

今回の教訓

 そのうち筆者の頭にもアクセスできるようになったりして――。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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