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旭化成・小堀秀毅社長を直撃 事業分野を見直し、脱炭素に積極的に取り組む旭化成・小堀秀毅社長を直撃【後編】(1/4 ページ)

» 2021年12月22日 11時26分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 これまで多面的な事業展開をしてきた旭化成。その一方で、時代にそぐわない分野も出てきている。大胆な事業分野の見直しを断行すると同時に、企業の生命線になったカーボンニュートラルな社会実現のための事業には積極的に取り組む考えだ。

 記事の前編【旭化成・小堀秀毅社長に聞く「DXを成長戦略に据える理由」 社内外にコネクトして新規分野を開拓】では同社がいかにしてDXを推進してきたかを聞いた。加えて同社は、女性活躍推進のために上司の意識を変えるなど、ダイバーシティーを大切にする経営のための人事制度改革にも乗り出している。小堀秀毅社長にインタビューした。

小堀秀毅(こぼり・ひでき)1978年に旭化成に入社。2004年に旭化成エレクトロニクス企画管理部長、10年に旭化成エレクトロニクス社長、12年に旭化成取締役、14年に専務、16年から社長。金沢市出身。66歳

環境との親和性は重要なポイント

――マテリアルの分野では、中期経営計画で60ある事業のうち15の戦略を再構築するとあります。不採算な事業を止めて新たな分野に資源を集中するポートフォリオ見直しということでしょうか。どの事業を止めて、どの領域に力を入れるのですか。

 視点としては、将来的に成長性、収益性を確保できるかを見ています。さらに重要なことはサステナビリティ(持続的成長性)との親和性です。炭素をどんどん出すような事業は、これから価値を認められなくなります。

 さらにわれわれがやるべき事業かどうかも考えなければなりません。これからの時代は4社も5社も同じ分野で戦っていける状況ではありません。トップの1〜2社がマーケットをおさえていく構造なので、われわれがやり続けるべき事業なのかどうか、また、止めずとも今までと同じ戦略で続けていくべき事業なのかどうかを見極める必要があります。

――サステナビリティは確かに重要性を増していますね。

 これからはカーボンニュートラル、循環型社会に向けて取り組む中長期のR&D(研究開発)が増えてくるでしょう。そこにお金と人を回そうとすると、既存事業に回す資金にも限界が出てきます。やはり投資効率を考えなければなりません。事業を維持するだけでも相応の設備投資やメンテナンス投資を必要とするので、事業をたくさん持っていると成長投資に向けての資金が出せなくなりかねないのです。

 維持投資をして収益を出せれば良いですが、辛うじて利益をキープしているような事業が多いと、これからは成長投資にお金を振り向けられなくなります。このため各事業を見極めて、ポートフォリオを時代とともに変えていく必要があります。その中でも環境との親和性は重要なポイントになります。将来はカーボンプライシングなどが入ってくる可能性もあります。製造コストが低くても、炭素を多く排出しているとカーボンプライシングで大幅に価格が上がることも考えられますね。

――カーボンニュートラルへの取り組みとして、50年の目標を掲げていますが、30年時点での削減目標の達成の自信は。

 われわれもカーボンニュートラルを宣言し、30年時点では13年比較でGHG排出量は30%の削減を打ち出しています。そこまでは今ある技術や工場で使うエネルギーを変えることによって、達成のめどは立ちつつあります。ただ、50年にゼロにするためには新たなイノベーションが必要になります。50年の目標達成は相当にハードルが高く、国のエネルギー政策にも左右される状況です。

旭化成の温室効果ガス排出量削減推進のための仕組み(21年11月29日サステナビリティ説明会資料より)
宮崎県延岡市の工場群に電力を供給する五ヶ瀬川発電所(1925年竣工、旭化成所有)
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