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旭化成・小堀秀毅社長に聞く「DXを成長戦略に据える理由」 社内外にコネクトして新規分野を開拓旭化成・小堀秀毅社長を直撃【前編】(1/3 ページ)

» 2021年12月21日 10時18分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 もともとはケミカル、繊維から出発した総合化学企業の旭化成――。現在はマテリアル、住宅、ヘルスケアの3領域で多彩な事業を展開している。その事業戦略に早くからDXという横串を差し込んで新規事業を伸ばそうとしているのが特色だ。経済産業省が東京証券取引所と実施した「DX銘柄2021」にも選定された。

 DXを成長戦略のカギと位置付ける小堀秀毅社長に話を聞いた。前後編でお届けする。

小堀秀毅(こぼり・ひでき)1978年に旭化成に入社。2004年に旭化成エレクトロニクス企画管理部長、10年に旭化成エレクトロニクス社長、12年に旭化成取締役、14年に専務、16年から社長。金沢市出身。66歳

IPランドスケープをリード

――DX銘柄に選定されましたが、どのあたりが評価されたと思いますか。

 事業戦略を推進していく基盤強化の最重要施策の1つとしてDXに取り組んでいます。多面的なファンクションの中でDXを推進する4つのポイントがあると思います。1つは研究開発(R&D)をベースに、製造現場まで一貫で技術革新を図り、製品の品質を維持・向上する取り組み。 

 2つ目はマーケティングにDXを取り入れたビジネスモデルです。3つ目はわが社が各社の中で進んでいると自負する「IPランドスケープ」と呼ばれる知的財産(知財)にDXの視点を取り入れる取り組みです。研究や製造だけでなく事業戦略にも活用しています。4つ目はDXを推進するためのプロフェッショナル人財を育成することですね。

 このように多面的に活動し、DXの機能を事業軸部門とコネクト(連携)して取り組んできたのが評価されたのだと思います。

――知財でDXの取り組みは珍しいのではないでしょうか。

 知財の役割も世の中の変化とともに進化してきています。これまでは研究開発部門での特許取得の支援や係争対応など、どちらかと言えば「守り」の面で活躍していました。今ではわれわれの知財の強みがどこにあるのかなどをマッピング、見える化し、競合メーカーと比べてどんな優位性があるのか、足りないところはどこなのか、この知財を使って事業を大きくするためにはどことコラボすればより推進できるかなど、事業戦略にまで知財を活用し、「攻め」の使い方をしています。

 これは「IPランドスケープ」といわれていて、わが社が業界の中でいち早く取り組み、リーディングカンパニーとなってきました。日本でのIPランドスケープの活用を推進・発展すべく、民間企業のみならず官(特許庁、内閣府)とも連携して「IPランドスケープ推進協議会」を立ち上げ、代表幹事の一社として活動しています。

旭化成のコア技術特許マップ

――発表された貴社の「DXビジョン2030」にも記載がありますが、人財が集まり社内外コネクト(連携)を推進、共創する場となるよう、デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」(ココ・カフェ)を設けていますね。その狙いや取り組み事例は。

 デジタル系のメンバーを集めて、そのメンバーの技術力を向上させること、またDXに知見のあるメンバーと、事業部門とをコネクトさせることで事業へのDXの浸透を狙っています。誰とどこでコネクトすればよいのかが分からなくとも、「そこに行けば人が集まっている」というようにしました。

 また、アカデミアなど外部の方にも来てもらい、そこでオープンな議論ができて活動ができる交流の場を用意しました。こうしたことで、DX人財のキャリア採用もしやすくなります。

 新たな挑戦と共創の場をつくることで、デジタルの体験と人財の育成を図るのが狙いで、コロナ禍の前に開設を決めました。オープンなスペースでフリーアドレスにしていまして、100人以上のデジタル人財がいます。日本にいながら海外にある工場の遠隔監視ができるなど多様な実験や体験もできます。

デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」
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