ねじのロケットとTENGAロケットの打ち上げ成功には、もう1つ特筆すべきことがある。それは両ロケットの打ち上げを、延期することなく、予定した日に無事に成功させたことだ。その要因にはロケットの改良に加えて、会社の成長もあると稲川氏は自負する。
「2つのロケットを予定した日に打ち上げられたのは、ロケットだけでなく会社自体もパワーアップしたことの結果ではないでしょうか。2回連続の打ち上げ成功は、本来はなかなか目に見えない会社の成長につながっていると感じています」
実際にISTは、MOMOの改良に取り組んできた間に急速な成長を遂げている。20年12月には北海道大樹町に新工場が完成。積極的な採用にも取り組み、トヨタ自動車などの大企業からも出向を受け入れている。2019年の時点では約20人だったメンバーは、約80人までになった。
「私が入社した2013年の時点では、フルタイムで働いていたのは前任の社長と私だけでした。あらゆる面でチームがすごい勢いで進化しています。特にこの2年間は、優先度が低いものは後回しにしてでも実証に重きを置くフェーズから、きちんとしたものづくりができるフェーズに進化しました。
人数が増えたことによって、よく言われる組織における『50人の壁』があると感じています。50人未満だと見える範囲で全員が動くので、マネジメントの仕組みを気にする必要はありませんでした。ところが、50人を超えたタイミングで、1人1人の動きが細かく見えなくなりました。そこで、現在は各専門分野をグループに分けて、グループリーダーに権限を委譲したことで、会社全体のチーム力が上がっていると思います」
組織が50人を超えたタイミングで、1人1人の動きが細かく見えなくなった。そこで、各専門分野をグループに分けて、グループリーダーに権限を委譲したという(ねじのロケットの前でプレゼンするISTの植松千春開発マネジャー)また、新工場を設立したことは、採用活動に良い影響をもたらしたという。
「以前はプレハブでロケットを作っていました。今は組立工場もオフィスも新しくなり、試験装置も導入して自社でさまざまな試験ができます。その効果によって優秀なメンバーを集められるようになりました。21年は新卒で3人採用したほか、積極的な中途採用もしました。これも会社がパワーアップしている要因ですね」
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