“中国依存”は大いなるリスク 日本の経営者が経済安全保障を重視しなければならない理由サイバースパイが日本を破壊する【後編】(4/5 ページ)

» 2021年10月05日 10時35分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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経済安全保障で鍵を握る「個人情報」

 井上氏によると、企業が中国をはじめ世界の国々を相手に取引をする際に、日本では見過ごされている点があるという。それは個人情報の重要性に対する認識の甘さだ。

 海外ではセキュリティクリアランス(SC)、日本語で適格審査と呼ばれる制度がある。政府の重要情報を扱う場合にはSCの資格が必要で、海外の民間企業ではSCを持った社員が政府から重要情報を聞き出す役割を担っている。政府側もSCを持った民間人にしか対応しない。

 SCの制度は国家の機密情報を共有しあっている米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドのいわゆる「ファイブ・アイズ」の5カ国や、韓国にもある。日本は個人情報保護を縦にSC制度が導入できない状況にある。そのことがかえって、海外への個人情報流出を招いている可能性があるという。

 「あえて波紋を呼ぶようなことを指摘すると、日本は個人情報保護を掲げて守ることを意識しているわりに、漏洩などの問題が起きています。もっと言えば、スパイ防止法がない国なので、中国などからは“やられ放題”です。

 これからは日本でも、政府の重要情報を扱う人や企業で開発のトップ機密を扱う人は、SCの資格が必要ではないでしょうか。異性関係や金銭関係でつけ込まれる点があると、その人が政治家や官僚であってもスパイにならないとは言い切れません。また国際的な共同開発をする場合に、スパイではないことの証明ができなければ機密情報を出してもらえないことも今後想定されます。

 しかし、日本でSCの制度を入れるというと、プライバシーが暴かれるとか、個人情報が悪用されるとか言って強い反対の声があがることが予想されます。その背景には、政府が開示すべき情報を開示しなかったり、隠したりしていることで、国民が政府を信用していないことがあります。それでも世界の情勢が変化する中では、公文書の管理や開示のルールをしっかり作ることと、SCのような制度を導入することを、両輪で考えていくことが今後は必要ではないでしょうか」

海外ではセキュリティクリアランス(SC)、日本語で適格審査と呼ばれる制度がある

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