経済安全保障を意識することと合わせて井上氏が企業に訴えているのは、DXを経営戦略の中心に置くことだ。本書では中国からのサイバー攻撃について詳細を報告している。サイバーセキュリティを怠ることのリスクについて、井上氏は次のように説明する。
「米国の防衛産業向けの部品を日本の企業が共同開発している場合、セキュリティが甘いと取引停止になる可能性があります。通常、企業の業績が悪化する場合は、数年かけて徐々に財務が悪くなりますが、経済安全保障で問題があるといきなり取引が停止されて、企業が“突然死”するリスクがあるのです。
そうならないためには、企業のシステムに脆弱性はないか、情報漏洩(ろうえい)はないかといったことについて、経営者が問題意識を持つことが必要です。日本企業の多くはシステムをITベンダーに丸投げしています。しかし、日本のITベンダーのレベルは高いとはいえません。
また、商売では顧客情報も扱います。今の時代、データは資金繰りと同じくらい大事です。システムやデータの管理をITベンダーに丸投げするのではなく、自社でプロ人材を採用する。チーフデジタルオフィサーなどを置いて、DXを経営の中心に据える。こうした取り組みはサイバー攻撃からデータを守る観点でも重要だと思います」
日本の大企業では、IT部門はどちらかというと軽視されているケースも少なくない。しかし、今こそ優秀な人材を確保してDXに取り組むべきだと井上氏は提言する。
「DXの人材育成はすぐにはできず、中・長期的に取り組むことが必要です。その際に役員が年をとった人ばかりでは無理な部分もあるでしょう。今の若い人はデジタルに慣れている人も結構いますので、若い人の力を信じて入れ替えていく。デジタルが得意な若手を起用していくことが大事だと思います」
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