音楽の3本柱に+α――実は“硬派”な「ウォークマンケータイ W52S」開発陣に聞く「W52S」(ウォークマン編)(2/2 ページ)

» 2007年06月21日 11時23分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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必然から生まれたあのカタチ

photo 右側面で光る「ミュージックキー」。片手で音楽再生の機能をすべてを操作できるようにボタンがレイアウトされている

 W52Sはその外観も特徴的だ。曲線を多用したフォルムをはじめ、右側面の「ミュージックキー」や背面に搭載された大型スピーカーは独特の存在感を放っている。シンプルで直線的なボディデザインを採用する携帯電話も多い中、一見すると非常に挑戦的なデザインにも思える。

 「音楽ケータイというテーマに沿って、スピーカーや大画面液晶など必要と思われる要素を入れていったら、現在の形状に落ち着きました。テーマとは直接関係しない、薄いスライドボディを実現したいという意向もありましたが、基本的には必然から生まれたカタチです」(矢部氏)

 「片手で音楽操作というテーマも盛り込まれていますし、(大型液晶を搭載する)表面はビジュアル、(スピーカーを搭載する)背面はミュージック、という“デュアルインタフェース”も実現しています」(同)

 背面スピーカーは一見すると30ミリ以上あるように思えるが、実は20ミリ径×2のステレオ構成。ただ、スピーカー間の距離は非常に狭く、手に持って音楽を再生してみても、ステレオ感を得るまでには至らない。

 「これまで携帯電話のスピーカーといえば、音が鳴ればいいというイメージでした。ですが、今回はきちんとした音を出したいと考え、ステレオスピーカーの採用に踏み切りました。もちろん、すべての人に満足してもらえるとは思っていませんが……」(鈴木氏)

 「付属のスタンドにはくぼみが設けられており、置いて音を出せば、そのくぼみがガイドラインとなって音をセパレートさせることができます。大口径のモノラルスピーカーも検討しましたが、音の広がりを重視した結果、現在の構成になりました。今回はこれが精一杯でしたが、次はよりステレオ感のある配置を目指します」(矢部氏)

 曲線を多く配したボディラインや、アルペジオブルー/、ハーモニクスホワイト/、ピチカートピンクと暗色系を用意しなかったカラーラインアップも意図的なものだという。

 「あえて曲線主体のデザインと現在の3色を選択しました。アルペジオブルーについてはウォークマンとイメージの共有化を狙った面もありますが、こびないデザインとカラーリングはW52Sのポリシーとも言える部分です」(山下氏)

「110時間再生」のインパクト

 W42SユーザーがW52Sへ乗り換えた場合に最もメリットとして感じられるのが、最長110時間に延長された連続音楽再生時間かもしれない。W42Sは音楽再生用チップ「モバイルエンハンサー」を搭載していたが、W52Sではどのようにして長時間再生を実現したのだろうか。

 「モバイルエンハンサーは基本的な考え方こそW42Sと同じですが、ICを全面作り替えました。ICの作り替えもそうなのですが、省電力化のため電源周りも見直しましたので、システム全体を“音楽再生の長時間化”という目的のために最適化したというべきでしょう」(鈴木氏)。ちなみに、バッテリー容量はW43Sと同じ870mAhだ。

 “110時間”という数字は実にインパクトのある数値だ。カードタイプのウォークマン「NW-A800」(レビュー)が30時間、スティックタイプの「NW-S600/700」が50時間であることを考えると、音楽再生以外の用途もある携帯電話であるW52Sの音楽再生時間がどれほど長いかがイメージできる。


 「ケータイはついに、WALKMANを手に入れた」というキャッチフレーズとともにW42Sが登場して約1年。登場したW52Sは“みんなで音楽を楽しむ”という新機軸を追加しながら「全方位的な強化」(山下氏)が行われており、新世代機と呼ぶにふさわしい端末に仕上がった。

 ただ、開発陣からは「さらによいウォークマンケータイを作り出したい」という意欲も感じられた。ウォークマンケータイは携帯電話+ウォークマンという多機能さゆえ、どうしても操作インタフェースが複雑化しやすい。W52Sではミュージックキーの採用でそれに1つの解答を示しているが、開発陣は現在のかたちが最終形とは思っていないようで、それは言葉の端々から伝わってきた。

 第3世代ウォークマンケータイが登場するかは分からないが、開発陣の飽くなきウォークマンケータイへの意欲がある限り、今後もブラッシュアップが続けられていくだろう。

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