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JFEホールディングス柿木厚司社長に聞く展望 洋上風力など新規分野に果敢に挑戦JFE柿木社長を直撃【後編】(1/4 ページ)

» 2021年12月24日 19時23分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

 大手鉄鋼メーカーのJFEホールディングスは、第7次中期経営計画(2021年度から24年度)を持続的な成長のための強靭な経営基盤を確立し、新たなステージに飛躍するための4年間と位置付けている。

 その柱は、これまでの鉄鋼生産で築いてきた経験を生かして新たなビジネスにチャレンジすることだ。前編に続き、進めようとしている新規分野の将来性などについて柿木厚司社長に聞いた。

柿木 厚司(かきぎ こうじ)1953年生まれ。77年に旧川崎製鉄に入社、2003年JFEスチール人事部長。07年常務執行役員、15年JFEスチール社長、19年4月からJFEホールディングス社長。茨城県出身(撮影:小澤俊一)

洋上風力に進出する理由

――中期経営計画で、洋上風力発電の分野に進出すると表明しています。その狙いは何でしょうか。

 政府が温室効果ガスの削減目標を、13年度比で30年度に46%削減という目標を掲げ、グリーン成長戦略の中で洋上風力発電に力を入れると表明しています。その際に国内調達比率を60%にするとしたので、これは陸上風力でも実績のあるJFEエンジニアリング(JFEエンジ)にとってビジネスチャンスだと思いました。JFEエンジは陸上風力をこれまでに130基設置した実績とそのメンテナンスも担っています。この経験を洋上風力に生かすことができます。

 温室効果ガスを削減するには、原子力の新設はハードルが高いですし、太陽光は限界にきているので、残りは洋上風力しかありません。だから政府も舵を切ったのだと思います。当社もこれが伸びることを期待しています。

 候補地は秋田県能代沖、長崎県五島市沖などが挙がっていて、その他の地域も指定されてきています。JFEは風力発電の事業主体にはならないので、事業主体に洋上風力の構造物を供給する形です。

洋上風力

――旧NKKが持っていた造船技術も生かせますか。

 旧NKKの造船技術者はJFEが35%出資している造船会社JMUにすべて移りましたので、JFEエンジに造船技術者はいません。しかし、鉄鋼の技術者は高度な溶接技術など造船の技術を受け継いできた流れがあります。しかも洋上風力のモノパイル(基礎部分)となる鉄の構造物は、直径が7〜11メートル、厚さが10センチもあるような大きな鉄の構造物なので、JFEエンジの技術を活用できます。

 また岡山県倉敷市にあるJFEスチールの第7連続鋳造設備で洋上風力のモノパイルに使える大単重厚板を量産できるので、この設備も活用できます。あとは同県笠岡市に建設予定(24年稼働開始)のJFEエンジの新工場で加工・溶接・塗装すれば洋上風力のモノパイルを作ることができます。モノパイルと風車タワーをつなぐトランジションピース(接続管)はJFEエンジの津製作所で製造します。

 当面はコストの安い着床式の洋上風力が主流となり、その後は徐々に浮体式に移行するのではないでしょうか。浮体式はJFEが出資している造船会社JMUが得意なので、その時はJMUにやってもらえば良いと思います。

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