2011年の東日本大震災から10年がたつ。SNSの普及と並走するように、その存在感を定着させてきたのが、クラウドファンディングだ。
日本ファンドレイジング協会がまとめる「寄付白書」では、震災が発生した11年の個人寄付総額は1兆182億円と、前年の4874億円を大きく上回った。12月17日に発行された同白書の最新の結果では、個人寄付総額は1兆2126億円に達し、9年ぶりに1兆円台に乗せた。
震災前と比べると、約2.5倍水準に個人寄付の規模は拡大。同白書では、「クラウドファンディングなどのインターネットを通じた支援の輪が広がったことも一つの特徴」と示唆している。まさに21年に大きく躍進したのがクラファン事業といえるだろう。
業界が成長する中、月間1500件、累計で6万件を超えるプロジェクト掲載数を誇るのがクラウドファンディング大手の「CAMPFIRE」だ。同社では、コロナ流行の20年3月時点で約200億円だった累計支援額が21年9月末で490億円に拡大した。ただ、年間の寄付総額の対GDP比では、依然として日本は米国の10分の1程度だ。経済を動かす要素としてはまだまだ見劣りする。
CAMPFIRE代表の家入一真氏は、この規模の違いを「ポテンシャル」だと捉えている。そして、そのポテンシャルを生かすには、見返りを求めない「寄付」と、見返りを求める「投資」の間にあるグラデーションにこそヒントが隠されていると話す。
北海道大樹町や宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」を運営するSPACE COTAN(スペースコタン、大樹町)ともパートナーシップを結ぶなど、地方創生事業にも積極的に関わりを深める同社の展望を家入代表に聞いた。
――CAMPFIREは11年に設立して、21年で10年になりました。この10年のお金の流れをどのように見ていますか。
10年前に立ち上げた時はクラウドファンディングという言葉すらなかったんですが、当初は年間1億円の流通額を目指していました。現在は、年間約200億円のお金が流通するようになったので、だいぶ変わったなと感じています。
サービスは10年の後半から準備していたんですが、立ち上げのタイミングで東日本大震災が発生しました。その結果、日本においては震災復興の文脈で使われることが多くなり、「クラウドファンディング=社会貢献」のようなイメージがつきました。
――準備段階では、社会貢献とは違った目的を持っていたということですか。
もちろん社会貢献の側面も強かったのですが、クリエイティブな活動であったり、新しいチャレンジであったり、もっといろいろなことを応援する仕組みとして使えると考えていました。
最初に起業したpaperboy&co.(現、GMOペパボ)や12年に創業したBASEもそうですが、基本的には何かを表現したくても、手が届かないと思っていた人にとってのハードルを下げて、個人でも最初の一歩を小さく踏み出せるプラットフォームを作ってきました。そうした方々にとっての資金集めも民主化していくべきだし、それこそがインターネットというテクノロジーの本質だと思っています。
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