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JFEホールディングス柿木厚司社長に聞く展望 洋上風力など新規分野に果敢に挑戦JFE柿木社長を直撃【後編】(3/4 ページ)

» 2021年12月24日 19時23分 公開
[中西享, 今野大一ITmedia]

合併の舞台裏 人事を担当

――社長は旧川崎製鉄と旧日本鋼管(NKK)が合併した時に、人事の責任者を担当していましたね。それ以後、いわゆる「たすき掛け人事」はしませんでした。合併企業の人事の要諦は何でしょうか。

 合併した時に人事で2つのことを断行しました。1つは組織が旧川鉄と旧NKKとで2つあったものを1つにしました。2つ目は部長の下に次長を置きませんでした。次長を置くと、部下は部長と次長のうち旧会社出身の上司に報告するようになるので、200ほどあった部は一つを除いて部長だけにしました。

 また製鉄所の製造関係の部長も、旧川鉄と旧NKK出身者を入れ替えました。こうすることで、かつての出身者だけをかわいがるといった傾向がなくなり、社員の融合が進みました。いまでは社員のうち3分の2がJFEになってからの入社になっています。

 入社してからも、どちらの出身の上司にも仕え、技術者も旧川鉄と旧NKKの両方の工場に勤務して交じり合っているので、旧会社のことは意識してないと思います。

――合併企業の社員のマインド(意識)を変えるには何が重要になると思いますか。 

 共通の価値観を持つことではないでしょうか。統合した時は苦しかったのですが、収益を上げる利益計画を作りました。そのときに旧会社のどちらの技術が優れているかを議論するのではなく、利益を上げるためにはどちらの技術が良いかを説明して決めてもらいました。当時の社長が製鉄所に行ってそういう価値観を植え付けていったのです。

 そうすると収益にもつながり、その技術を導入した社員の給与アップや昇進にもつながっていきました。キーワードは収益につながるかどうかでしょう。どうすれば業績を上げられるかという共通の価値観を持つことではないでしょうか。

 大きな会社なので、自分の会社への貢献度が矮小化されがちなので、セクターごとに分けて、セクターの中で自分が行った仕事を示すことで、社員の貢献度合いが分かるようにしました。

――経団連は女性役員の割合を3割にする目標を掲げています。重厚長大の鉄鋼メーカーはなかなか実現が難しいと思いますが、対応策としてどのようなことを考えていますか。

 なかなか難しい課題です。いまJFEグループ全体で毎年300人採用のうち女性は40人くらいです。エンジニアリングは20%、商事は25%以上の女性を採用する目標を掲げていますが、女性の採用は今取り合いになっています。昨年は商事だけ達成しましたが、全体的には少し足りないのが現状です。

 役員は生え抜きではJFEホールディングスの監査役1人だけで、グループ全体でも6人です。部長クラスはある程度いますが、入社10年を過ぎるあたりから出産などライフイベントで退職するケースが多いのです。

 女性社員の定着と育成をどうするかが課題です。旦那さんが海外へ転勤となり、一緒に赴任するので辞めることなどもあり、せっかく身に付けたスキルが失われるのはもったいないと感じています。例えば、子育ての期間は休職か退職扱いにして、その期間が終わって働く気がある人は戻ってこられるようにする、また旦那さんの海外勤務が終わればまた復職できる制度を作るなど、知恵を絞らざるを得ないと思います。

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