ウィルコムには、パケット定額サービスが比較的安く使えるという魅力がある。特に2008年3月に導入された「新つなぎ放題」は、月額3880円でデータ通信が定額となるプランで、データ通信カードだけでなくスマートフォンを含む音声端末でも契約できる。
今回は新つなぎ放題の利用を中心に、「WILLCOM 03」の料金プランについてあらためて考察してみた。
キャリアを問わず、スマートフォンはパケット通信量が増加しがちだ。月々の音声通話時間を考慮した基本料金の選択はもちろん、パケット料金の割引サービスへの加入も欠かせない。
ウィルコムのスマートフォンを持つ多くの人は、おそらく「ウィルコム定額プラン」+「データ定額」または「リアルインターネットプラス」という組み合わせて契約しているのではないだろうか(2006年4月の記事参照)。もちろんほかの音声通話向けプランやデータ通信向けプランも選べるが、通話とパケット通信のバランスを考えると、ウィルコム定額プランとその専用オプションを使うのが現実的といえるだろう。
新つなぎ放題は、もともとデータ端末向けの完全定額プランであり、月間のパケット量を気にすることなく使えるのが利点。もちろんウィルコムEメールや、携帯電話のSMSに相当するライトメールも無料で利用できる。
以前から通話の着信は行えたが、7月11日のWILLCOM D4発売に合わせて音声発信も可能になった(通話料は070番号、他社携帯、固定電話の違いを問わず31.5円/30秒)。また10月からは、ウィルコム同士の通話が定額になり、他社携帯と固定電話への発信も安くなる「話し放題」(月額980円)という専用オプションも提供している。
では、WILLCOM 03で新つなぎ放題+話し放題を契約した場合、ウィルコム定額プラン+データ定額との違いはどうなるだろうか。音声通話に関しては、070番号への定額通話と、他社携帯への通話が13.125円/30秒、固定電話への通話が10.5円という点が同じだ。
パケット通信については、新つなぎ放題+話し放題が合計4860円の完全定額となるのに対し、ウィルコム定額プラン+データ定額なら10万パケットまで3950円、約36万パケット以降は6700円が上限金額となる。思い切りパケット通信を使うのであれば、新つなぎ放題というプランはなかなか魅力的に見えてくる。
ちなみに、「iPhone 3G」などソフトバンクモバイルが販売するスマートフォンの場合、月額980円のホワイトプランに、月額1029〜5985円のパケット定額フルを組み合わせるのが一般的だ。以下に、ウィルコム、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルの代表的なスマートフォン向け料金プランをまとめてみた。
キャリア | 料金プラン | オプションサービス | IP接続サービス | 合計 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ウィルコム | ウィルコム定額プラン(2900円/月) | データ定額(1050〜3800円/月) | ― (標準で対応) |
3950〜6700円/月 | 月間パケット量が10万パケットまで1050円、約36万パケット以上は3800円固定 |
ウィルコム | リアルインターネットプラス(2100円/月) | 5000円/月 | 通信速度は2xパケット(64kbps〜102kbps固定) | ||
ウィルコム | 新つなぎ放題(3880円/月) | 話し放題980円/月 | 4860円/月 | ||
ソフトバンク | ホワイトプラン(980円/月) | パケット定額フル(1029〜5985円/月) | S!ベーシックパック(315円/月) | 2324〜7280円/月 | |
イー・モバイル | ケータイプラン(1000〜4980円/月) | 定額パック24(980円/月) | EMネット(315円/月) | 2295〜6275円/月 | |
※ウィルコム端末でPC接続する場合は、別途ISP料金が必要 |
ウィルコムのウィルコム定額プラン+データ定額と他社のプランを比べると、金額面での優位性はあまり感じられない。だが、新つなぎ放題+話し放題の4860円という価格は、他社プランの上限額より1425〜2420円安い。
ただし、通信速度やエリアも考慮すると、ソフトバンクモバイルやイー・モバイルに金額分のメリットを感じてしまう。HSDPAを採用する携帯2社はウィルコムよりも高速なパケット通信が可能。またエリアも、ソフトバンクモバイルはもちろんイー・モバイルもだいぶ広がっており、首都圏でウィルコムが勝るのは地下街や屋内の奥まった場所くらいというのが現状だ。
そこで筆者は、WILLCOM 03をPC用のセカンド回線として活用できないかと考えている。すでにノートPC用に公衆無線LANサービスやイー・モバイルのデータ通信カードを契約していても、WILLCOM 03が追加料金なしでPCモデムになるならメリットは大きい。
WILLCOM 03をPCに接続する場合、新つなぎ放題であれば別途ISP料金が必要になるが、PC接続時でも月額料金に変化はない。これがウィルコム定額プラン+データ定額の組み合わせだと、PC接続時の上限額が9200円(定額プラン:2900円+データ定額:6300円)に跳ね上がってしまう。
なお、ウィルコム端末からのダイヤルアップ料金はISPごとにさまざまで、接続契約によって無料でサービスしている場合もあれば、有料(ほとんどは1000円以下)で接続するプロバイダもある。ウィルコムが提供するPRIN(プリン)は、契約手続きなしで利用できるISP。接続料は1分5.25円からの従量制だが、月の上限金額は1575円という料金体系だ。
ソフトバンクの場合、端末をPCモデムとして利用した場合には定額対象外であり、またiPhone 3Gなどはモデムとしての利用がサポートされていない。イー・モバイルは、すべてのプランでPC接続も定額対象内でありISP料金も不要だが、地下での利用に不安がある。
WILLCOM 03をモデムとして常時利用するのは、大きさやケーブルの取り回しなどから煩わしさがあるが、いざという時のサブ回線くらいなら我慢できるだろう。通信速度も決して速くはないが、メールの送受信やテキスト中心のWebページを見るくらいなら、十分な速度だ。
WILLCOM 03をパケット中心に使うのであれば、新つなぎ放題は十分リーズナブルなプランだ。さらに追加負担なしでモデム利用もできるため、上記のようにバックアップ回線としての役割も期待できる。
欲をいえば、ウィルコムにはWILLCOM 03をワイヤレスモデムとして使えるようにしてもらいたかった。WILLCOM 03のBluetoothプロファイルにはDUN-DTが用意されており、ほかのBluetooth対応端末をモデムにするダイヤルアップ接続はできるが、自分がモデムになるDUN-GWやPANには対応していない。ユーティリティソフトやレジストリの書き換えを行えば、DUN-GW/PANのプロファイルを追加することも可能だが、ちょっとハードルが高く、すんなり使うのは難しそうだ。
また、ウィルコム定額プラン+データ定額でPC接続した場合の上限値がかなり割高に感じる点も気になる。
ウィルコムのインフラ面では、WILLCOM COREだけでなく、“黒耳”といわれるW-OAM type G対応のW-SIMや、上下非対称によるW-OAM type AG 8X(仮称)構想など、現行PHSの高速化も控えている。通信速度が上がれば、今以上にPC接続の利用も増えるだろう。ぜひとも今後は、PC接続時の料金や利便性の改善も期待したいところだ。
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