――21年度上半期は過去最高の業績でしたが、その要因は何ですか。
コロナ禍で一時的に活動を停止していたものが動き出した、石化製品の市況が良くなっている、ヘルスケアのニーズがコロナ禍により高くなっている背景があります。また巣ごもりによる情報化社会のIT機器のマーケットが好調だったこともありますが、われわれがコロナ禍を通じた変化点をうまくキャッチアップできたことが大きな要因です。
しかし活動経費が減ったことで利益がカサ上げされていますので、ぬか喜びはできません。それぞれの事業部門が今後、何をしなければならないかをコロナ禍を通じて確認できましたから、そこに向けた活動を大胆に推進しないとなりません。
――中期経営計画で社会課題への取り組みのスローガンとして「Care for People, Care for Earth」を掲げていましたが、その具体的な目標は何でしょうか。
当社のグループ理念である「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」は普遍的なテーマです。M&Aで海外のメンバーも増えている中で、どのような言葉で伝えたら伝わりやすいかを考えた結果が「Care for People, Care for Earth」でした。事業を通じ、環境・エネルギーなどの視点からカーボンニュートラルな社会の実現のために価値を提供していくということと(Care for Earth)、健康で快適な長寿社会に貢献できるような事業(Care for People)を通じ、持続可能な社会に貢献していく事業に、より集中していきますということを表現しています。
コロナ前の19年から、「環境・エネルギー」「モビリティ」「ライフマテリアル」「ホーム&リビング」「ヘルスケア」の5つの価値提供分野に経営資源を投入して、集中していきますと宣言していました。
――旭化成というと、2019年にリチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏(名誉フェロー)を思い出します。未来ある技術開発にはどのような姿勢で臨んでいるのでしょうか。他社との違いを教えてください。
研究分野だけでなく、旭化成全体のカルチャーがあるのではないかと思います。自由闊達でフランクな雰囲気で、トップと現場との距離感が近く、上司に対して物が言いやすい風通しの良い企業風土があるのです。
1つの例として、社内では役職ではなく「さん」付けで呼びます。私も社内では「小堀さん」です。何々部長、課長と呼ぶ人は誰もいません。これは創業者の野口遵が創業時(1922年)からそういう指示を出していて、それ以降、一貫したカルチャーになっています。そこが研究開発でもうまく作用し、上司に自分の意見を自由にいえる風土につながっていると思います。旭化成では「あなたの考えはどうなの」とよく聞かれます。こういうカルチャーが重要なのではないでしょうか。
国の勲章で科学とスポーツ・芸術の分野で顕著な成績や貢献した人に贈られる紫綬褒章があります。旭化成では科学の分野で吉野さんを含めて8人が受章しています。それぞれがユニークな技術で世の中に貢献しています。吉野さんのノーベル賞で言えばアカデミアでなく企業から輩出したことが大きな特徴で、その背景には旭化成の企業カルチャー、風土があるのではないでしょうか。
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