韓国の携帯電話市場で、薄さを重視した「スリムフォン」が流行の兆しを見せている。このスリムフォン人気を仕掛けたのはMotorolaだが、世界市場で同社と熾烈な2位争いを繰り広げるSamsungをはじめ、地元韓国勢も追い上げを見せている。
Motorolaは、強い存在感を見せる米国や中国をはじめ、世界市場で地力を見せており、世界の携帯電話市場で2位の座を占めている。韓国でも、伝説的な「StarTac」などの人気端末を持ちシェアを独占していた。しかし現在は韓国メーカの相次ぐ台頭によって、韓国内でのシェアは5%弱に甘んじている。
そのMotorolaが昨年、GSM圏や米国向けに、「RAZR V3」という端末を発売した(2004年7月27日の記事)。最大の特徴である「薄さ14.5ミリ、重さ98グラム」に加え、アルミニウム合金を使用したシンプルで高級感のあるデザイン。さらに2.2インチカラー液晶にMP3やMPEG-4の再生が可能といった多機能さが受け、欧米を中心に100万台以上を売り上げる大ヒットとなった。
世界市場での「RAZR」人気を受け、Motorolaは韓国市場でのシェア上昇の切り札として、SK Telecom(以下、SKT)向けにこの「RAZR」を投入することを決定した(型番はMS500)。
RAZR韓国版は、カーナビサービス「Nate Drive」に対応しており、SKTの3Dゲーム用エンジン「giga」エンジンを搭載しているほか、ヨガや指圧の方法を絵付きで指導してくれるガイドやバイオリズム表示、カロリーなどを記録できるダイエット日記など、「Well-Bing(体に良いものを食べ心身健康に暮らすという、韓国で流行中のライフスタイルのこと)」にこだわったソフトも搭載されている。
Motorolaの韓国向け端末は国内で独自に開発することが多く、どちらかといえば韓国で開発した端末を、中国などのCDMA市場向けに投入するというケースが多かった。それゆえ、RAZRの韓国市場投入は極めて珍しいケースといえるだろう。
そのMotorolaを世界市場で必死に追い上げ、2位の座を脅かす存在にまで成長したSamsung。国内では過半数を越える圧倒的なシェアを誇るものの、海外でのRAZRのヒットを目の当たりにしているだけに、投入に関しては危機感も強い。
そこでSamsungも、超薄型・軽量のスリムフォン「SCH-V740」の投入を決定した(5月24日の記事参照)。この端末は、RAZRと同じ薄さ・重量ながら、MP3再生機能や130万画素のカメラなど、さらに輪をかけて多くの機能を搭載しているのが特徴だ。また通信方式もEV-DOに対応しているため、CDMA2000 1xにしか対応していないRAZRと異なり、「June」によるビデオコンテンツなども楽しめるようになっている。
SCH-V740もSKT向けの端末であり、発売日までRAZRと同時期にぶつけてきていることからも、Samsungの「RAZR」に対するライバル意識の大きさがうかがえる。薄型戦争の第一章の勝者がどちらになるか、注目が集まるところだ。
このスリム化競争に、韓国市場で2、3位のCYON(LG)、Pantech & Curitelも参戦予定だ。LGは、先の「ワイヤレスコリア」にて、すでにスリムフォン「SD290」を披露しており(5月30日の記事参照)、近々市場に投入予定だ。またPantech & Curitelも、いまだ開発中であるとはいえ、スリムフォンを投入予定だという。
こうしたスリム化の傾向は携帯電話に限らず、デジタルカメラやテレビなど、今の韓国の家電市場での大きな流れとなっている。大型の多機能端末が存在する一方で、機能を絞り込みコンパクトやスリムさ、デザインにこだわった端末も次々登場している。韓国市場は今後ますます二分化の傾向が強まりそうだ。
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