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» 2012年05月24日 11時00分 公開

説明書を書く悩み解決相談室:チームのリーダー論を語る講演でドラマ「西部警察」の話題が有効な理由 (2/2)

[開米瑞浩,Business Media 誠]
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 庄司さんが講演内容に盛り込みたい西部警察は、対象者の年齢層にもピッタリはまりそうです。しかしそれは「本題のテーマにうまく一致すれば」の話。庄司さん自身もそこにお悩みの様子でした。

庄司 そこなんですよねえ……。西部警察ネタを使いたいと思ったのはいいんですけど、それを本題のリーダー論とどう結び付けるか、そこがちょっと難しくて……。で、開米さんにご相談というわけで。

開米 なるほど、確かにちょっと難しいかなあ……。こういうネタはうかつに使うと滑りますからね。

庄司 でしょう? あんたが西部警察好きなのは分かったけど、リーダー論と関係ないやん、それってただのこじつけじゃん、みたいに思われたら困るので。

開米 確かにその通りです。じゃあ、本題のテーマと一致しているかどうかを確認しましょう。そもそも庄司さんがリーダー論の講演で西部警察を持ち出そうと思った理由は何ですか? 単に好きだから、というだけじゃないですよね? 何か通じるものがあると思ったからですよね?

 そして庄司さんから詳しく話を聞くと、おおむねこういうことが分かりました。

石原裕次郎演じる木暮課長のリーダー像を語りたい

 今回の講演で話をする相手は、会社の複数の営業支店を統括するエリアマネジャー層に当たる人々で、年齢はおおむね40〜50代。実際に営業現場で動く支店スタッフをまとめる支店長は別にいて、エリアマネジャーは支店長を通して現場に働いてもらわなければいけない、そんな立場の人々だということでした。

庄司 つまりエリアマネジャーが西部警察で言うところの木暮課長でね、頼もしい上司役を演じる石原裕次郎なわけですよ。

開米 なるほど。

庄司 一方、現場の支店長は西部警察なら渡哲也の大門部長刑事ですわ。直接現場スタッフを指揮して犯人逮捕の成果を挙げなきゃいけない立場です。

開米 なるほどなるほど。

庄司 で、石原裕次郎演じる木暮課長はあくまでも「大門軍団のバックアップに徹してる」わけです。ああしろこうしろと、いちいち後方から指示命令しない。そんなことをしていたら現場の動きが鈍くなります。現場が考えて行動しやすい体制を作る。必要なリソースを手当てして、上層部に根回しをする。そういう後方支援を引き受けて「オレが責任を持つ。思い切ってやってこい」と送り出してくれるのが木暮課長なわけですよ。

講演内容だけでなく、演出にもこだわろう

開米 いやあ、美味しい役ですねえ、それ。

庄司 カッコいいんですわこれがまた、やっぱり石原裕次郎!

開米 なるほどなるほど。そういうことならいけそうですね。西部警察をネタに使って大丈夫そうです。基本的には今回のテーマに合ってます。

庄司 使えますか! 合ってますか?

開米 はい。合ってます。ベースの骨格は合ってるので、後は細かな演出ですね。どうやって話をつなげるか、そこを工夫してやれば大丈夫でしょう。

 「ベースの骨格は合っている」というのは例えば、「鳥の骨格模型に、粘土を肉付けして犬のフィギュアを作ろうとしても無理」というような話です。犬のフィギュアを作りたいなら犬の骨格をベースをする必要があります。メインテーマの話題とベース骨格が違うようなら、いくら西部警察がカッコよくても引き合いに出すのは止めたほうがいいわけです。

 しかし、詳しく話を聞いたことで、その点は問題ないことが分かりました。それが分かれば後は肉付けの問題になるので、細部の話をつなぐ方法を考えればなんとかなります。

庄司 でも本当に大丈夫ですか? こんなネタ使っちゃって?

開米 大丈夫ですよ。いや、これはいい考えだと思います。

庄司 いい考え? 本当に?

開米 本当です。人間、ロジックだけじゃ深い納得は得られないんです。感情に訴える部分はどうしても必要なんですよ。論理的に正しい内容も、感情というか情熱に訴えてはじめて「おおっしゃ一丁やったるぜ!」となるので、こういう、よく知られた話題を引き合いに出すのはいい方法ですよ。

 もちろん、「ロジカルに正しい」ことは大前提として必要です。それが出来なければ予選落ちですが、それだけでは予選しか通過できません。純粋な技術解説書のようなものなら論理性だけで十分ですが、講演のような場面で「なるほど。自分もやってみよう」という気持ちを起こしてもらうためには、エモーショナルな演出も必要になります。そのために有名なストーリーを引き合いに出すのは、非常に有力な方法なんですね。


 当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」という相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp)。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』『図解 大人の「説明力!」』、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』


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