世界に先駆けてスタートした韓国版モバイルWiMAXの「WiBro」。サービス開始から2年たち、思ったよりもエリアもユーザーも拡大できてない現状については前回お伝えした。World IT Show 2008には
WiBroに関する展示も、いくつか見受けられた。
SK Telecom(以下、SKT)はWiBro Wave2のデモを公開。WiBro Wave2はMIMOに対応し、下り最大37.44Mbps、上り最大10.08Mbpsというデータ送信速度を誇る次世代WiBro規格だ。SKTは展示会以前に、同規格でHD/SD映像を転送する実験を成功させており、ソウルでの商用サービスを2008年下半期中にもスタートさせる。
同社は転送実験を実施した際、WiBro Wave2専用USB端子付きモデムや専用モバイル端末の販売をアナウンスしており、SKTブースにはWiBro Wave2モデムが登場した。見た目はこれまでのWiBroモデムと変わらず価格なども未定だが、専用の料金プランが新たに登場する見通しだ。
WiBroで転送しているIPTV映像を見てみると、確かに途切れることがなく滑らか。ただし展示場内のデモは静止状態で電波も強く、安定した環境下のものであり、実際に街に出て利用してみた際の実態が気になるところだ。
Samsung電子は、WiBro対応端末の「SPH-P9200」を展示していた。これは以前「Deluxe MITs」と称して2006年11月に登場した端末の後継機で、機能が若干向上している。
キーボードを中央から折って、3つ折りにして持ち歩けるというコンセプトは以前のまま。新モデルではキーボードを折り曲げた際にボタンが現れ、このボタンでも簡単な操作ができるようになっている。
キーボードは間隔が十分にとられているが、折りたたみ型であるせいか、キーストロークが浅くて硬く、押し心地はいまひとつだった。またキーボード右上についているトラックパッドは、指先での操作を便利にしてはくれるものの、やや小さすぎる感もある。便利だったのは折りたたんだ際に出てくるボタンで、WiBroの接続から画面の拡大/縮小やWebページの移動など、一通りの操作が可能だ。
またWiBroだけでなく、HSDPAやIEEE 802.1b/gなどにも対応しているので、WiBroサービスが提供されていない地域でも無線でのデータ通信が利用できる。
KTFはコンテンツを中心とした展示を行っており、その中には興味深い展示があった。
「SHOW Care」は、専用端末を置くことで、リアルタイムでその場を監視できるサービス。専用端末はHSDPAに対応しており、モーションセンサーやカメラ、スピーカーを備える。この端末から、映像などのデータが送られることで、遠隔地も監視ができる仕組みだ。
例えば留守宅に不審者が侵入した際には、モーションセンサーで動きをキャッチすると、すぐさまユーザーの電話番号に自動的に連絡する。、また、カメラで映像を送ることで、遠隔地にある売り場の監視するといった設定も可能だ。専用端末自体が1つの携帯電話としての扱いを受けるので、緊急時には音声通話もできる。
まだ商用サービスは提供していないが、不審者を監視するほかにも、子どもの監視や観察などといった具体的な用途も考えられており、試験的なサービスも行われたということで、近々のサービスインが期待できそうだ。
さらにSKTでは、個人認証が可能なSIMを利用した決済や証券サービスを紹介していた。これを利用すれば携帯電話で、交通カードやクレジットカードでの決済、そして証券情報のチェックが可能だ。
すでにサービスは提供されており、証券会社や銀行などの窓口に申請して、携帯電話に専用ソフトウェアをインストールすれば利用できる。決済は通常のクレジットカード感覚で利用できるほか、証券サービスはリアルタイムでの株式情報が見られるのが便利だ。
今回のWorld IT Show 2008で目立っていたのは、3G網や次世代通信規格を利用した新しいサービス、斬新な入力方法の携帯電話などだ。Samsung電子やLG電子などの端末メーカーはこうした端末を、グローバルな戦略製品として位置づけ、キャリアはWiBro Wave2やHSDPAによって世界進出を目論む。サービスや製品を、“国内向けに限定しない”傾向は、今後さらに進むとみられ、その動向に注目が集まる。
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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