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旭化成・小堀秀毅社長を直撃 事業分野を見直し、脱炭素に積極的に取り組む旭化成・小堀秀毅社長を直撃【後編】(3/4 ページ)

» 2021年12月22日 11時26分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

女性活躍には上司の意識改革が重要

――企業ではダイバーシティー推進の動きが強まっています。旭化成の女性管理職は6月現在で257人となっていますが、女性の管理職比率はどれくらいなのでしょうか。今後の目標を実現するための課題は何でしょうか。

 257人の比率は全体の4.5%で、現時点ではかなり低いです。新卒の女性採用比率は20%以上を目指して、その水準で採用はできています。一方、そういう人が管理職や高度な専門職に就くまでには時間がかかります。

 管理職の一歩手前、係長クラスの比率が14%くらいまで来ているので、時間をかけて管理職の比率を上げていきたいと思います。ただ、比率だけを見ることにそれほど意味はなく、実際に活躍できる環境を整えることが必要です。やはり成長する会社はダイバーシティーに富んだ会社、日本人男性だけでなく女性も外国人も活躍できる会社ではないか、ということから、それが1つの目標になってきています。

 また、少子高齢化の中での女性の活躍の場を作ることが、より良い流れになるのではないか、男性の意識も変わるのではないかという視点もあります。とはいえ、この2、3年で無理やり30%にするのは、現実的ではありません。時間をかけてしっかり女性の活躍の場を拡げる方向に取り組んでいきます。

――そのためには何が障害になりますか。

 大きく言えば2つあります。上司の意識と女性の意識とがありますが、特に上司の意識が重要です。上司は「女性だから大変だし、こういう重い仕事を任せるのは……」と、自分なりに女性を思いやったとします。でも、女性から見ると「私は期待されない」と思うかもしれません。

 女性にも公平に任せるという意味で、上司の意識改革が重要なポイントです。それと女性も自分のキャリアを考える意識をいっそう持ってもらうこと。この2つの意識の状況を作り上げていくことが重要です。そうはいっても出産というライフイベントに伴う制約もあるので、制度的な支援も必要です。

 この上司の意識を変えるために、マネジメント力の強化などの課題が出てきています。シニアが多そうな部場とか、女性の活躍が期待できそうな部場をピックアップして具体的に施策を取り入れて、昨夏からトライアルを始めています。来春が創業100周年で、新しい中期経営計画がスタートするので、その成果をみて全社展開できるものがあればルール化していきたいと思います。

――今、社内で最も優先して進めたい改革は何でしょうか。

 事業戦略を支える経営基盤を強化しなければならないポイントが、今の時代は3つあります。その頭文字を取れば、国内総生産と同じ「G・D・P」です。GはGreen、これは各製品のサプライチェーンを調べて、それぞれでサステナビリティへの貢献を考える。例えばCO2の削減に向けて見える化を行い、環境にやさしいモノづくりに取り組むことです。

 DはDXを各ファンクションで進めていくこと。PはPeopleです。これからは終身雇用でなく終身成長で、時代は変わって70歳まで働くということは、一生成長していく気概を持たないとなりません。このため、人事制度を変えてキャリアパスを上司と部下で話し合って、将来に向け専門性を高めるようにしてもらいます。そういう意味で、終身成長に向けて従来と違う改革を進めなければならないと思います。

経営基盤として強化していくGreen, Digital, People(21年11月29日サステナビリティ説明会資料より)

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