湯川秀樹も愛した日本最古のシステム手帳、よみがえる“システムダイアリー”手帳2013(3/3 ページ)

» 2012年07月26日 11時30分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
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一列だった売り場が専用台に拡大

 朝注文して夕方の配達が定着すると、販売店側でも「システムダイアリーのものは全部受けちゃいましょう」となった。システムダイアリーの取扱商品は、販売店が営業してお客さんに勧めてくれるようになったのだ。また、取扱い店の人はみな文具好きであることも分かってきた。そこで「信頼に応えなければ」となり、1年かけてシステムダイアリーの商品を欠品なしにした。

 これはメーカーとしては当たり前のことだが、商品供給に課題を抱えていたシステムダイアリーとしては、最初は大変なことだったという。以来、自動車の仕事で地方に行くと、必ず見本を持っていくようにした。地方のオーダーには当日発送し、翌日か翌々日着を心掛けるようになったという。

 こうした営業努力の結果、ある大手文具店で一列だけだった売り場は、専用の台をもらえるまでになった。漆谷氏の社長就任後、売り上げは以前の3倍に伸びた。奇跡のV字回復を果たしたのだ。

システムダイアリーはよみがえる

 ようやくここまできた。2年の歳月を費やしてここまでたどり着いた現在の課題は、新規取引への対応と新商品の投入だ。販売体制の一新と業績回復のうわさを聞きつけて、新規取引の希望が増えたが、待ってもらっている店舗も多いのだという。

 新しいリフィル保存ボックスは、金型を起こして製造、販売されている。また好評だった耐水紙「ウルトラ紙」に変わる新しい耐水紙も販売が間近に迫っている。

 さらに手帳のオーダーもやっている。女子栄養大学など、オリジナルのバインダーやリフィルの制作にも対応している。

女子栄養大学専用のバインダー。表紙のロゴや中身のリフィルなどは全てオーダー可能だ

 かつては、日本製の逸品として名をはせたシステムダイアリーは、手帳が注目を浴びるようになった今、よみがえろうとしている。手帳市場に占める割合はまだまだ小さいシステムダイアリーの商品ラインアップがどうなっていくのか、そして市場からどう評価されていくのか。新経営者を迎えてのシステムダイアリーの今後に注目、期待したい。

著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 手帳評論家。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売


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